買い替え売却中古マンションのローン基礎・審査|完全ガイド

公開日: 2025/10/19

買い替え売却時の住宅ローンの基本

中古マンションを売却して新しい住宅へ買い替える際、住宅ローンの扱いは複雑になります。既存ローンの残債がある状態での売却・購入では、売却益で完済できるか、住み替えローンやつなぎ融資が必要かなど、資金計画と審査基準の理解が重要です。本記事では、買い替え売却時のローンの基礎知識と審査のポイントを実務的に解説します。

この記事でわかること

  • 買い替え時のローン選択肢(売却益完済・住み替えローン・つなぎ融資)
  • 既存ローンの一括返済と抵当権抹消の手続き
  • 住み替えローンの審査基準(担保評価・返済比率)
  • 売却・購入の決済タイミング調整のポイント
  • 中古マンション特有の住宅ローン控除の適用要件

1. 買い替えローンの基本知識

(1) 買い替えローンとは

買い替えローンとは、現在の住宅を売却して新しい住宅を購入する際に利用する住宅ローンです。既存ローンの残債がある場合、売却代金で完済できるかどうかで選択肢が変わります。

売却代金で完済できる場合:

  • 売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消
  • 新居購入時に通常の住宅ローンを新規契約

売却代金で完済できない場合:

  • 住み替えローン(売却損を新規ローンに上乗せ)
  • つなぎ融資(売却前に購入し、売却代金で既存ローンを完済)

(2) フラット35の買い替え利用条件

住宅金融支援機構が提供するフラット35は、買い替えにも利用できます。主な条件は以下の通りです。

  • 申込時の年齢が70歳未満
  • 年収に対する返済比率が基準内(年収400万円未満:30%以内、400万円以上:35%以内)
  • 購入物件が住宅金融支援機構の技術基準を満たすこと
  • 既存ローンを完済できること(または住み替えローンを利用)

(3) 既存ローンの一括返済と抵当権抹消

売却時には、既存ローンを一括返済し、抵当権を抹消する必要があります。手続きの流れは以下の通りです。

ステップ 内容 タイミング
一括返済申請 金融機関に一括返済の申し込み 売却決済の1ヶ月前
残債確認 残債額と違約金の確認 決済前
決済日 売却代金で残債を一括返済 決済当日
抵当権抹消登記 司法書士が抵当権抹消登記を申請 決済当日

抵当権抹消登記は司法書士に依頼するのが一般的で、費用は1〜3万円程度です。

2. 買い替えローンの特徴

(1) 売却と購入のタイミング

買い替えには、売却と購入のタイミング調整が重要です。国土交通省によれば、売却と購入の決済日を合わせることで、スムーズな資金移動が可能になります。

(2) 売却先行と購入先行の違い

売却先行のメリット・デメリット:

メリット デメリット
売却代金が確定し資金計画が明確 仮住まいが必要(引越し2回)
ローン審査が通りやすい 引越し費用が二重にかかる
二重ローンのリスクなし 仮住まい期間中の家賃負担

購入先行のメリット・デメリット:

メリット デメリット
住環境の連続性が保てる ダブルローン期間の返済負担
引越し1回で済む 売却価格が不確定
仮住まい不要 ローン審査が厳しくなる

(3) ダブルローンのリスク

購入先行の場合、一時的に2つの住宅ローンを抱えるダブルローン状態になります。この期間の返済負担は非常に大きく、資金繰りに注意が必要です。ダブルローン期間を最小化するため、売却活動を計画的に進めることが推奨されます。

3. 審査の基準とポイント

(1) 返済比率と年収倍率

金融庁によれば、住宅ローンの審査では返済比率と年収倍率が重視されます。

返済比率: 年収に占める年間返済額の割合。一般的に35%以内が審査の目安です。

返済比率 = 年間返済額 ÷ 年収 × 100

年収倍率: 年収の何倍まで借入できるか。一般的に5〜7倍が目安です。

(2) 中古マンションの担保評価(築年数・管理状況)

中古マンションの担保評価は、築年数と管理状況によって変動します。

  • 築年数: 築浅物件ほど担保評価が高い。築20年超は評価が下がる傾向
  • 管理状況: 修繕積立金の積立状況、大規模修繕の実施履歴が評価に影響
  • 立地: 駅からの距離、周辺環境も評価対象

担保評価が購入価格を下回る場合、自己資金を多く用意する必要があります。

(3) 審査期間の目安

住宅ローンの審査期間は、金融機関により異なりますが、一般的に以下の期間が目安です。

  • 事前審査:3〜7営業日
  • 本審査:1〜2週間
  • 契約手続き:1週間

買い替えでは売却と購入のタイミング調整が必要なため、余裕を持った審査申込みが推奨されます。

4. つなぎ融資の活用

(1) つなぎ融資の仕組み

住宅金融支援機構によれば、つなぎ融資は売却前に新居を購入する際、売却代金が入るまでの期間を繋ぐための短期融資です。売却代金で既存ローンとつなぎ融資を同時に完済します。

(2) つなぎ融資の費用と期間

つなぎ融資の特徴は以下の通りです。

  • 融資期間: 3ヶ月〜1年程度
  • 金利: 年2〜4%程度(住宅ローンより高い)
  • 融資額: 売却想定額の範囲内
  • 手数料: 融資額の1〜3%程度

つなぎ融資は金利・手数料が高いため、売却期間を短縮することがコスト削減に繋がります。

(3) 利用時の注意点

つなぎ融資を利用する際の注意点は以下の通りです。

  • 売却が長引くと金利負担が増大
  • 売却価格が想定より低いと返済に不足が生じる
  • 金融機関によっては取り扱いがない場合もある

5. 住宅ローン控除の活用

(1) 中古マンションの控除要件

国税庁によれば、中古マンション購入時に住宅ローン控除を受けるには以下の要件を満たす必要があります。

  • 自己居住用であること
  • 床面積が50㎡以上(2023年以前は40㎡以上でも可)
  • 耐震基準適合証明書または既存住宅売買瑕疵保険付保証明書があること
  • 昭和57年以降(1982年以降)の新耐震基準物件であること

(2) 控除額の計算方法

住宅ローン控除の控除額は、年末ローン残高の0.7%(2022年以降)です。控除期間は10年間(新築は13年間)です。

控除額 = 年末ローン残高 × 0.7%

最大控除額は、中古住宅の場合、年間14万円(2,000万円×0.7%)です。

(3) 築年数による制限

昭和57年以前(1981年以前)の旧耐震基準物件でも、耐震基準適合証明書または既存住宅売買瑕疵保険付保証明書があれば、住宅ローン控除を受けられます。これらの証明書がない場合、控除は適用されません。

6. 買い替えローンの選び方と手続き

(1) 金融機関の選び方

買い替えローンを選ぶ際は、以下のポイントを比較しましょう。

  • 金利(固定金利・変動金利)
  • 審査基準(返済比率・年収倍率)
  • 手数料(融資手数料・保証料)
  • つなぎ融資の有無
  • 繰上げ返済の手数料

複数の金融機関で事前審査を受け、条件を比較することが推奨されます。

(2) 必要書類と申込み手順

住宅ローン申込みに必要な書類は以下の通りです。

  • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
  • 収入証明書(源泉徴収票・確定申告書等)
  • 物件資料(売買契約書・重要事項説明書等)
  • 既存ローンの残高証明書(買い替えの場合)

(3) 売却想定額と実勢価格の乖離リスク

売却想定額と実勢価格に乖離がある場合、資金計画が狂うリスクがあります。不動産会社に査定を依頼し、現実的な売却価格を把握することが重要です。複数社の査定を比較し、市場動向を考慮した価格設定を行いましょう。

まとめ

買い替え売却時の住宅ローンは、既存ローンの残債状況、売却・購入のタイミング、審査基準の理解が重要です。売却先行と購入先行にはそれぞれメリット・デメリットがあり、資金状況と生活事情に応じて選択しましょう。中古マンションの担保評価は築年数・管理状況に影響されるため、複数の金融機関で審査を受けることが推奨されます。住宅ローン控除の適用要件も確認し、計画的に買い替えを進めましょう。

よくある質問

Q1買い替えで中古マンションを売却する際、ローンが残っていても売却できますか?

A1売却代金でローンを完済できれば可能です。完済できない場合は、住み替えローン(売却損を新規ローンに上乗せ)またはつなぎ融資を利用する選択肢があります。住み替えローンは借入額が増えるため審査が厳しくなりますが、売却と購入を同時に進められるメリットがあります。金融機関に事前相談し、資金計画を明確にしましょう。

Q2住み替えローンの審査は通常のローンより厳しいですか?

A2売却損を上乗せする場合、借入額が増えるため審査は厳しくなります。返済比率(年収に対する返済額の割合)が35%以内が目安で、担保評価と年収のバランスが重視されます。中古マンションの場合、築年数・管理状況により担保評価が変動するため、複数の金融機関で審査を受けることが推奨されます。

Q3売却先行と購入先行、どちらが有利ですか?

A3売却先行は資金計画が明確でローン審査が通りやすいですが、仮住まいが必要で引越しが2回発生します。購入先行は住環境の連続性が保てますが、ダブルローン期間の返済負担があります。資金状況(自己資金の有無)と生活事情(子供の学校、仕事の都合など)で判断しましょう。余裕がある場合は売却先行が安全です。

Q4中古マンションの築年数が古いと住宅ローン控除は受けられませんか?

A4耐震基準適合証明書または既存住宅売買瑕疵保険付保証明書があれば、築年数に関わらず控除可能です。昭和57年以降(1982年以降)の新耐震基準物件なら基本的に適用されます。昭和57年以前の旧耐震基準物件でも、上記証明書があれば控除を受けられます。購入前に不動産会社に確認しましょう。

関連記事