離婚時の中古マンション売却とローン処理|完全ガイド

公開日: 2025/10/20

離婚時の中古マンション売却とローン処理

離婚に伴い中古マンションを売却する場合、共有名義のローンがある場合は特に慎重な処理が必要です。売却価格でローン残債を完済し、連帯債務や連帯保証を解除することが基本ですが、売却価格が残債を下回る「オーバーローン」の場合は追加資金が必要になります。また、離婚協議中の売却タイミングや財産分与の方法も慎重に検討する必要があります。

この記事では、離婚時の中古マンション売却における共有名義ローンの処理方法、連帯債務・連帯保証の解除、財産分与とローン残債の関係、税務処理について解説します。

この記事のポイント

  • 共有名義のローンは売却価格で完済し、抵当権を抹消するのが基本
  • 連帯債務・連帯保証は離婚後も継続するため、金融機関に解除を申し入れる必要がある
  • 売却価格が残債を下回る場合は、不足分を自己資金で補填するか任意売却を検討
  • 財産分与は原則として非課税だが、3,000万円特別控除も活用できる

1. 離婚時の中古マンション売却における共有名義ローンの処理

(1) 共有名義ローンの一括返済

離婚に伴い中古マンションを売却する場合、共有名義のローンを一括返済する必要があります。売却代金から仲介手数料や登記費用を差し引いた金額で、ローン残債を完済します(金融庁: 住宅ローンと離婚)。

売却時の資金の流れ

売却価格: 2,500万円
- 仲介手数料: 約87万円
- 登記費用: 約3万円
- ローン残債: 2,000万円
= 純手取り: 約410万円
→ 財産分与: 各205万円(折半の場合)

(2) 売却価格で残債完済できる場合の手続き

売却価格が残債を上回る場合、以下の手続きで進めます。

  1. 売却活動: 不動産会社と媒介契約を締結し、査定価格をもとに売却活動を開始
  2. 売買契約: 買主と売買契約を締結(手付金を受領)
  3. 残金決済: 残金受領と同時に、ローンを完済して抵当権を抹消
  4. 所有権移転: 登記を完了し、買主に引き渡し
  5. 財産分与: 純手取り額を協議に基づき分配

2. 連帯債務・連帯保証の解除方法と金融機関との調整

(1) 連帯債務の解除条件

夫婦が共同で住宅ローンを借りている場合、連帯債務となっていることが多いです。連帯債務は離婚後も継続するため、以下のいずれかの方法で解除します。

解除方法 内容
一括返済 売却代金でローンを完済し、連帯債務を解消
借り換え 一方が単独でローンを組み直す(金融機関の審査が必要)
債務引受 一方が全額を引き受ける(金融機関の承諾が必要)

連帯債務の解除は金融機関の承諾が必要で、承諾が得られない場合は売却が最も確実な解決策となります。

(2) 連帯保証人の変更・解除手続き

一方が主債務者、他方が連帯保証人となっている場合、離婚後も保証人の責任は残ります。以下の方法で解除を試みます。

  • 連帯保証人の変更: 他の保証人(親族など)に変更する
  • 担保の追加提供: 主債務者が追加の担保を提供し、保証人を解除
  • 一括返済: 売却代金でローンを完済し、保証人の責任を解消

金融機関との交渉が難航する場合、弁護士に相談することをおすすめします。

3. 財産分与とローン残債の関係(オーバーローン時の対応)

(1) 売却価格が残債を下回る場合の資金確保

売却価格がローン残債を下回る「オーバーローン」の場合、不足分を自己資金で補填する必要があります。

オーバーローンの例

売却価格: 1,800万円
- 仲介手数料: 約65万円
- 登記費用: 約3万円
= 手取り: 約1,732万円
ローン残債: 2,000万円
→ 不足額: 268万円(自己資金で補填)

自己資金が不足する場合、以下の選択肢があります。

  • 任意売却: 金融機関の同意を得て、残債を下回る価格で売却(信用情報に影響)
  • 親族からの借入: 一時的に親族から借り入れて補填
  • 分割払いの交渉: 金融機関と不足分の分割払いを交渉

(2) 財産分与における負債の扱い

離婚時の財産分与では、資産だけでなく負債も考慮されます(国税庁: 離婚時の財産分与と不動産)。

: オーバーローンの場合

マンションの評価額: 1,800万円
ローン残債: 2,000万円
→ 純資産: -200万円(負債)

この場合、財産分与としてプラスの金額を受け取ることはできず、負債の負担割合を協議で決定します。

4. 離婚協議中の売却タイミングと価格設定戦略

(1) 離婚前・離婚後の売却メリット比較

売却タイミングによって、手続きの難易度が変わります。

タイミング メリット デメリット
離婚前 財産分与がシンプル、共有名義の合意形成が比較的容易 協議が進まず売却が遅れるリスク
離婚後 各自が独立して判断できる 共有名義の合意形成が困難になる可能性

離婚前に売却すれば、財産分与がシンプルになり、トラブルを避けられます。ただし、離婚協議中は感情的になりやすく、冷静な判断が難しい場合もあります。

(2) 急ぎの売却による価格への影響

離婚を急ぐあまり、低価格で売却すると損失が大きくなります。以下の点に注意しましょう。

  • 適正価格の把握: 複数の不動産会社に査定を依頼し、適正価格を確認
  • 売却期間の確保: 3-6か月程度の売却期間を見込む
  • 価格交渉の余地: 査定価格の5-10%程度の値下げ交渉を想定

急ぎの売却が必要な場合は、不動産会社の買取も検討しましょう(ただし、仲介より価格は低くなります)。

5. 売却時の金利負担配分と費用分担

(1) 繰上返済手数料の負担者

住宅ローンを一括返済する際、繰上返済手数料がかかる場合があります。

金融機関タイプ 繰上返済手数料
メガバンク 3-5万円程度
ネット銀行 無料が多い
フラット35 無料

繰上返済手数料の負担者は、協議で決定します。一般的には、売却代金から差し引いて分配する方法が採用されます。

(2) 仲介手数料・抵当権抹消費用の分担

売却時の諸費用は、以下のように分担します。

費用項目 金額 負担者
仲介手数料 売却価格×3%+6万円+消費税 売却代金から差し引き
抵当権抹消費用 1-3万円 売却代金から差し引き
印紙税 1-2万円 売却代金から差し引き

6. 譲渡所得税と財産分与の税務処理

(1) 財産分与の非課税要件

財産分与は、適正な範囲内であれば贈与税は課されません(国税庁: 離婚時の財産分与と不動産)。

非課税の条件

  • 分与額が社会通念上相当であること
  • 婚姻中の共有財産の範囲内であること
  • 慰謝料や養育費と明確に区別されていること

分与額が過大と判断されると、贈与税が課される可能性があるため、適正な分配が重要です。

(2) 3,000万円特別控除の適用

マイホーム(中古マンション)を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できます(国税庁: 3,000万円特別控除)。

適用条件

  • 自己の居住用財産であること
  • 配偶者や直系血族への譲渡でないこと
  • 前年・前々年に同特例を受けていないこと

離婚による売却でも適用可能ですが、離婚前に配偶者に譲渡する場合は対象外です。

譲渡所得の計算例

売却価格: 2,500万円
取得費: 2,000万円(購入価格-減価償却)
譲渡費用: 90万円(仲介手数料など)
譲渡所得: 2,500万円 - 2,000万円 - 90万円 = 410万円
3,000万円特別控除: 410万円 < 3,000万円
→ 課税譲渡所得: 0円(譲渡所得税なし)

まとめ

離婚に伴う中古マンションの売却では、共有名義のローンを売却代金で完済し、抵当権を抹消するのが基本です。連帯債務・連帯保証は離婚後も継続するため、金融機関に解除を申し入れる必要があります。

売却価格が残債を下回る場合は、不足分を自己資金で補填するか、任意売却を検討します。財産分与は原則として非課税ですが、分与額が過大だと贈与税が課される可能性があります。

離婚前に売却すれば財産分与がシンプルになりますが、急ぎの売却は価格交渉で不利になるため、適切なタイミングを見極めることが重要です。3,000万円特別控除を活用すれば、譲渡所得税の負担を大幅に軽減できます。

離婚に伴う不動産売却は複雑なため、弁護士、税理士、不動産会社など専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1離婚で中古マンションを売却する場合、共有名義のローンはどのように処理しますか?

A1売却価格でローン残債を完済し、抵当権を抹消します。連帯債務・連帯保証は離婚後も継続するため、金融機関に解除を申し入れる必要があります。解除できない場合は売却が最も確実な解決策となります。

Q2離婚時のマンション売却で、売却価格が残債を下回る場合はどうすればよいですか?

A2不足分を自己資金で補填する必要があります。財産分与の協議で負担割合を決定します。任意売却を検討する場合もありますが、信用情報に影響するため慎重に判断する必要があります。

Q3離婚協議中にマンションを売却する場合、離婚前と離婚後どちらが有利ですか?

A3離婚前に売却すれば財産分与がシンプルになります。離婚後に売却すると共有名義の合意形成が難しくなる可能性があります。ただし、急ぎの売却は価格交渉で不利になるため、適切なタイミングを見極めることが重要です。

Q4離婚でマンションを売却した場合、財産分与に税金はかかりますか?

A4適正な財産分与の範囲内であれば贈与税は課されません。ただし、分与額が過大と判断されると贈与税が課される可能性があります。また、マイホーム売却では3,000万円特別控除が適用でき、譲渡所得税の負担を軽減できます。

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