離婚に伴う中古マンション購入の相続税・贈与税ガイド

公開日: 2025/10/20

離婚に伴う中古マンション購入と相続・贈与の基礎知識

離婚を機に新生活をスタートする際、親からの資金援助や相続財産で中古マンションを購入するケースがあります。税金の仕組みと財産分与との関係を理解しましょう。

(1) 離婚時の財産分与と贈与税の関係

離婚時の財産分与は、原則として贈与税が課されません(出典: 国税庁)。これは、財産分与が夫婦の共有財産の清算であり、贈与とは性質が異なるためです。

ただし、以下の場合は贈与税が課される可能性があります。

  • 財産分与額が婚姻期間や貢献度に照らして過大である場合
  • 贈与税や相続税を不当に免れる目的で離婚したと認められる場合

一方、離婚後に親から資金援助を受けて中古マンションを購入する場合は、通常の贈与税の対象となります。

(2) 相続財産で中古マンションを購入する場合

相続により取得した財産は、すでに相続税の課税対象となっています。相続財産を使って中古マンションを購入しても、購入時に新たな税金は発生しません。

ただし、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)までに納税が必要ですので、相続財産の一部を納税用に確保しておくことが重要です。

(3) 離婚後の住宅購入における税務上の注意点

離婚後に中古マンションを購入する際の税務上の注意点は以下の通りです。

  • 単独名義での購入: 離婚後は単独名義での購入が一般的
  • 住宅ローン控除: 一定の要件を満たせば適用可能
  • 住宅取得資金贈与の非課税特例: 親からの贈与で購入する場合、特例が利用できる
  • 財産分与で得た資金: 財産分与自体には贈与税が課されないため、その資金で購入しても問題なし

相続税の計算方法と基礎控除

相続財産を活用して中古マンションを購入する場合、相続税の仕組みを理解しておきましょう。

(1) 基礎控除額の計算

相続税の基礎控除額は以下の計算式で求められます(出典: 国税庁)。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

具体例:

  • 法定相続人が1人(配偶者のみ): 3,600万円
  • 法定相続人が2人(配偶者+子1人): 4,200万円
  • 法定相続人が3人(配偶者+子2人): 4,800万円

相続財産の総額が基礎控除額を超える場合に相続税が発生します。

(2) 税率と控除額

相続税の税率は累進課税で、法定相続分に応じた取得金額により以下の税率が適用されます(出典: 国税庁)。

課税価格 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

(3) 相続財産の評価方法

相続財産には現金、預金、不動産、株式などが含まれます。不動産は以下の方法で評価されます(出典: 国税庁)。

  • 土地: 路線価方式または倍率方式
  • 建物: 固定資産税評価額
  • マンション: 専有部分の固定資産税評価額 + 敷地権の評価額

相続財産の評価額が確定すれば、そのうちどれだけを中古マンション購入に充てるか検討できます。

贈与税の仕組みと非課税特例

離婚後に親から資金援助を受けて中古マンションを購入する場合、贈与税の仕組みを理解しましょう。

(1) 暦年課税と基礎控除110万円

贈与税は原則として「暦年課税」が適用されます(出典: 国税庁)。年間110万円の基礎控除があり、これを超える部分に贈与税が課されます。

贈与税の税率(直系尊属から成年への贈与の場合):

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

(2) 相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、累計2,500万円まで贈与時の贈与税を非課税とし、相続時に相続財産に加算して精算する制度です(出典: 国税庁)。

適用要件:

  • 贈与者が60歳以上の父母または祖父母
  • 受贈者が18歳以上の子または孫
  • 一度選択すると撤回不可

離婚後、親から高額の資金援助を受ける場合、この制度を検討する価値があります。

(3) 贈与税の税率

贈与税の税率は、一般贈与と特例贈与(直系尊属から成年への贈与)で異なります。親からの贈与は特例贈与に該当し、一般贈与よりも低い税率が適用されます。

住宅取得資金贈与の非課税措置

親や祖父母から住宅購入資金の贈与を受ける場合、一定額まで非課税となる特例があります(出典: 国税庁)。

(1) 非課税限度額と適用要件

非課税限度額:

住宅の種類 非課税限度額
省エネ等住宅 1,000万円
一般住宅 500万円

※省エネ等住宅: 省エネ基準適合住宅、耐震等級2以上、バリアフリー対応等

主な適用要件:

  • 贈与者が直系尊属(父母、祖父母)であること
  • 受贈者が贈与年の1月1日時点で18歳以上
  • 受贈者の合計所得金額が2,000万円以下
  • 床面積が40㎡以上240㎡以下
  • 床面積の50%以上が居住用

離婚後の単独購入でも、これらの要件を満たせば特例を利用できます。

(2) 中古住宅の築年数制限

中古マンションで住宅取得資金贈与の非課税特例を受けるには、以下のいずれかを満たす必要があります。

  • 築年数要件: 耐火建築物は築25年以内、それ以外は築20年以内
  • 耐震基準適合証明書: 築年数を超えている場合でも、耐震基準適合証明書を取得すれば適用可能
  • 既存住宅売買瑕疵保険: 同様に、瑕疵保険に加入していれば適用可能

築年数が要件を超える中古マンションでも、耐震基準適合証明書や瑕疵保険により特例を利用できる場合があります。

(3) 申告手続きと必要書類

住宅取得資金贈与の非課税特例を受けるには、贈与を受けた翌年3月15日までに確定申告が必須です。

必要書類:

  • 贈与税申告書
  • 戸籍謄本(贈与者と受贈者の関係を証明)
  • 住民票の写し
  • 売買契約書のコピー
  • 登記事項証明書
  • 耐震基準適合証明書または瑕疵保険の付保証明書(該当する場合)

申告を忘れると非課税特例が適用されず、贈与税が課されますので注意しましょう。

小規模宅地等の特例

相続により居住用の中古マンションを取得した場合、小規模宅地等の特例により相続税評価額を大幅に減額できる可能性があります(出典: 国税庁)。

(1) 特例の概要と減額割合

小規模宅地等の特例は、被相続人が居住または事業に使用していた宅地を相続した場合、評価額を減額できる制度です。

居住用宅地の特例:

  • 減額割合: 80%
  • 適用面積: 330㎡まで
  • 減額効果: 評価額5,000万円の宅地 → 特例適用後1,000万円

この特例により、相続税の負担を大きく軽減できます。

(2) 居住用宅地の要件

小規模宅地等の特例を受けるには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

配偶者が相続する場合:

  • 無条件で特例適用

同居親族が相続する場合:

  • 相続税の申告期限まで引き続き居住し、宅地を保有すること

別居親族が相続する場合:

  • 相続開始前3年以内に持ち家に居住していないこと(家なき子特例)
  • 相続税の申告期限まで宅地を保有すること

離婚により配偶者ではなくなった場合、別居親族として「家なき子特例」の適用を受けられる可能性があります。

(3) 適用手続き

小規模宅地等の特例を適用するには、相続税の申告書に特例適用の旨を記載し、必要書類を添付します。

必要書類:

  • 相続税申告書
  • 戸籍謄本
  • 住民票の写し
  • 登記事項証明書
  • 固定資産税評価証明書

特例の適用により相続税がゼロになる場合でも、申告は必須ですので忘れずに手続きを行いましょう。

離婚後の中古マンション購入と相続税対策

離婚後、相続財産や贈与資金で中古マンションを購入することは、相続税対策としても有効な場合があります。

(1) 不動産購入と相続税評価

現金を不動産に変えることで、相続税評価額を圧縮できます(出典: 国税庁)。

評価額の比較:

資産の種類 相続税評価額
現金5,000万円 5,000万円(額面通り)
土地(路線価) 時価の約80%
建物(固定資産税評価額) 時価の約70%

例えば、時価5,000万円の中古マンションの場合、土地部分と建物部分を合わせた相続税評価額は3,500万円程度となり、現金で保有するよりも評価が下がります。

(2) 離婚後の単独名義による購入のメリット

離婚後に単独名義で中古マンションを購入する場合、以下のメリットがあります。

  • 所有権が明確: 単独名義のため、将来の相続や売却がスムーズ
  • 住宅ローン控除: 一定の要件を満たせば適用可能
  • 小規模宅地等の特例: 将来、子に相続する際に特例が適用される可能性

(3) 親からの贈与と相続税対策の組み合わせ

離婚後の中古マンション購入において、親からの贈与を活用することで、将来の相続税負担を軽減できる場合があります。

例:

  1. 親から住宅取得資金贈与の非課税特例を使って1,000万円の贈与を受ける
  2. 贈与資金を頭金に中古マンションを購入
  3. 親の相続財産が減少し、将来の相続税負担が軽減

このように、離婚後の住宅購入を機に、親の相続税対策を兼ねた計画的な贈与を検討することも可能です。

よくある質問

Q1離婚時の財産分与で得た資金で中古マンションを購入する場合、贈与税はかかりますか?

A1離婚時の財産分与は原則として贈与税が課されません。これは、財産分与が夫婦の共有財産の清算であり、贈与とは性質が異なるためです。ただし、財産分与額が婚姻期間や貢献度に照らして過大である場合や、贈与税を不当に免れる目的で離婚したと認められる場合は贈与税が課される可能性があります。財産分与で得た資金で中古マンションを購入しても、通常は追加の税金は発生しません。

Q2離婚後に親から住宅購入資金の贈与を受ける場合、贈与税の非課税特例は使えますか?

A2離婚後でも住宅取得資金贈与の非課税特例を利用できます。省エネ等住宅なら最大1,000万円、一般住宅なら500万円まで非課税です。中古マンションの場合、耐火建築物は築25年以内、それ以外は築20年以内という築年数制限があります。築年数を超える場合でも、耐震基準適合証明書や既存住宅売買瑕疵保険を取得すれば特例を利用できます。受贈者の合計所得金額が2,000万円以下などの要件を満たす必要があります。

Q3離婚後、相続財産で中古マンションを購入する場合の税金は?

A3相続により取得した財産はすでに相続税の課税対象となっているため、相続財産を使って中古マンションを購入しても購入時に新たな税金は発生しません。ただし、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)までに納税が必要ですので、相続財産の一部を納税用に確保しておくことが重要です。相続財産の評価額が基礎控除額を超える場合に相続税が発生します。

Q4離婚後に購入した中古マンションでも小規模宅地等の特例は適用できますか?

A4小規模宅地等の特例は、被相続人が居住していた宅地を相続する場合に適用されます。離婚後に購入した中古マンションは、購入者自身が被相続人となるまでは特例の対象外です。ただし、将来あなたが亡くなり、子などが相続する際には、一定の要件を満たせば特例が適用されます。離婚により配偶者ではなくなった子が相続する場合、「家なき子特例」により居住用宅地の評価額を80%減額できる可能性があります。

関連記事