中古マンション購入の相続税・贈与税とは
中古マンションを購入する際、親からの資金援助を受けるケースや、相続した資金で購入するケースがあります。この場合、相続税や贈与税の基礎知識を理解しておくことが重要です。
相続税・贈与税の基礎知識で押さえるべきポイントは以下の3点です:
- 相続税と贈与税の違い:相続税は死亡時、贈与税は生前の財産移転に課税
- 基礎控除額の違い:相続税は3,000万円+600万円×法定相続人数、贈与税は年110万円
- 住宅取得資金贈与の非課税措置:中古マンション購入資金の援助で最大1,000万円まで贈与税が非課税
初めて中古マンションを購入する方にとって、税制優遇を最大限活用することが賢い資金計画のカギとなります。
中古マンション購入と相続税・贈与税の基礎知識
相続税と贈与税の違い
相続税と贈与税は、どちらも財産の移転に課される税金ですが、以下の点で異なります:
項目 | 相続税 | 贈与税 |
---|---|---|
課税のタイミング | 被相続人の死亡時 | 生前の財産移転時 |
基礎控除額 | 3,000万円+600万円×法定相続人数 | 年110万円 |
申告期限 | 相続開始から10ヶ月以内 | 贈与を受けた年の翌年3月15日 |
税率 | 10%〜55%(超過累進税率) | 10%〜55%(超過累進税率) |
課税のタイミングと対象
相続税の課税対象:
- 現金・預金
- 不動産(土地・建物)
- 株式・有価証券
- 生命保険金(一定額を超える部分)
贈与税の課税対象:
- 親から子への資金援助
- 不動産の名義変更
- 住宅購入資金の贈与
国税庁の相続税の課税対象ガイドと贈与税の計算ガイドに詳細が記載されています。
相続税の計算方法と基礎控除額
基礎控除額の計算
相続税には基礎控除があり、以下の式で算出します:
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数
計算例:
- 法定相続人が3人(配偶者、子2人)の場合
- 基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
- 相続財産が4,800万円以下なら相続税はかかりません
税率と計算例
相続税の税率は超過累進税率で、以下のように課税されます:
課税遺産総額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
計算例:
- 相続財産:8,000万円
- 法定相続人:3人
- 基礎控除:4,800万円
- 課税遺産総額:8,000万円 - 4,800万円 = 3,200万円
- 相続税:3,200万円 × 20% - 200万円 = 440万円
贈与税の仕組みと非課税制度
暦年課税制度(年110万円の基礎控除)
贈与税には年間110万円の基礎控除があります。この基礎控除内であれば、贈与税はかかりません。
活用例:
- 親から年間110万円ずつ10年間贈与を受ける
- 合計1,100万円の贈与が非課税
相続時精算課税制度(2,500万円特別控除)
相続時精算課税制度とは、贈与税を相続時まで繰り延べる制度です。累計2,500万円まで贈与税がかからず、相続時に相続財産に加算して相続税を計算します。
適用要件:
- 贈与者:60歳以上の父母または祖父母
- 受贈者:18歳以上の子または孫
- 贈与財産:制限なし(住宅資金、現金、不動産等)
手続き:
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与税の申告
- 「相続時精算課税選択届出書」を提出
国税庁の相続時精算課税制度ガイドに詳細が記載されています。
住宅取得資金贈与の非課税特例
非課税措置の概要(最大1,000万円)
親や祖父母から住宅購入資金の援助を受けた場合、一定額まで贈与税が非課税となります:
住宅の種類 | 非課税枠(2024年) |
---|---|
省エネ等住宅 | 1,000万円 |
一般住宅 | 500万円 |
併用可能:
- 住宅取得資金贈与の非課税:1,000万円(省エネ住宅)
- 暦年贈与の基礎控除:110万円
- 合計:1,110万円まで贈与税ゼロ
さらに相続時精算課税制度(2,500万円)と併用すれば、最大3,500万円まで贈与税をゼロにできます。
中古マンションの適用要件(耐震基準・築年数)
中古マンションで住宅取得資金贈与の非課税措置を受けるには、以下の要件を満たす必要があります:
建物の要件:
- 昭和57年(1982年)1月1日以降の建築:新耐震基準適合
- 昭和56年(1981年)12月31日以前の建築:耐震基準適合証明書、既存住宅性能評価書、または既存住宅売買瑕疵保険付保証明書のいずれかが必要
その他の要件:
- 床面積:登記簿面積50㎡以上240㎡以下
- 受贈者の所得:合計所得金額2,000万円以下
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住開始
国税庁の住宅取得資金贈与の非課税措置ガイドに詳細が記載されています。
申告手続きと必要書類
贈与税の申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日に行います。
必要書類:
- 贈与税の申告書
- 売買契約書のコピー
- 登記事項証明書
- 耐震基準適合証明書(昭和56年以前の物件)
- 戸籍謄本(相続時精算課税の場合)
中古マンションの相続税評価方法
敷地権の評価(路線価または固定資産税評価額)
中古マンションの相続税評価は、敷地権(土地の共有持分)と専有部分(建物)に分けて評価します。
敷地権の評価:
- 路線価方式:路線価 × 敷地全体の面積 × 持分割合
- 倍率方式(路線価がない地域):固定資産税評価額 × 倍率 × 持分割合
専有部分の評価(固定資産税評価額)
専有部分の評価:
- 固定資産税評価額をそのまま使用
- 固定資産税評価額は市町村から毎年送付される固定資産税納税通知書に記載
築年数による建物評価の減少
中古マンションは築年数が経過すると、建物部分の固定資産税評価額が減少します。一般的に、築年数が長いほど相続税評価額は低くなります。
評価の目安:
- 築10年:新築時の約70%
- 築20年:新築時の約50%
- 築30年:新築時の約30%
詳細は国税庁の不動産の評価方法(マンション)ガイドを参照してください。
小規模宅地等の特例と適用要件
特例の概要(330㎡まで80%減額)
小規模宅地等の特例とは、被相続人が居住していた宅地について、330㎡まで相続税評価額を80%減額できる特例です。
計算例:
- 中古マンションの敷地権評価額:5,000万円
- 専有面積:80㎡(330㎡以下)
- 特例適用後:5,000万円 × 20% = 1,000万円
- 減額分:4,000万円
居住継続要件と保有継続要件
小規模宅地等の特例を受けるには、以下の要件を満たす必要があります:
配偶者が相続する場合:
- 無条件で特例適用可能
同居親族が相続する場合:
- 相続開始前から同居していること
- 相続税の申告期限まで引き続き居住・保有すること
別居親族が相続する場合:
- 被相続人に配偶者・同居親族がいないこと
- 相続開始前3年以内に自己または配偶者の所有する家屋に居住していないこと
- 相続税の申告期限まで保有すること
詳細は国税庁の小規模宅地等の特例ガイドを参照してください。
まとめ
中古マンション購入の相続税・贈与税では、以下のポイントを押さえましょう:
- 相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人数
- 贈与税の基礎控除は年110万円
- 住宅取得資金贈与の非課税措置で最大1,000万円まで贈与税ゼロ
- 相続時精算課税制度と併用すれば、最大3,500万円まで贈与税ゼロ
- 中古マンションは耐震基準適合が条件(昭和57年以降の建築または証明書必要)
- 小規模宅地等の特例で相続税評価額を最大80%減額可能
初めて中古マンションを購入する方は、税制優遇を最大限活用するため、税理士に相談することが推奨されます。