転勤購入中古戸建ての相続税・贈与税の基礎知識
転勤先で中古戸建てを購入する際、親からの資金援助を受けるケースでは、住宅取得等資金の贈与税非課税特例を活用できます。中古住宅には築年数要件がありますが、転勤先での購入でも適用可能です。
(1) 相続税の基礎控除と税率
相続税は基礎控除3000万円+600万円×法定相続人数で、税率は10-55%の累進課税です(国税庁)。
(2) 贈与税の基礎控除(年110万円)
贈与税は年110万円までの基礎控除があります。住宅取得資金贈与の非課税特例を活用すれば、さらに最大1000万円まで非課税です(国税庁)。
(3) 転勤先での購入特有の注意点
転勤先で購入しても住宅取得資金贈与の非課税特例は適用可能です。ただし、再転勤で居住できなくなる場合の住宅ローン控除への影響に注意が必要です。
住宅取得等資金の贈与税非課税特例
中古戸建て購入時に親から資金援助を受ける場合、住宅取得等資金の贈与税非課税特例を活用できます(国税庁)。
(1) 非課税限度額(中古住宅の場合)
省エネ等住宅1000万円、その他の住宅500万円まで非課税です。
(2) 適用要件(築年数等)
中古住宅は築20年以内(耐火建築物は25年以内)が原則。耐震基準適合証明書があれば築年数不問です。
(3) 転勤先での購入でも適用可能
転勤先での購入でも、居住要件(贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住開始)を満たせば適用可能です。
相続時精算課税制度の活用
住宅取得資金贈与の非課税制度と相続時精算課税制度を併用すれば、最大3500万円まで贈与税なしで援助を受けられます(国税庁)。
(1) 制度の仕組み(2500万円非課税)
60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で、2500万円まで贈与税非課税。相続時に精算します。
(2) 選択要件と注意点
一度選択すると撤回不可。その贈与者からの贈与は全て相続時精算課税が適用されます。
(3) 暦年課税との比較
親の財産が相続税の基礎控除内であれば、相続時精算課税制度との併用が有利です。超える場合は税理士と相談が必要です。
小規模宅地等の特例と転勤時の注意点
将来の相続時に小規模宅地等の特例(最大80%減額)を適用するには、転勤中の自宅の扱いに注意が必要です(国税庁)。
(1) 特例の概要(最大80%減額)
居住用宅地は330㎡まで80%減額可能。例:相続税評価額4000万円が800万円になります。
(2) 転勤中の空き家の扱い
転勤により空き家となった自宅は、生活の本拠の判断により特例適用される場合もあります。ただし、居住実態が重要です。
(3) 居住要件の確認
同居親族または家なき子特例の要件を満たす必要があります。転勤先で中古戸建てを購入すると家なき子特例は適用不可です。
中古戸建ての相続税評価額の算定方法
中古戸建ては土地が路線価、建物が固定資産税評価額で評価されます。築年数により建物評価額が低下します(国税庁)。
(1) 土地の評価(路線価方式・倍率方式)
路線価×面積×補正率で評価。市場価格の約80%程度です。
(2) 建物の評価(固定資産税評価額・築年数考慮)
建物は固定資産税評価額と同額。中古は築年数により評価額が低下します。例:築25年の木造は新築時の40-50%程度です。
(3) 評価額の変動要因
路線価は毎年7月に更新されます。地価上昇地域では評価額も上昇します。
転勤先での住宅購入と税務上の留意点
転勤先での中古戸建て購入では、住宅ローン控除、再転勤の可能性、複数不動産所有時の税負担に注意が必要です。
(1) 住宅ローン控除との関係
住宅ローン控除は居住しない期間は適用されません。再転勤で居住できなくなった場合、その年は控除が受けられません。
(2) 再転勤の可能性と税務処理
再転勤で帰任した場合、残りの期間で住宅ローン控除を再開できます。
(3) 複数不動産所有時の税負担
転勤前の自宅を残したまま新居を購入すると、相続税評価額が合算されます。小規模宅地特例は1つにのみ適用(併用は可能だが面積制限あり)です。
まとめ
転勤先で中古戸建てを購入する際の相続税・贈与税対策のポイント:
- 住宅取得資金贈与特例: 最大1000万円まで非課税(中古は築年数制限に注意)
- 相続時精算課税との併用: 最大3500万円まで贈与税なし
- 小規模宅地特例: 転勤中の空き家は要件に注意
- 中古戸建ての評価: 築年数により建物評価額が低下
- 税理士相談推奨: 転勤特有の複雑な税務論点があるため専門家助言が重要
転勤は不確実性が高く、将来の計画が立てにくい面があります。親からの資金援助を受ける場合は、贈与のタイミングと居住開始要件を慎重に検討し、確実に特例を受けられるようにしましょう。