新築戸建て買い替えの相続税・贈与税|節税完全ガイド

公開日: 2025/10/14

新築戸建て買い替え購入と相続税・贈与税の基礎知識

親からの資金援助を受けて新築戸建てに買い替える際、相続税や贈与税についての理解は必須です。適切な税制優遇措置を活用することで、大幅な節税効果が期待できます。

この記事のポイント

  • 住宅取得等資金の贈与税非課税特例で最大1,000万円まで非課税
  • 相続時精算課税制度と併用すれば最大3,500万円まで非課税
  • 小規模宅地等の特例を使えば相続税評価額が最大80%減額
  • 買い替えタイミングによって税負担が大きく変わる
  • 省エネ基準等の住宅性能要件の確認が重要

(1) 相続税の基礎控除と税率

相続税は、相続により財産を取得した場合に課される国税です。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。例えば、配偶者と子2人が相続人の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となります。

相続税の税率は10%から最高55%までの累進課税で、課税遺産総額に応じて税率が上がります。新築戸建てを購入した場合、その不動産も相続財産に含まれるため、将来の相続税負担を考慮した資金計画が重要です。

参考: 相続税の計算|国税庁

(2) 贈与税の基礎控除(年110万円)

贈与税は、個人から財産をもらった場合に課される国税です。暦年課税の場合、年間110万円までの贈与は基礎控除により非課税となります。

贈与税の税率は10%から最高55%までの累進課税で、直系尊属(親や祖父母)からの贈与の場合は「特例税率」が適用され、一般税率より低い税率となります。

参考: 贈与税の計算|国税庁

(3) 新築戸建て特有の税制優遇措置

新築戸建ての購入時には、以下の税制優遇措置が利用できます。

制度 非課税額 主な要件
住宅取得等資金の贈与税非課税 最大1,000万円 省エネ基準適合住宅
相続時精算課税制度 2,500万円 60歳以上の親から20歳以上の子へ
小規模宅地等の特例 評価額80%減額 居住要件を満たすこと

住宅取得等資金の贈与税非課税特例

(1) 非課税限度額(省エネ住宅1,000万円)

直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合、一定額まで贈与税が非課税となる特例があります。2024年以降、省エネ等基準に適合する住宅(省エネ住宅)の場合は1,000万円、その他の住宅の場合は500万円が非課税限度額です。

この特例は贈与税の基礎控除(年110万円)と併用可能で、省エネ住宅の場合は合計1,110万円まで非課税で贈与を受けることができます。

参考: 住宅取得等資金の贈与税の非課税|国税庁

(2) 適用要件と住宅性能基準

非課税特例の適用を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

贈与を受ける側の要件

  • 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し居住する見込み

住宅の要件

  • 床面積が40㎡以上240㎡以下
  • 床面積の2分の1以上が居住用
  • 省エネ住宅の場合: 省エネ基準、耐震基準、バリアフリー基準のいずれかに適合

省エネ基準適合住宅として認められるには、住宅性能証明書や建設住宅性能評価書などの証明書類が必要です。

(3) 申告手続きと必要書類

非課税特例の適用を受けるには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告が必要です。非課税枠内であっても申告は必須です。

主な必要書類

  • 贈与税の申告書
  • 住宅性能証明書(省エネ住宅の場合)
  • 登記事項証明書
  • 売買契約書の写し
  • 受贈者の戸籍謄本

相続時精算課税制度の活用

(1) 制度の仕組み(2,500万円非課税)

相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与について、累計2,500万円まで贈与税を非課税とし、贈与者が亡くなった時に相続税で精算する制度です。

2,500万円を超える部分には一律20%の贈与税が課税されますが、相続時にはこの贈与財産も含めて相続税を計算し、既に納めた贈与税は控除されます。

参考: 相続時精算課税制度|国税庁

(2) 選択要件と注意点

この制度は任意選択制で、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに税務署に届け出る必要があります。

重要な注意点

  • 一度選択すると、同じ贈与者からの贈与について暦年課税(年110万円の基礎控除)に戻ることはできません
  • 贈与時の時価で評価されるため、相続時に不動産価格が下落しても再評価されません
  • 相続税の計算時に小規模宅地等の特例の適用に影響する場合があります

(3) 住宅取得等資金の非課税特例との併用

相続時精算課税制度と住宅取得等資金の非課税特例は併用可能です。住宅取得等資金の非課税枠(最大1,000万円)を超える部分について相続時精算課税(2,500万円)を適用できます。

併用した場合の非課税額

  • 住宅取得等資金の非課税: 1,000万円
  • 相続時精算課税: 2,500万円
  • 合計: 最大3,500万円まで贈与税非課税

ただし、住宅取得等資金の非課税特例を適用する場合、相続時精算課税制度の選択は必須ではありません。資金援助額や将来の相続財産額に応じて最適な方法を選択することが重要です。

小規模宅地等の特例の適用要件

(1) 特例の概要(最大80%減額)

小規模宅地等の特例は、相続した居住用宅地の評価額を最大80%減額できる制度です。330㎡までの宅地について適用でき、例えば評価額5,000万円の土地が1,000万円に減額されるため、相続税負担が大幅に軽減されます。

参考: 小規模宅地等の特例|国税庁

(2) 居住要件の確認

特例の適用には、相続人が以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

配偶者: 無条件で適用可能

同居親族:

  • 相続開始前から相続税の申告期限まで継続して居住
  • 相続税の申告期限までその宅地を所有

非同居親族(家なき子特例):

  • 相続開始前3年以内に持ち家に住んでいない
  • 相続税の申告期限までその宅地を所有

(3) 買い替え直後の適用可否

買い替えで新築戸建てを購入した直後に相続が発生した場合、居住要件を満たすかどうかが問題となります。

同居していた親族が相続する場合、買い替え先の新築戸建てに一緒に引っ越していれば、引き続き「同居親族」として特例の適用を受けられます。ただし、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)まで継続して居住し、所有していることが必要です。

新築戸建ての相続税評価額の算定方法

(1) 土地の評価(路線価方式・倍率方式)

土地の相続税評価額は、路線価が定められている地域では「路線価方式」、路線価が定められていない地域では「倍率方式」で算定します。

路線価方式: 路線価(1㎡あたりの価格)×土地の面積×補正率 倍率方式: 固定資産税評価額×倍率

路線価は実勢価格の約80%程度に設定されているため、時価より低く評価されるのが一般的です。

参考: 不動産の相続税評価|国税庁

(2) 建物の評価(固定資産税評価額)

建物の相続税評価額は、固定資産税評価額がそのまま用いられます。固定資産税評価額は建築費の50~70%程度に設定されることが多く、新築建物の場合は時価より大幅に低く評価されます。

(3) 新築建物の評価額決定時期

新築建物の固定資産税評価額は、新築後の最初の1月1日時点で決定されます。それまでは正式な評価額が確定しないため、相続が発生した場合の評価が問題となることがあります。

固定資産税評価額が未確定の場合、建築費の約70%を目安に評価するなどの方法が用いられますが、具体的な評価方法は税理士に相談することをお勧めします。

買い替えタイミングと税負担

(1) 売却側の居住用財産特例との併用

買い替えの場合、売却側の住宅についても税制優遇措置を活用できます。居住用財産を売却した際、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「居住用財産の3,000万円特別控除」があります。

この特例と住宅取得等資金の贈与税非課税特例は併用可能です。売却益に対する譲渡所得税を軽減しつつ、購入資金の贈与税も非課税にできるため、買い替え全体の税負担を最小化できます。

(2) 贈与のタイミング最適化

贈与を受けるタイミングによって税負担が変わることがあります。

年をまたぐ贈与: 暦年課税の基礎控除(年110万円)は毎年使えるため、複数年に分けて贈与を受けることで非課税枠を最大化できます。

住宅取得のタイミング: 住宅取得等資金の非課税特例は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し居住する見込みが必要です。贈与と取得のタイミングを調整することが重要です。

(3) 一次相続・二次相続の考慮

親が2人いる場合、一次相続(最初の親の相続)と二次相続(残った親の相続)の両方を考慮した税負担シミュレーションが重要です。

一次相続での配偶者控除: 配偶者は法定相続分または1億6,000万円まで相続税が非課税となります。一次相続で配偶者が多く相続すると、二次相続で子の税負担が増える可能性があります。

生前贈与の活用: 相続時精算課税制度を活用して生前に新築資金を贈与することで、相続財産を減らし、将来の相続税負担を軽減できます。ただし、小規模宅地等の特例の適用に影響する場合があるため、総合的な判断が必要です。

まとめ

新築戸建ての買い替え購入時には、住宅取得等資金の贈与税非課税特例(最大1,000万円)と相続時精算課税制度(2,500万円)を併用することで、最大3,500万円まで贈与税非課税で資金援助を受けることができます。

将来の相続時には、小規模宅地等の特例を活用することで、居住用宅地の評価額を最大80%減額でき、相続税負担を大幅に軽減できます。

ただし、省エネ基準適合住宅の要件や居住要件など、各制度には細かい適用条件があります。買い替えタイミング、贈与のタイミング、一次相続・二次相続の影響など、総合的なシミュレーションを行い、税理士などの専門家に相談しながら最適な資金計画を立てることをお勧めします。

よくある質問

Q1新築戸建て購入時に親から資金援助を受ける場合、贈与税はかかりますか?

A1住宅取得等資金の贈与税非課税特例を活用すれば、省エネ基準適合住宅の場合は1,000万円まで贈与税が非課税となります。さらに、贈与税の基礎控除110万円と併用できるため、合計1,110万円まで非課税で贈与を受けることができます。ただし、省エネ基準適合住宅として認められるには住宅性能証明書などの証明書類が必要です。

Q2住宅取得等資金の非課税特例の適用要件は?

A2直系尊属(親や祖父母)からの贈与であること、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し居住する見込みがあること、床面積が40㎡以上240㎡以下であることなどが主な要件です。省エネ住宅として1,000万円の非課税枠を受けるには、省エネ基準、耐震基準、バリアフリー基準のいずれかに適合する必要があります。また、贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与税の申告が必須です。

Q3相続時精算課税制度と住宅取得等資金の非課税特例は併用できますか?

A3併用可能です。住宅取得等資金の非課税枠(最大1,000万円)を超える部分について相続時精算課税制度(2,500万円)を適用できます。合計で最大3,500万円まで贈与税非課税で資金援助を受けることができます。ただし、相続時精算課税制度は一度選択すると暦年課税に戻れないため、将来の相続財産額なども考慮して慎重に判断する必要があります。

Q4新築建物の相続税評価額はいつ決まりますか?

A4新築建物の固定資産税評価額は、新築後の最初の1月1日時点で決定されます。相続税評価額は固定資産税評価額をベースに算定されるため、それまでは正式な評価額が確定しません。固定資産税評価額が未確定の場合、建築費の約70%を目安に評価するなどの方法が用いられますが、具体的な評価方法は税理士に相談することをお勧めします。

Q5小規模宅地等の特例は買い替え直後でも適用できますか?

A5買い替え先の新築戸建てに親族と一緒に引っ越した場合、引き続き「同居親族」として特例の適用を受けられます。ただし、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)まで継続して居住し、その宅地を所有していることが必要です。配偶者が相続する場合は居住要件がないため、買い替え直後でも無条件で特例を適用できます。

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