相続購入中古マンションの引き渡し・引越し|完全ガイド

公開日: 2025/10/20

相続資金で中古マンションを購入する際の引き渡しと引越しの流れ

相続した資金で中古マンションを購入する場合、相続手続きと並行して進める購入・引き渡し・引越しには特有の注意点があります。遺産分割協議の完了、相続税申告期限との調整、実家の整理と並行した引越しなど、通常の購入とは異なる要素を考慮する必要があります。本記事では、相続資金での購入特有の手続きと実務的なポイントを解説します。

この記事のポイント

  • 遺産分割協議完了後に相続財産を購入資金に充当できる
  • 相続税申告期限(相続開始から10ヶ月)との調整が重要
  • 引き渡し時は通常の購入と同様の手続きだが資金源の証明書類を準備
  • 引き渡し後は管理組合への加入手続きと住民票異動が必要
  • 実家の整理と新居への引越しを並行する場合はスケジュール管理が重要

相続購入中古マンションの引き渡しとは

(1) 引き渡しと所有権移転登記の基本

引き渡しとは、売買代金の支払いと物件の所有権移転が同時に行われる最終手続きです(国土交通省:不動産売買の引き渡し手続き)。

引き渡し当日に実施する主な手続きは以下の通りです。

手続き 内容
残代金決済 売買代金から手付金を差し引いた残額を支払い
所有権移転登記 司法書士が法務局に登記申請
住宅ローン実行 金融機関が融資を実行(利用する場合)
鍵の受け渡し 物件の鍵を売主から買主へ引き渡し

(2) 相続資金での購入ケース

相続資金で中古マンションを購入する場合、購入資金の出所を明確にすることが重要です。税務署から「お尋ね」という問い合わせが来る可能性があるため、以下の書類を準備しておきます。

  • 遺産分割協議書
  • 相続税申告書(申告した場合)
  • 被相続人の通帳・入出金明細
  • 購入者本人の通帳・入出金明細

これらの書類により、購入資金が相続財産であることを証明できます。

(3) 遺産分割協議の完了

相続財産を購入資金に充当するには、原則として遺産分割協議が完了している必要があります(裁判所:遺産分割協議)。

遺産分割協議書には、相続人全員の署名・押印が必要です。協議が完了していない場合、相続財産の使用が制限されるため、購入タイミングとの調整が重要です。

引き渡し前の最終確認と準備

(1) 設備・管理規約の確認

引き渡し前に、購入物件の設備と管理規約を最終確認します。

設備の確認項目

  • 給湯器、エアコン、インターホンなどの動作確認
  • 水漏れ、雨漏りの有無
  • 扉、窓の開閉確認
  • 傷や汚れの確認

問題があれば引き渡し前に売主と修繕について協議します。引き渡し後は原則として現状渡しとなるため、この段階での確認が重要です。

管理規約の確認

マンション特有の管理規約(ペット飼育可否、リフォーム制限、騒音規制等)を事前に確認しておきます(国土交通省:マンション管理)。

(2) 相続資金取得の証明書類

相続資金で購入する場合、以下の書類を準備しておくと、税務署からの問い合わせにスムーズに対応できます。

書類 目的
遺産分割協議書 相続財産の分配方法を証明
相続税申告書(控え) 相続税を申告した場合
被相続人の通帳・入出金明細 相続した現金の出所証明
購入者本人の通帳・入出金明細 購入資金の流れを証明

これらは引き渡し時に必須ではありませんが、後日税務署から「お尋ね」が届いた場合に必要になるため、早めに整理しておくことをお勧めします。

(3) 管理費・修繕積立金の精算

引き渡し日を基準に、管理費・修繕積立金を日割り計算で精算します。引き渡し日当日から買主の負担となるため、精算額を事前に確認しておきます。

引き渡し当日の流れと必要書類

(1) 残代金決済と融資実行

引き渡し当日は、売主・買主・不動産会社・司法書士・金融機関(住宅ローン利用時)が集まり、以下の順序で手続きを進めます。

  1. 本人確認と書類確認:司法書士が本人確認書類、印鑑証明書等を確認
  2. 残代金の支払い:買主が売主に残代金を支払い(銀行振込)
  3. 住宅ローンの実行:金融機関が買主の口座に融資金を振込(利用する場合)
  4. 所有権移転登記の申請:司法書士が法務局に登記申請
  5. 鍵の受け渡し:売主から買主へ鍵を引き渡し

必要書類

書類 目的
本人確認書類(運転免許証等) 本人確認
印鑑証明書(発行後3ヶ月以内) 実印の証明
実印 契約書・登記申請書への押印
住民票(発行後3ヶ月以内) 登記申請
住宅ローン関連書類 金銭消費貸借契約書等(利用する場合)

相続資金で購入する場合でも、引き渡し当日の手続きは通常の購入と同じです。ただし、金融機関や不動産会社から資金の出所について質問される場合があるため、遺産分割協議書等を持参しておくと安心です(金融庁:住宅ローン)。

(2) 所有権移転登記の手続き

司法書士が法務局に所有権移転登記を申請します。登記には登録免許税が必要で、固定資産税評価額の2%が原則ですが、住宅用家屋は0.3%に軽減されます。

登記完了までは1~2週間かかりますが、引き渡し当日に登記申請が完了すれば、その時点で物件の所有権は買主に移転します。

(3) 鍵の受け取りと物件引き渡し

残代金決済が完了すると、売主から鍵が引き渡されます。この時点で物件を自由に使用できるようになります。

鍵を受け取ったら、改めて設備の動作確認を行い、問題がないかを確認します。

相続による資産取得と不動産購入

(1) 相続税の計算

相続税は、相続財産の総額が基礎控除を超える場合に課税されます(国税庁:相続税)。

相続税の基礎控除

基礎控除 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人数)

例:法定相続人が3人の場合

基礎控除 = 3,000万円 + (600万円 × 3) = 4,800万円

相続財産が4,800万円以下であれば相続税は非課税です。ただし、基礎控除を超える場合は、相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告と納付が必要です。

(2) 遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書は、相続人全員の合意に基づき財産の分割方法を記した書類です。以下の内容を記載します。

  • 被相続人の氏名・住所・死亡日
  • 相続人全員の氏名・住所
  • 相続財産の詳細(不動産・預金・有価証券等)
  • 各相続人が取得する財産
  • 相続人全員の署名・押印(実印)

遺産分割協議書があれば、相続財産を購入資金に充当したことを税務署に説明できます。

(3) 相続財産を購入資金に充当

相続財産(預金・有価証券等)を売却または現金化し、購入資金に充当します。以下の点に注意が必要です。

  • 遺産分割協議完了後に資金を使用する
  • 相続税納税資金を確保した上で購入予算を決定する
  • 購入後の相続税申告期限(10ヶ月)との調整
  • 資金の流れを通帳で明確に記録する

相続税申告前に購入する場合、相続財産の評価額と実際の受取額に差がある可能性があるため、税理士に相談することをお勧めします。

引き渡し後の手続きと管理組合加入

(1) 管理組合への加入手続き

引き渡し後、速やかに管理組合へ加入手続きを実施します。管理会社に連絡し、以下の書類を提出します。

  • 所有者変更届
  • 口座振替申込書
  • 駐車場・駐輪場の利用申込書(必要な場合)

管理規約・使用細則を受領し、マンションのルールを確認します。相続資金での購入のため、資金源の証明は不要ですが、遺産分割協議書は保管しておくことをお勧めします。

(2) 管理費・修繕積立金の支払い

管理費・修繕積立金は引き渡し日から発生し、翌月または翌々月から毎月支払いが始まります。

項目 内容 相場
管理費 共用部分の日常管理費用(清掃、エレベーター保守等) 月1~2万円程度
修繕積立金 大規模修繕(外壁塗装、配管交換等)の積立金 月0.5~1.5万円程度

口座振替の手続きが完了するまでは振込用紙での支払いとなる場合もあります。

(3) 住宅ローン控除の申請

住宅ローンを利用して中古マンションを購入した場合、住宅ローン控除が適用できます。年末ローン残高の0.7%を所得税・住民税から最長13年間控除できます。

初年度は確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で対応できます。

引越し後の各種手続き

(1) 住民票の異動手続き

引越し後、14日以内に住民票を異動させる必要があります。

転入届の提出

  • 提出先:新住所地の市区町村役場
  • 必要書類:転出証明書、本人確認書類、マイナンバーカード

住民票を異動させないと、住民税の通知や選挙の案内が旧住所に届くため、必ず期限内に手続きを完了させましょう。

(2) ライフライン・郵便の手続き

引越しに伴い、以下の手続きも必要です。

手続き 連絡先 タイミング
電気の開始 電力会社 引越し1週間前までに
ガスの開始 ガス会社 引越し1週間前までに(立ち会い必要)
水道の開始 水道局 引越し1週間前までに
インターネット プロバイダ 引越し1ヶ月前までに
郵便物転送届 郵便局 引越し前に提出推奨

郵便物転送届を提出すれば、1年間は旧住所宛の郵便物が新住所に転送されます。

(3) その他の住所変更

以下の住所変更も速やかに実施します。

  • 銀行の住所変更
  • クレジットカードの住所変更
  • 保険(生命保険・自動車保険等)の住所変更
  • 運転免許証の住所変更(新住所地の警察署)
  • 勤務先への住所変更届

実家の整理と並行して引越しする場合、両方のスケジュールを調整する必要があります。実家の遺品整理には時間がかかるため、早めに計画を立てることをお勧めします。

まとめ

相続資金で中古マンションを購入する場合、遺産分割協議の完了と相続税申告期限との調整が重要です。遺産分割協議書や相続税申告書などの書類を準備しておけば、税務署からの問い合わせにもスムーズに対応できます。

引き渡し手続きは通常の購入と同様ですが、資金の出所を明確にするため、通帳の入出金明細を記録しておくことが大切です。引き渡し後は、管理組合への加入手続き、住民票異動、各種住所変更を速やかに実施しましょう。

実家の整理と新居への引越しを並行する場合は、スケジュール管理が重要です。不明点がある場合は、不動産会社や税理士に相談することをお勧めします。

よくある質問

Q1相続財産で中古マンションを購入する場合の流れは?

A1遺産分割協議書を作成し、相続財産の分配を確定します。相続財産(預金・有価証券等)を購入資金に充当し、引き渡し時は通常の購入と同様に残代金決済・所有権移転登記を実施します。相続税申告期限(相続開始から10ヶ月以内)との調整が重要です。購入後も納税資金を確保しておく必要があります。

Q2遺産分割協議が未了の場合、不動産購入はできますか?

A2遺産分割協議が完了していない場合、相続財産の使用は制限されます。協議完了前に購入資金が必要な場合は、相続人全員の同意を得て一部資金を使用するか、自己資金・住宅ローンで対応します。協議完了後に相続財産で清算する方法もあります。トラブル回避のため、協議完了後の購入を推奨します。

Q3管理組合への加入手続きはどうなりますか?

A3引き渡し後、速やかに管理組合へ加入手続きを実施します。管理会社に連絡し、所有者変更届・口座振替申込書を提出します。管理規約・使用細則を受領し、マンションのルールを確認しましょう。相続資金での購入のため、資金源の証明は不要ですが、遺産分割協議書は保管しておくことをお勧めします。

Q4相続税申告と不動産購入のタイミングは?

A4相続税申告期限は相続開始から10ヶ月以内です。申告前に不動産購入も可能ですが、相続財産の評価額と実際の受取額の差に注意が必要です。購入後の相続税納税資金の確保も重要です。税理士に相談し、申告期限と購入タイミングを調整することを推奨します。納税資金不足を避けるため、購入予算は慎重に決定しましょう。

関連記事