新築戸建て購入の引き渡し・引越しガイド|検査・手続き・費用

公開日: 2025/10/14

新築戸建て購入で知っておくべき引き渡し・引越しの基本

新築戸建てを購入した場合、引き渡しから引越しまでの流れは中古物件とは異なる点があります。特に完成検査(施主検査)での入念な確認や、保証書類の受け取りが重要です。

この記事の要点

  • 引き渡し前の完成検査(施主検査)で壁・床・設備の不具合を徹底チェック
  • 引き渡し当日は残代金決済と所有権保存登記を実施、鍵と保証書類を受領
  • 保証書類は住宅性能評価書、施工会社の保証書、設備保証書など複数あり
  • 引き渡し後すぐ入居可能だが、換気のため1~2週間空けるのが推奨
  • 住民票異動は引越し後14日以内、住宅ローン控除の確定申告は翌年2~3月

1. 新築戸建て購入の引き渡しの流れ

(1) 引き渡しまでの全体スケジュール

新築戸建ての引き渡しまでの標準的なスケジュールは以下の通りです。

タイミング 主な手続き
契約締結 売買契約締結、手付金支払い
着工~上棟 建築工事の進捗確認、中間金支払い(場合による)
竣工1~2週間前 完成検査(施主検査)、指摘事項の修正
竣工・引き渡し前日まで 住宅ローン融資承認、必要書類準備
引き渡し当日 残代金決済、所有権保存登記、鍵の受領、保証書類受領
引き渡し後 引越し、住民票異動、住宅ローン控除申請

新築戸建ては建築工事の進捗により引き渡し時期が変動する可能性があるため、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。

(2) 建築工事の進捗確認と引き渡し日の調整

建築工事中は定期的に現場を訪問し、進捗を確認しましょう。

進捗確認のポイント

  • 着工時:基礎工事の確認(配筋検査)
  • 上棟時:構造躯体の確認(柱・梁の施工状況)
  • 竣工前:仕上げ工事の確認(内装・設備)

建築工事の遅延が発生した場合、施工会社と引き渡し日を再調整します。遅延の原因が施工会社側にある場合、遅延損害金の請求も検討できます(契約内容による)。

2. 引き渡し前の完成検査と立会い確認

(1) 完成検査(施主検査)の実施タイミング

完成検査(施主検査)は、引き渡し前に施主が物件の状態を確認する重要な機会です。

実施時期

  • 竣工から引き渡しまでの間(通常1~2週間前)
  • 建築会社の竣工検査とは別に実施
  • 所要時間:2~3時間程度

立会人

  • 施主(本人)
  • 施工会社担当者
  • 設計士(設計事務所に依頼した場合)
  • 第三者の住宅診断士(ホームインスペクター、任意)

第三者の住宅診断士に依頼すると、専門的な視点で不具合を指摘してもらえます(費用5~10万円程度)。

(2) 確認すべき設備と施工不良のチェックポイント

完成検査では、以下の項目を入念にチェックします。

構造・仕上げのチェック

  • 床・壁・天井の傷、汚れ、ひび割れ
  • 建具(ドア、窓、ふすま)の開閉動作、隙間
  • 壁紙の剥がれ、浮き、継ぎ目のずれ
  • 床の水平確認(ビー玉を転がして確認)

設備のチェック

  • キッチン:水栓、コンロ、換気扇、食洗機の動作確認
  • 浴室:水栓、シャワー、換気扇、排水の動作確認
  • トイレ:水洗、ウォシュレット、換気扇の動作確認
  • 給排水設備:全蛇口の水漏れチェック
  • 電気設備:照明、コンセント、スイッチの動作確認
  • エアコン:試運転(可能であれば)

外構・外部のチェック

  • 外壁のひび割れ、汚れ
  • バルコニーの排水状況
  • 駐車スペースの仕上げ
  • 門扉、フェンスの施工状況

(3) 指摘事項の修正依頼と再確認

完成検査で不具合を発見した場合、その場で指摘し、修正を依頼します。

指摘の方法

  • マスキングテープで不具合箇所をマーク
  • 写真・動画で記録を残す
  • 指摘事項リストを作成し、施工会社と共有

修正完了の確認

  • 引き渡し前に修正完了を再確認
  • 修正が間に合わない場合は引き渡し後の修正スケジュールを明確化
  • 重大な不具合の場合は引き渡し延期も検討

引き渡し後は「傷が新しくついたのか元からあったのか」の判別が困難になるため、引き渡し前に必ず指摘することが重要です。

3. 引き渡し当日の手続きと必要書類

(1) 本人確認書類と印鑑証明書

引き渡し当日に必要な書類を事前に準備します。

本人確認書類

  • 運転免許証、マイナンバーカード、パスポート等
  • 有効期限内のものを用意

印鑑証明書

  • 発行から3ヶ月以内のもの
  • 2通用意(所有権保存登記、抵当権設定登記用)
  • 実印も持参

住民票

  • 発行から3ヶ月以内のもの
  • 所有権保存登記用に1通
  • マイナンバー記載の有無は司法書士に確認

(2) 住宅ローン関連書類

住宅ローンを利用する場合、金融機関から指示された書類を準備します。

一般的な必要書類

  • 売買契約書のコピー
  • 建築確認済証のコピー
  • 建物図面、土地測量図
  • 収入証明書(源泉徴収票、確定申告書等)
  • 預金通帳(自己資金の確認)

住宅ローン実行の確認

  • 融資実行日が引き渡し日と一致しているか
  • 融資金額が残代金に足りているか
  • 振込先口座の情報(売主の口座)

(3) 残代金決済と所有権保存登記

引き渡し当日は、以下の流れで手続きが進みます。

引き渡し当日の流れ

  1. 本人確認と書類の確認(司法書士)
  2. 残代金の支払い(振込または現金)
  3. 固定資産税等の清算
  4. 所有権保存登記の申請書類への署名・押印
  5. 抵当権設定登記の申請書類への署名・押印(住宅ローン利用時)
  6. 鍵の受け渡し
  7. 保証書類・図面等の受領
  8. 設備の取扱説明
  9. 司法書士が法務局へ登記申請

登録免許税の負担

  • 所有権保存登記:固定資産税評価額の0.15%(軽減税率適用時)
  • 抵当権設定登記:借入額の0.1%(軽減税率適用時)

国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)によると、軽減税率は住宅用家屋の取得に適用されます。

(4) 鍵の受け渡しと設備説明

鍵の受領時には、以下を確認します。

鍵の確認

  • 玄関、勝手口、各室の鍵の本数
  • スペアキーの有無
  • 鍵の種類(ディンプルキー、カードキー等)

設備説明の受領

  • キッチン、浴室、トイレ等の設備の使用方法
  • 給湯器、エアコン、床暖房等の操作説明
  • 緊急時の対処方法(水漏れ、停電等)

設備の取扱説明書も受領し、保証書と一緒に保管します。

4. 保証書類と住宅性能評価書の受け取り

(1) 住宅性能評価書の内容確認

住宅性能評価書は、第三者機関が住宅の性能を評価した書類です。

評価項目

  • 構造の安定(耐震等級1~3)
  • 火災時の安全性
  • 劣化の軽減(劣化対策等級1~3)
  • 維持管理・更新への配慮
  • 温熱環境・エネルギー消費量(省エネ等級1~7)
  • 空気環境
  • 光・視環境
  • 音環境
  • 高齢者等への配慮(バリアフリー等級1~5)
  • 防犯

住宅性能評価書は、住宅ローン控除の優遇措置や将来の売却時に有利になる場合があります。

(2) 施工会社の保証書(アフターサービス基準書)

施工会社の保証書には、以下の内容が記載されています。

保証内容

  • 構造躯体:10年保証(住宅の品質確保の促進等に関する法律により義務)
  • 雨漏り:10年保証(同法により義務)
  • 設備:1~2年保証(契約による)
  • 仕上げ:1年保証(契約による)

アフターサービス

  • 定期点検のスケジュール(3ヶ月、1年、2年、5年、10年等)
  • 緊急時の連絡先
  • 保証対象外の事項(経年劣化、自然災害等)

(3) 設備メーカーの保証書と取扱説明書

設備メーカーの保証書も受領します。

主な設備の保証期間

  • キッチン、浴室、洗面台:1~2年
  • 給湯器:1~2年
  • エアコン:1年
  • 太陽光発電システム:10~15年(メーカーによる)

保証期間内の不具合は無償修理の対象となるため、保証書は大切に保管しましょう。将来のメンテナンスや売却時にも必要になります。

5. 引き渡し後の引越しと住民票異動手続き

(1) 引き渡しから引越しまでの期間

引き渡し当日から鍵を受け取り、すぐに入居可能です。

引越しのタイミング

  • 引き渡し当日:鍵の受領後、荷物搬入可能
  • 引き渡し翌日以降:ライフライン(電気・ガス・水道)の開通確認後に引越し
  • 推奨:引き渡し後1~2週間空けて換気(新築特有の木材の湿気や塗料の臭いを除去)

引越し業者の手配

  • 引き渡し日が確定したら早めに見積もり依頼
  • 繁忙期(3~4月)は1~2ヶ月前に予約
  • 閑散期(6~8月、11~1月)は比較的スムーズに手配可能

引越し費用の目安

  • 単身:3~6万円(近距離)
  • 2人家族:5~10万円(近距離)
  • 4人家族:10~15万円(近距離)
  • 繁忙期は1.5~2倍に増額

(2) 住民票異動の期限(14日以内)と必要書類

引越し後14日以内に住民票を異動する必要があります(総務省https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/gaiyou.html)。

手続きの流れ

  1. 旧住所の市区町村で転出届を提出(引越し前または引越し後14日以内)
  2. 転出証明書を受領
  3. 新住所の市区町村で転入届を提出(引越し後14日以内)
  4. 新しい住民票を取得

必要な書類

  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)
  • 転出証明書(転入時)
  • マイナンバーカード(住所変更)

期限を過ぎると過料(罰金)が科される可能性があるため、早めに手続きしましょう。

(3) 郵便物転送届と各種変更手続き

住民票異動と並行して、以下の手続きを行います。

郵便物転送届

  • 郵便局の窓口または郵便局のWebサイトで申込
  • 転送期間:1年間(延長可能)
  • 旧住所宛の郵便物が新住所に転送される

各種住所変更

変更先 手続き方法 タイミング
運転免許証 警察署または運転免許センター 住民票異動後速やかに
銀行口座 窓口またはWeb 住所変更後1ヶ月以内
クレジットカード Web 住所変更後1ヶ月以内
携帯電話 Web 住所変更後速やかに
保険(生命保険、自動車保険等) 担当者または電話 住所変更後1ヶ月以内
勤務先 人事部へ届出 住所変更後速やかに

住所変更を怠ると、重要な通知が届かない可能性があります。チェックリストを作成し、漏れなく手続きしましょう。

6. 新築戸建て特有の諸費用と税金

(1) 不動産取得税・登録免許税の軽減措置

新築戸建て購入時には、不動産取得税と登録免許税が発生します。

不動産取得税(総務省)

  • 本則税率:4%
  • 軽減税率:3%(2024年3月31日まで)
  • 軽減措置:新築住宅は課税標準額から1,200万円控除(認定長期優良住宅は1,300万円控除)

計算例

  • 固定資産税評価額:2,000万円(建物)
  • 控除後:2,000万円 - 1,200万円 = 800万円
  • 不動産取得税:800万円 × 3% = 24万円

不動産取得税は取得後6ヶ月~1年半後に納付通知が届きます。

登録免許税(国税庁)

  • 所有権保存登記:固定資産税評価額の0.15%(軽減税率適用時、本則0.4%)
  • 抵当権設定登記:借入額の0.1%(軽減税率適用時、本則0.4%)

(2) 住宅ローン控除の適用要件と申請

新築戸建てで住宅ローン控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります(国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1213.htm)。

適用要件

  • 床面積が50㎡以上(2023年までは40㎡以上も対象、ただし所得制限あり)
  • 新築または取得日から6ヶ月以内に居住
  • 床面積の1/2以上が自己の居住用
  • 住宅ローンの借入期間が10年以上
  • 年間所得が2,000万円以下

控除額

  • 認定長期優良住宅・ZEH水準省エネ住宅:年間最大35万円(借入限度額5,000万円)
  • 省エネ基準適合住宅:年間最大31.5万円(借入限度額4,500万円)
  • その他の住宅:年間最大21万円(借入限度額3,000万円)

控除率は年末ローン残高の0.7%、控除期間は最大13年間です。

確定申告

  • 初年度:引き渡しを受けた年の翌年2月16日~3月15日に確定申告
  • 2年目以降:会社員は年末調整で対応可能

(3) 固定資産税の初年度納付タイミング

固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されます。

初年度の納付

  • 1月2日以降に引き渡しを受けた場合:翌年から課税
  • 売買契約時に「固定資産税等の清算」として日割り計算した金額を売主に支払う場合がある

新築住宅の軽減措置

  • 一般住宅:固定資産税が3年間1/2に軽減
  • 認定長期優良住宅:固定資産税が5年間1/2に軽減

まとめ

新築戸建て購入の引き渡し・引越しでは、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 引き渡し前の完成検査(施主検査)で壁・床・設備の不具合を徹底チェック、指摘事項は引き渡し前に修正
  • 引き渡し当日は残代金決済と所有権保存登記を実施、鍵と保証書類を受領
  • 保証書類は住宅性能評価書、施工会社の保証書、設備保証書など複数あり、将来のメンテナンス・売却時に必要
  • 引き渡し後すぐ入居可能だが、換気のため1~2週間空けるのが推奨
  • 住民票異動は引越し後14日以内、郵便転送届や各種住所変更も同時に手続き
  • 住宅ローン控除の確定申告は翌年2~3月、初年度は必須で2年目以降は年末調整可能

新築戸建ての引き渡しは、長年住む家を受け取る重要な節目です。完成検査で入念にチェックし、保証書類を大切に保管することで、安心して新生活をスタートできます。不明点があれば施工会社や不動産会社に相談しましょう。

よくある質問

Q1新築戸建ての引き渡し前に完成検査(施主検査)は必ず実施すべきですか?

A1引き渡し前の完成検査は非常に重要です。建築会社が実施する竣工検査とは別に、施主自身が壁・床・天井の傷や汚れ、建具の動作、設備の不具合をチェックします。指摘事項は引き渡し前に修正してもらうのが原則です。引き渡し後は「傷が新しくついたのか元からあったのか」の判別が困難になります。第三者の住宅診断士(ホームインスペクター)に依頼する方法もあります(費用5~10万円程度)。

Q2引き渡し当日に受け取る保証書類にはどのようなものがありますか?

A2住宅性能評価書(耐震性・省エネ性等の第三者評価)、施工会社の保証書(アフターサービス基準書。構造躯体10年保証、設備2年保証等)、設備メーカーの保証書(キッチン・浴室・給湯器等)、建築確認済証・検査済証のコピー、竣工図面(配線図・配管図含む)などがあります。これらは将来のメンテナンス・売却時に必要となるため大切に保管してください。

Q3新築戸建ての引き渡し後、すぐに引越しできますか?

A3引き渡し当日から鍵を受け取り入居可能です。ただし新築は建築中の木材の湿気や塗料の臭いが残る場合があるため、引き渡し後1~2週間は換気を十分に行うことが推奨されます。引越し業者は繁忙期(3~4月)を避けければ比較的スムーズに手配可能です。住民票異動は引越し後14日以内に転入届を提出する必要があります。

Q4新築戸建ての住宅ローン控除はいつから適用されますか?

A4引き渡し(所有権保存登記)を受けた年の年末から住宅ローン控除が適用開始されます。最長13年間、年末ローン残高の0.7%を所得税・住民税から控除可能です。新築の場合、借入限度額は省エネ性能により3,000~5,000万円です。初年度は確定申告が必要(翌年2月16日~3月15日)で、2年目以降は年末調整で対応可能です(会社員の場合)。

Q5完成検査で不具合を見つけた場合、どうすればいいですか?

A5完成検査で不具合を発見したら、その場で指摘し、修正を依頼します。マスキングテープで不具合箇所をマークし、写真・動画で記録を残します。指摘事項リストを作成し、施工会社と共有しましょう。引き渡し前に修正完了を再確認し、修正が間に合わない場合は引き渡し後の修正スケジュールを明確化します。重大な不具合の場合は引き渡し延期も検討すべきです。

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