中古マンション売却の確定申告|譲渡所得と控除ガイド

公開日: 2025/10/19

中古マンションを売却して利益が出た場合、翌年に確定申告が必要です。しかし、多くの方が「どの書類が必要なのか」「譲渡所得の計算方法は?」「申告を怠るとどうなるのか」と不安を感じています。

本記事では、中古マンション売却時の確定申告について、譲渡所得の計算方法、使える控除・特例、必要書類、所有期間と税率の関係、よくある申告ミスまで、国税庁の公式情報を基に基礎から詳しく解説します。

この記事のポイント

  • 売却で利益が出た場合、翌年2月16日~3月15日に確定申告が必須
  • 5年以内の短期譲渡は税率39.63%、5年超の長期譲渡は20.315%
  • 居住用マンションなら3,000万円特別控除が適用可能
  • 取得費が不明な場合は売却価格の5%を概算取得費として計算(税負担増)
  • 申告を怠ると無申告加算税(最大20%)と延滞税が課される

1. 中古マンション売却の確定申告の基礎

マンション売却で利益(譲渡所得)が出た場合、確定申告が必要です。

(1) 確定申告が必要なケース

以下の場合に確定申告が必要です:

  • 売却価格 > 取得費 + 譲渡費用(利益が出た)
  • 3,000万円特別控除等の特例を適用したい
  • 譲渡損失を他の所得と損益通算したい

(2) 申告期限(翌年2月16日~3月15日)

売却した年の翌年2月16日~3月15日に確定申告を行います。

(3) 申告を怠った場合のペナルティ

期限内に申告しない場合:

  • 無申告加算税: 本来の税額の15-20%
  • 延滞税: 年7.3-14.6%
  • 3,000万円特別控除が受けられない

2. 譲渡所得の計算方法

譲渡所得は以下の計算式で求めます。

(1) 譲渡所得の計算式

譲渡所得 = 譲渡収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)

(2) 取得費に含められる費用

  • 購入代金
  • 仲介手数料
  • 登記費用
  • 不動産取得税
  • リフォーム費用(資産価値を高めるもの)

(3) 譲渡費用に含められる費用

  • 売却時の仲介手数料
  • 印紙税
  • 測量費
  • 建物解体費

注意: 管理費・修繕積立金は譲渡費用に含められません。

(4) 取得費が不明な場合の概算取得費5%

購入時の契約書が見つからない場合、売却価格の5%を概算取得費として計算できます。ただし、税負担が大幅に増えるため、契約書を探すことを強く推奨します。

計算例:

売却価格3,000万円の場合:
概算取得費 = 3,000万円 × 5% = 150万円

譲渡所得 = 3,000万円 - 150万円 - 譲渡費用
        = 約2,850万円 - 譲渡費用

長期譲渡税率20.315%の場合:
税額 = 約580万円(概算)

3. 中古マンション売却で使える控除・特例

(1) 3,000万円特別控除

居住用マンションを売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。

適用要件:

  • 実際に居住していたマンション
  • 住まなくなった日から3年以内に売却
  • 前年・前々年に特例を受けていない

(2) 10年超所有の軽減税率

所有期間10年超の居住用マンションを売却した場合、6,000万円以下の部分に軽減税率14.21%が適用されます。

(3) 買換え特例との併用可否

3,000万円特別控除と買換え特例は併用できません。どちらか有利な方を選択します。

(4) 譲渡損失が出た場合の繰越控除

売却で損失が出た場合、他の所得と損益通算でき、控除しきれない部分は翌年以降3年間繰越可能です。

4. 確定申告の手続きと必要書類

(1) 譲渡所得の内訳書の作成

国税庁のHPからダウンロードし、売却価格・取得費・譲渡費用を記入します。

(2) 売買契約書のコピー

  • 売却時の売買契約書
  • 購入時の売買契約書

(3) 仲介手数料等の領収書

売却時・購入時の仲介手数料、登記費用等の領収書。

(4) 登記事項証明書

法務局で取得(1通600円)。

(5) リフォーム費用の証明書類

資産価値を高めるリフォームを行った場合、領収書を添付します。

5. 所有期間と税率の関係

(1) 短期譲渡所得(5年以下):税率39.63%

所有期間5年以内の売却は短期譲渡所得として税率39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)が適用されます。

(2) 長期譲渡所得(5年超):税率20.315%

所有期間5年超の売却は長期譲渡所得として税率20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)が適用されます。

(3) 所有期間の判定方法(売却年1月1日時点)

所有期間は売却した年の1月1日時点で判定します。

判定例:

  • 2019年10月購入 → 2024年12月売却
  • 2024年1月1日時点で所有期間4年3ヶ月 → 短期譲渡

6. よくある申告ミスと対策

(1) 取得費の証明書類不足

購入時の契約書を紛失すると、5%ルールで税負担が増えます。契約書は大切に保管しましょう。

(2) 修繕積立金の誤計上

管理費・修繕積立金は譲渡費用に含められません。仲介手数料・印紙税のみが対象です。

(3) 所有期間の計算間違い

所有期間の判定は「売却年の1月1日時点」です。実際の保有期間ではありません。

(4) 申告期限の見落とし

期限を過ぎると無申告加算税・延滞税が課されます。早めに準備しましょう。

まとめ

中古マンション売却時の確定申告は、翌年2月16日~3月15日に行います。5年以内の短期譲渡は税率39.63%、5年超の長期譲渡は20.315%と大きな差があります。

居住用マンションなら3,000万円特別控除が適用でき、譲渡所得3,000万円までは実質非課税です。取得費が不明な場合は5%ルールで計算できますが、税負担が増えるため、購入時の契約書を必ず保管してください。

申告を怠ると無申告加算税・延滞税が課されるため、期限内に適切に申告することが重要です。

よくある質問

Q1中古マンション売却で利益が出なかった場合も確定申告は必要ですか?

A1譲渡所得がない場合は確定申告は不要です。ただし、譲渡損失を他の所得と損益通算したい場合や、繰越控除を受けたい場合は確定申告が必要です。

Q2購入時の売買契約書が見つからない場合はどうすればいいですか?

A2取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として計算できます。ただし、これは税負担が増えるため、可能な限り契約書を探すか、不動産会社や法務局で記録を確認することをお勧めします。

Q3リフォーム費用は取得費に含められますか?

A3資産価値を高めるリフォーム費用(増築、改築など)は取得費に算入できます。ただし、通常の修繕費は含められません。領収書など証明書類の保管が必須です。

Q4修繕積立金は譲渡費用に含められますか?

A4管理費・修繕積立金は譲渡費用には含められません。これらは通常の維持管理費用であり、売却のために直接要した費用ではないためです。

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