買い替え購入中古戸建ての申告・計算・書類|完全ガイド

公開日: 2025/10/20

買い替え購入中古戸建ての確定申告:基礎知識と全体像

既存物件を売却して中古戸建てに買い替える場合、確定申告では購入側の住宅ローン控除と、売却側の譲渡所得の両方を処理する必要があります。特に住宅ローン控除は初年度の確定申告が必須で、申告を忘れると控除を受けられなくなります。

本記事のポイント

  • 買い替えでは購入側の住宅ローン控除と売却側の譲渡所得を同時申告
  • 住宅ローン控除は初年度の確定申告が必須(2年目以降は年末調整で可能)
  • 買い替え特例と3,000万円特別控除は選択制で併用不可
  • 住宅ローン控除と買い替え特例も併用制限あり
  • 中古戸建ては築年数要件(築20年以内等)に注意が必要

確定申告の基礎知識と全体像

(1) 確定申告が必要なケースとは

買い替えで中古戸建てを購入した場合、以下のケースで確定申告が必要です。

ケース 申告の必要性 理由
住宅ローンを利用して購入 必須 住宅ローン控除の適用には初年度の確定申告が必須
旧居を売却して譲渡所得が発生 必須 売却益に対する譲渡所得税の申告
旧居を売却して譲渡損失が発生 任意(推奨) 損益通算・繰越控除の特例を受けられる

重要: 住宅ローン控除は初年度の確定申告を行わないと控除を受けられません。2年目以降は年末調整で対応できますが、初年度は必ず申告しましょう。

(2) 申告期限とスケジュール

確定申告の期限は、購入・売却した翌年の2月16日から3月15日までです。

スケジュール例:

  • 2024年6月: 旧居を売却
  • 2024年8月: 中古戸建てを購入
  • 2025年2月16日〜3月15日: 確定申告期間

申告期限を過ぎても5年以内であれば還付申告は可能ですが、住宅ローン控除の開始が遅れるため、期限内に申告することを強く推奨します。

税制優遇と特例の活用方法

(1) 住宅ローン控除の適用要件

国税庁の住宅ローン控除ガイドによると、中古戸建て購入時の住宅ローン控除には以下の要件があります。

基本要件:

  • 返済期間10年以上の住宅ローンを利用
  • 取得日から6ヶ月以内に入居し、適用を受ける各年の12月31日まで居住
  • 床面積が50平方メートル以上(合計所得1,000万円以下の場合は40平方メートル以上)
  • 店舗併用住宅の場合、居住部分の床面積が1/2以上

中古戸建て特有の要件:

  • 築年数: 築20年以内(耐火建築物は築25年以内)
  • または、耐震基準適合証明書を取得
  • または、既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)を取得
  • または、既存住宅売買瑕疵保険に加入

築年数が要件を超えている場合でも、耐震基準適合証明書等を取得すれば控除を受けられます。

控除額:

  • 年末ローン残高の0.7%を最大13年間控除
  • 中古住宅の場合、借入限度額は最大2,000万円(年間控除額最大14万円)

(2) その他の特例措置と選択

買い替え時には、以下の特例措置を選択できます。

旧居売却時の特例:

特例 概要 適用要件
3,000万円特別控除 譲渡所得から3,000万円を控除 居住用財産の売却
買い替え特例(課税繰延) 譲渡益への課税を次回売却時まで繰り延べ 所有期間10年超、売却価格1億円以下など
損益通算・繰越控除 売却損失を給与所得等と通算できる 住宅ローン残債がある等

3,000万円特別控除の計算例:

売却価格: 4,000万円
取得費: 2,500万円
譲渡費用: 150万円
譲渡所得: 4,000万円 - 2,500万円 - 150万円 = 1,350万円
特別控除適用後: 0円(1,350万円 < 3,000万円)
→ 税額: 0円

(3) 特例の併用可否と注意点

併用できない組み合わせ:

  • 3,000万円特別控除 × 買い替え特例: どちらか一方のみ選択可能
  • 住宅ローン控除 × 買い替え特例: 住宅ローン控除を優先する場合が多い
  • 3,000万円特別控除 × 住宅ローン控除: 3,000万円控除を適用すると、新居の住宅ローン控除が3年間使えなくなる(売却年の前後2年間)

選択の目安:

  • 譲渡所得が少ない場合: 3,000万円特別控除で税額がゼロになるなら、こちらを選択
  • 譲渡所得が多い場合: 買い替え特例で課税を繰り延べし、住宅ローン控除を優先
  • 売却損が出た場合: 損益通算・繰越控除を活用し、住宅ローン控除も併用可能

どの特例が最も有利かは、譲渡所得の金額、新居のローン残高、今後の所得見込みなどによって異なります。税理士に試算を依頼することをお勧めします。

確定申告の具体的な手順

(1) e-Taxでの申告方法

国税庁の確定申告書作成コーナーを利用すると、自宅からオンラインで申告できます。

e-Tax申告の流れ:

  1. マイナンバーカードを準備: ICカードリーダー or スマートフォンで読み取り
  2. 確定申告書作成コーナーにアクセス: 国税庁ホームページから
  3. 住宅ローン控除の入力:
    • 「所得控除」→「住宅借入金等特別控除」を選択
    • 新居の取得価格、ローン残高、居住開始日を入力
    • 登記事項証明書、住宅ローンの年末残高証明書をPDFで添付
  4. 譲渡所得の入力(旧居を売却した場合):
    • 「分離課税の所得」→「土地建物等の譲渡所得」を選択
    • 売却価格、取得費、譲渡費用を入力
    • 特別控除を選択(3,000万円控除 or 買い替え特例)
  5. 送信: マイナンバーカードで電子署名して送信

メリット: 24時間申告可能、書類の郵送不要、還付金が早い(3週間程度)

(2) 確定申告書の記載例

住宅ローン控除の記載:

  • 第一表: 「住宅借入金等特別控除」欄に控除額を記入
  • (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書: 新居の取得価格、ローン残高、控除額を計算

譲渡所得の記載:

  • 第一表: 「分離課税の所得」欄に譲渡所得を記入
  • 第三表(分離課税用): 譲渡所得の詳細を記載
  • 譲渡所得の内訳書: 旧居の売却価格、取得費、譲渡費用の内訳を記載

(3) よくある記入ミスの防止

  • 取得費の計算ミス: 建物は減価償却費を差し引く必要がある(土地は非減価償却)
  • 譲渡費用の範囲ミス: 仲介手数料・印紙税は含むが、引越し費用は含まない
  • 特別控除の選択ミス: 3,000万円控除と買い替え特例を同時に選択してしまう
  • 住宅ローン控除の床面積ミス: 登記簿面積で50平方メートル以上が必要(壁芯面積ではない)
  • 中古戸建ての築年数要件: 築年数オーバーの場合、耐震基準適合証明書の添付を忘れずに

必要書類と取得方法

(1) 必須書類のチェックリスト

住宅ローン控除の必要書類:

書類 取得先 取得期間
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 国税庁ホームページ -
住宅ローンの年末残高証明書 金融機関 1月中旬頃
登記事項証明書 法務局 即日〜数日
売買契約書の写し 不動産会社 契約時
住民票の写し 市区町村役場 即日
耐震基準適合証明書(築年数超の場合) 建築士等 1〜2週間

譲渡所得の必要書類:

書類 取得先 取得期間
譲渡所得の内訳書 国税庁ホームページ -
売却時の売買契約書の写し 不動産会社 契約時
購入時の売買契約書の写し 自己保管 -
仲介手数料の領収書 不動産会社 決済時
登記費用の領収書 司法書士 決済時

(2) 各書類の取得先と期限

住宅ローンの年末残高証明書
金融機関から1月中旬頃に郵送されます。届かない場合は金融機関に再発行を依頼しましょう。

登記事項証明書
法務局の窓口またはオンライン(登記・供託オンライン申請システム)で取得できます。オンラインの方が手数料が安く(500円 vs 600円)、郵送で受け取れます。

耐震基準適合証明書
築20年を超える木造戸建ての場合、建築士・指定確認検査機関・登録住宅性能評価機関に依頼します。費用は5〜10万円程度、取得に1〜2週間かかります。

(3) 書類不備時の対応

購入時の売買契約書が見つからない場合
取得費が不明な場合、売却価格の5%を概算取得費として計算できます。ただし、実際の取得費より大幅に少なくなり税負担が増えるため、不動産会社に証明書発行を依頼するなど、できる限り実額を証明しましょう。

住宅ローンの年末残高証明書が届かない場合
金融機関に再発行を依頼します。通常1〜2週間で発行されます。

よくある失敗と注意点

(1) 申告漏れを防ぐポイント

  • 住宅ローン控除の申告忘れ: 初年度に申告しないと控除を受けられない
  • 譲渡所得の申告忘れ: 3,000万円控除で税額がゼロになる場合でも申告が必要
  • 損益通算の申告忘れ: 売却損が出た場合、申告すれば給与所得から控除できる

(2) 特例適用の判断ミス

  • 3,000万円控除と買い替え特例の併用: 併用不可なので、どちらか一方を選択
  • 住宅ローン控除と3,000万円控除の併用: 3,000万円控除を使うと住宅ローン控除が3年間使えなくなる
  • 中古戸建ての築年数要件: 築年数オーバーでも耐震基準適合証明書があれば控除可能

(3) 期限管理の重要性

確定申告期限(翌年2月16日〜3月15日)を過ぎても還付申告は可能ですが、住宅ローン控除の開始が遅れます。

: 2024年に購入した場合

  • 2025年3月15日までに申告: 2024年分から控除開始
  • 2025年3月16日以降に申告: 2025年分から控除開始(1年分の控除を逃す)

専門家への相談タイミング

(1) 税理士への相談が必要なケース

以下のケースでは、税理士に相談することをお勧めします。

  • 複数の特例から最適なものを選びたい: 3,000万円控除、買い替え特例、損益通算の試算比較
  • 取得費が不明で概算取得費を使いたくない: 実額証明の方法を相談
  • 共有名義で持分が複雑: 持分に応じた譲渡所得の按分計算
  • 相続した物件を売却: 取得時期・取得費の特例処理
  • 事業用と居住用の併用: 按分計算と特例適用の可否

(2) 相談時の準備事項

税理士に相談する際は、以下の情報を準備しましょう。

  • 旧居の購入時・売却時の売買契約書
  • 新居の購入時の売買契約書
  • 住宅ローンの年末残高証明書
  • 登記事項証明書
  • 確定申告書(過去3年分)
  • 減価償却費の計算明細(旧居が投資用だった場合)

相談料は1〜3万円程度が一般的です。適切な申告により節税効果が期待できるため、複雑なケースでは専門家への相談が有効です。

まとめ

買い替えで中古戸建てを購入した場合、住宅ローン控除の初年度確定申告と、旧居売却の譲渡所得申告を同時に行う必要があります。住宅ローン控除は初年度の申告が必須で、申告を忘れると控除を受けられなくなるため、必ず期限内に申告しましょう。

買い替え特例と3,000万円特別控除は選択制で併用不可、住宅ローン控除と買い替え特例も併用制限があります。どの特例が最も有利かは、譲渡所得の金額や新居のローン残高によって異なるため、税理士に試算を依頼することをお勧めします。

中古戸建ては築年数要件(築20年以内等)に注意が必要ですが、耐震基準適合証明書等を取得すれば控除を受けられます。必要書類を漏れなく準備し、期限内に申告を完了させましょう。

よくある質問

Q1. 買い替え購入中古戸建ての確定申告で最も重要なポイントは何ですか?

A. 初年度の確定申告期限を守ることと、必要書類を漏れなく準備することです。

住宅ローン控除は初年度の確定申告が必須で、申告を忘れると控除を受けられなくなります。申告期限は購入した翌年の2月16日から3月15日までです。期限を過ぎても5年以内なら還付申告は可能ですが、控除の開始が1年遅れるため、期限内に申告することを強く推奨します。

必要書類は住宅ローンの年末残高証明書、登記事項証明書、売買契約書の写し、住民票の写しなどです。築年数が20年を超える木造戸建ての場合、耐震基準適合証明書も必要になります。書類準備には1〜2ヶ月かかる場合があるため、早めに着手しましょう。

Q2. 確定申告を忘れた場合はどうなりますか?

A. 5年以内なら還付申告可能ですが、控除開始が遅れます。早めに税務署へ相談することを推奨します。

住宅ローン控除は初年度の確定申告を行わないと、その年の控除を受けられません。例えば、2024年に購入した場合、2025年3月15日までに申告すれば2024年分から控除が開始されますが、期限を過ぎて2025年に申告すると2025年分からの控除開始となり、1年分の控除を逃してしまいます。

5年以内であれば還付申告は可能なので、忘れていたことに気づいたら速やかに税務署に相談しましょう。また、譲渡所得の申告を忘れていた場合は、無申告加算税や延滞税が課される可能性があるため、早急に修正申告を行う必要があります。

Q3. 専門家に依頼すべきケースはありますか?

A. 複雑な取引や特例の併用判断が必要な場合は税理士への相談を推奨します。適切な申告で節税効果が期待できます。

以下のケースでは税理士への相談が特に有効です。

  • 複数の特例から選択したい: 3,000万円控除、買い替え特例、損益通算のどれが有利か試算してもらう
  • 取得費が不明: 概算取得費(5%)ではなく実額証明の方法を相談
  • 共有名義で持分が複雑: 持分に応じた譲渡所得の按分計算
  • 相続した物件を売却: 取得時期・取得費の特例処理

相談料は1〜3万円程度が一般的ですが、適切な申告により数十万円の節税効果が期待できる場合もあります。複雑なケースでは、専門家の知識を活用することをお勧めします。

Q4. 3,000万円控除と住宅ローン控除は併用できますか?

A. 併用は可能ですが、3,000万円控除を適用すると新居の住宅ローン控除が3年間使えなくなります。

旧居の売却で3,000万円特別控除を適用すると、新居の住宅ローン控除が売却年の前後2年間(計3年間)使えなくなります。逆に新居で住宅ローン控除を優先する場合、旧居売却では3,000万円控除を使えません。

どちらが有利かは以下の要素で判断します。

  • 旧居の譲渡所得の金額
  • 新居の住宅ローン残高
  • 今後の所得見込み

譲渡所得が少なく3,000万円控除で税額がゼロになる場合は控除を優先、譲渡所得が多い場合は買い替え特例で課税を繰り延べて住宅ローン控除を優先する方が有利なケースが多いです。税理士に試算を依頼することをお勧めします。

Q5. 中古戸建ての築年数が20年を超えている場合、住宅ローン控除は受けられませんか?

A. 耐震基準適合証明書等を取得すれば、築年数に関係なく控除を受けられます。

中古戸建ての住宅ローン控除には築20年以内という要件がありますが、以下のいずれかを満たせば築年数に関係なく控除を受けられます。

  • 耐震基準適合証明書を取得(建築士等に依頼、費用5〜10万円)
  • 既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)を取得
  • 既存住宅売買瑕疵保険に加入

これらの書類は取得に1〜2週間かかる場合があるため、購入前に不動産会社や建築士に相談しましょう。取得費用はかかりますが、住宅ローン控除による節税効果(最大13年間で182万円)の方が大きいため、取得する価値は十分にあります。

よくある質問

Q1買い替え購入中古戸建ての確定申告で最も重要なポイントは何ですか?

A1初年度の確定申告期限を守ることと、必要書類を漏れなく準備することです。住宅ローン控除は初年度の確定申告が必須で、申告を忘れると控除を受けられなくなります。申告期限は購入した翌年の2月16日から3月15日までです。期限を過ぎても5年以内なら還付申告は可能ですが、控除の開始が1年遅れるため、期限内に申告することを強く推奨します。

Q2確定申告を忘れた場合はどうなりますか?

A25年以内なら還付申告可能ですが、控除開始が遅れます。住宅ローン控除は初年度の確定申告を行わないと、その年の控除を受けられません。例えば、2024年に購入した場合、2025年3月15日までに申告すれば2024年分から控除が開始されますが、期限を過ぎると2025年分からの控除開始となり、1年分の控除を逃してしまいます。忘れていたことに気づいたら速やかに税務署に相談しましょう。

Q3専門家に依頼すべきケースはありますか?

A3複雑な取引や特例の併用判断が必要な場合は税理士への相談を推奨します。複数の特例から選択したい場合、取得費が不明な場合、共有名義で持分が複雑な場合、相続した物件を売却する場合などでは税理士への相談が特に有効です。相談料は1〜3万円程度が一般的ですが、適切な申告により数十万円の節税効果が期待できる場合もあります。

Q43,000万円控除と住宅ローン控除は併用できますか?

A4併用は可能ですが、3,000万円控除を適用すると新居の住宅ローン控除が3年間使えなくなります。旧居の売却で3,000万円特別控除を適用すると、新居の住宅ローン控除が売却年の前後2年間(計3年間)使えなくなります。どちらが有利かは譲渡所得の金額、新居の住宅ローン残高、今後の所得見込みなどで判断します。税理士に試算を依頼することをお勧めします。

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