転勤購入新築戸建ての確定申告・計算・書類|完全ガイド

公開日: 2025/10/19

不動産購入時の確定申告の基礎知識

転勤で新築戸建てを購入した場合、住宅ローン控除を受けるためには初年度に確定申告が必要です。転勤という特殊事情がある場合、転勤期間中の住宅ローン控除の継続要件、賃貸に出した場合の控除停止、再居住時の控除再開手続きなど、通常とは異なる注意点があります。

この記事でわかること(結論要約)

  • 住宅ローン控除の初年度は確定申告が必須、2年目以降は年末調整で可能
  • 転勤で単身赴任の場合、家族が居住していれば控除継続可能
  • 転勤で賃貸に出すと控除停止、再居住で控除再開できる(一定要件あり)
  • 確定申告はe-Tax(オンライン)で転勤先からでも手続き可能
  • 申告期限は原則として翌年2月16日〜3月15日

(1) 確定申告が必要なケース

不動産購入時に確定申告が必要なのは、主に以下のケースです。

ケース 確定申告の必要性
住宅ローン控除(初年度) 必須
住宅ローン控除(2年目以降・会社員) 年末調整で可能(確定申告不要)
住宅ローン控除(2年目以降・自営業者) 毎年確定申告が必要
住宅取得資金の贈与税非課税制度を利用 確定申告が必要
売却益が出た場合(譲渡所得) 確定申告が必要

転勤で新築戸建てを購入した場合、住宅ローン控除を受けるために初年度は確定申告が必須です。

(2) 住宅ローン控除の概要

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用して住宅を購入・新築した場合に、年末のローン残高の0.7%を所得税・住民税から控除できる制度です(国税庁「住宅借入金等特別控除」)。

控除額の計算:

  • 控除率: 年末ローン残高の0.7%
  • 控除期間: 最大13年間(新築住宅等、入居時期により異なる)
  • 借入限度額: 住宅の種類により異なる(認定住宅5,000万円、省エネ基準適合住宅4,500万円等)

例:

  • 年末ローン残高: 3,000万円
  • 控除額: 3,000万円 × 0.7% = 21万円

この21万円が所得税から控除され、所得税で控除しきれない分は住民税から控除されます(住民税の控除上限は9.75万円)。

住宅ローン控除の適用要件と手続き

住宅ローン控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

(1) 控除対象となる住宅の条件

住宅ローン控除の適用要件は以下の通りです(国税庁「住宅借入金等特別控除」)。

基本要件:

  • 居住要件: 新築または取得の日から6ヶ月以内に居住開始し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住
  • 床面積: 50㎡以上(合計所得金額1,000万円以下は40㎡以上)
  • 借入期間: 償還期間が10年以上
  • 所得制限: 合計所得金額が2,000万円以下

転勤時の特例:

  • 単身赴任の場合: 配偶者等が引き続き居住していれば控除継続可能(国税庁「転勤と住宅ローン控除」
  • 家族全員で転居の場合: 控除停止。再転勤で再居住すれば控除再開可能(一定要件あり)

(2) 控除額の計算方法

住宅ローン控除額は、以下の手順で計算します。

ステップ 計算内容
1. 年末ローン残高確認 金融機関から送られてくる「年末残高証明書」で確認
2. 控除額計算 年末ローン残高 × 0.7%
3. 所得税額との比較 控除額が所得税額を超える場合、超過分は住民税から控除
4. 住民税控除上限 住民税の控除上限は9.75万円(所得税の課税総所得金額等の5%、最高9.75万円)

計算例:

  • 年末ローン残高: 4,000万円
  • 控除額: 4,000万円 × 0.7% = 28万円
  • 所得税額: 15万円
  • 所得税からの控除: 15万円(全額控除)
  • 住民税からの控除: 13万円(ただし上限9.75万円のため9.75万円)
  • 合計控除額: 15万円 + 9.75万円 = 24.75万円

確定申告に必要な書類一覧

住宅ローン控除の確定申告には、以下の書類が必要です。

(1) 住宅ローン控除申請に必要な書類

書類 取得先 備考
確定申告書 税務署・国税庁HP e-Taxでオンライン作成可能
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 税務署・国税庁HP 控除額を計算する書類
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 金融機関 金融機関から郵送される
登記事項証明書 法務局 建物・土地の登記簿謄本
売買契約書の写し 不動産会社 購入時の契約書のコピー
住民票の写し 市区町村役場 居住開始日を証明
マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類) - 本人確認のため

新築戸建て特有の書類:

  • 検査済証の写し: 建築基準法に基づく完了検査済証
  • 認定通知書の写し: 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合

(2) 登記・売買契約書類

登記事項証明書は、法務局で取得します(窓口・郵送・オンライン)。

登記事項証明書の確認ポイント:

  • 建物の床面積が50㎡以上(または40㎡以上)であること
  • 自己の所有権が登記されていること
  • 抵当権設定登記がされていること(住宅ローン利用の証明)

売買契約書の写しは、購入時に不動産会社から受け取った契約書のコピーを提出します。

確定申告書の記載方法とポイント

確定申告書の記載は、e-Tax(オンライン)または税務署への郵送・持参で行います。

(1) 確定申告書Aの記載例

会社員の場合、確定申告書Aを使用します(令和5年分以降は「確定申告書」に統一)。

記載手順:

  1. 収入金額: 源泉徴収票の「支払金額」を転記
  2. 所得金額: 源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」を転記
  3. 所得控除: 源泉徴収票の各種控除額を転記
  4. 税額計算: 所得税額を計算(e-Taxなら自動計算)
  5. 税額控除: 住宅ローン控除額を記入
  6. 還付金額: 源泉徴収税額 - 税額控除 = 還付金額

(2) (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書

控除額の計算明細書では、以下を記入します。

記入項目 内容
住宅の取得対価の額 売買契約書の金額(土地・建物の合計)
住宅の床面積 登記事項証明書の床面積
居住開始年月日 住民票の異動日等
年末残高 金融機関の年末残高証明書の金額
控除額 年末残高 × 0.7%

e-Taxを利用する場合、入力フォームに従って入力すれば自動計算されます。

申告期限とスケジュール

確定申告の期限とスケジュールは以下の通りです。

(1) 初年度の確定申告(2月16日〜3月15日)

住宅ローン控除の初年度確定申告は、入居した年の翌年2月16日〜3月15日に行います。

スケジュール例(2024年入居の場合):

  • 2024年中: 新築戸建て購入・入居
  • 2024年12月: 金融機関から年末残高証明書が届く
  • 2025年1-2月: 必要書類を準備(登記事項証明書・住民票等)
  • 2025年2月16日〜3月15日: 確定申告書を提出
  • 2025年4-5月: 還付金が振り込まれる

e-Tax利用のメリット:

  • 自宅から申告可能(転勤先からでもOK)
  • 還付金の振込が早い(3週間程度)
  • 添付書類の省略可能(一部書類は後日提出または保管)

(2) 2年目以降の年末調整

会社員の場合、2年目以降は会社の年末調整で住宅ローン控除を受けられます。

2年目以降の手続き:

  1. 初年度の確定申告完了後: 税務署から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が複数年分まとめて送られてくる
  2. 毎年11月頃: 金融機関から年末残高証明書が届く
  3. 年末調整: 会社に「住宅借入金等特別控除申告書」と「年末残高証明書」を提出

自営業者の場合は、毎年確定申告が必要です。

よくある間違いと注意点

住宅ローン控除の確定申告でよくある間違いと注意点を紹介します。

(1) 書類の有効期限と取得タイミング

確定申告に必要な書類には、有効期限があるものがあります。

書類 有効期限 取得タイミング
住民票の写し 発行から3ヶ月以内(税務署による) 2月頃の取得を推奨
登記事項証明書 特に規定なし 購入後速やかに取得
年末残高証明書 対象年度のもの 12月に金融機関から届く

住民票は有効期限があるため、確定申告の直前(2月頃)に取得するのが安全です。

(2) 控除対象外となるケース

以下のケースでは、住宅ローン控除が適用されません。

よくあるNG例:

  • 居住開始が遅れた: 取得から6ヶ月以内に居住開始しなかった
  • 床面積が足りない: 登記簿上の床面積が50㎡未満(所得1,000万円以下でも40㎡未満)
  • 所得が高すぎる: 合計所得金額が2,000万円を超えた
  • 借入期間が短い: 住宅ローンの償還期間が10年未満
  • 転勤で賃貸に出した: 控除を受ける年の12月31日時点で居住していない(単身赴任を除く)

転勤時の注意:

  • 単身赴任: 配偶者等が居住していれば控除継続可能。住民票や家族の居住実態を証明できる資料を保管
  • 家族全員で転居: 控除停止。再転勤で再居住すれば控除再開可能(税務署に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を提出)

再居住時の控除再開: 転勤で賃貸に出した後、再転勤で再び居住する場合、以下の要件を満たせば控除を再開できます。

  • 再居住した年以降、控除を再開できる
  • 控除期間(13年間)は居住していた期間のみカウント
  • 再居住前に税務署に届出を提出している必要がある

まとめ

転勤で新築戸建てを購入した場合、住宅ローン控除を受けるには初年度に確定申告が必須です。2年目以降は会社員なら年末調整で手続き可能ですが、自営業者は毎年確定申告が必要です。

転勤で単身赴任の場合、家族が居住していれば控除継続可能です。家族全員で転居した場合は控除停止しますが、再転勤で再居住すれば控除再開できます(税務署への届出が必要)。

確定申告はe-Tax(オンライン)で転勤先からでも手続き可能で、還付金の振込も早いです。申告期限は翌年2月16日〜3月15日なので、必要書類を早めに準備しましょう。不明な点があれば、税務署・税理士に相談することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1: 住宅ローン控除を受けるには、必ず確定申告が必要ですか?

A: 初年度は確定申告が必須です。2年目以降は会社員なら年末調整で手続き可能ですが、自営業者は毎年確定申告が必要です。

Q2: 住宅ローン控除の適用期限はいつまでですか?

A: 最大13年間(新築住宅等)または10年間(中古住宅等)です。入居時期や住宅の種類により異なるため、国税庁の最新情報を確認してください。

Q3: 必要書類はいつまでに準備すればいいですか?

A: 確定申告期限(3月15日)までに全書類を揃えます。登記事項証明書や住民票は発行から3ヶ月以内など有効期限があるため、2月頃の取得が推奨されます。

Q4: 確定申告を忘れた場合、遡って控除を受けられますか?

A: 5年以内なら更正の請求により遡って控除申請可能です。ただし、早めに対応しないと控除年数が減るため、気づいた時点で速やかに手続きしてください。

よくある質問

Q1住宅ローン控除を受けるには、必ず確定申告が必要ですか?

A1初年度は確定申告が必須です。2年目以降は会社員なら年末調整で手続き可能ですが、自営業者は毎年確定申告が必要です。

Q2住宅ローン控除の適用期限はいつまでですか?

A2最大13年間(新築住宅等)または10年間(中古住宅等)です。入居時期や住宅の種類により異なるため、国税庁の最新情報を確認してください。

Q3必要書類はいつまでに準備すればいいですか?

A3確定申告期限(3月15日)までに全書類を揃えます。登記事項証明書や住民票は発行から3ヶ月以内など有効期限があるため、2月頃の取得が推奨されます。

Q4確定申告を忘れた場合、遡って控除を受けられますか?

A45年以内なら更正の請求により遡って控除申請可能です。ただし、早めに対応しないと控除年数が減るため、気づいた時点で速やかに手続きしてください。

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