新築戸建て売却の必要書類・チェックリスト|基礎知識

公開日: 2025/10/14

新築戸建て売却に必要な書類の全体像

新築戸建てを売却する際には、一般的な不動産売却の書類に加えて、新築特有の書類が必要になります。建築確認済証や検査済証、瑕疵担保責任保険証券など、新築住宅の品質を証明する書類を準備することで、スムーズな売却と適正価格での取引が可能になります。

この記事のポイント

  • 新築戸建ては建築確認済証・検査済証が必須
  • 住宅性能評価書や瑕疵保険証券があると売却に有利
  • 所有期間5年以内の売却は短期譲渡所得として税率が約2倍
  • 建築確認済証を紛失しても台帳記載事項証明書で代替可能
  • 3,000万円特別控除を適用すれば多くの場合は非課税

(1) 必須書類と任意書類の違い

新築戸建て売却の必要書類は、「必須書類」と「任意書類(あると有利な書類)」に分類されます。

必須書類

  • 登記識別情報(権利証)
  • 印鑑証明書・実印
  • 本人確認書類(運転免許証等)
  • 住民票
  • 建築確認済証
  • 検査済証
  • 固定資産税納税通知書

任意書類(あると有利)

  • 住宅性能評価書
  • 瑕疵担保責任保険証券
  • 設計図書・仕様書
  • 建物取扱説明書
  • 保証書(設備機器等)

任意書類があると、購入希望者の信頼が高まり、売却価格や売却期間に良い影響を与えます。

(2) 書類準備のタイムライン

売却活動開始から決済までの書類準備のタイムラインは以下の通りです。

時期 必要な書類
査定依頼時 登記識別情報、建築確認済証、検査済証、固定資産税納税通知書
媒介契約時 本人確認書類
売買契約時 印鑑証明書(発行3ヶ月以内)、実印、住民票
決済・引き渡し時 印鑑証明書(再取得が必要な場合)、銀行口座情報
翌年確定申告時 売買契約書、譲渡所得計算書、3,000万円控除申請書類

印鑑証明書は発行から3ヶ月以内が有効期限のため、売買契約から決済までの期間が長い場合、再取得が必要になることがあります。

所有権を証明する登記関連書類

(1) 登記識別情報(権利証)

登記識別情報は、不動産の所有者であることを証明する12桁の英数字です。平成17年以降に登記した不動産には「登記識別情報」が発行され、それ以前は「登記済証(権利証)」が発行されています。

登記識別情報の特徴

  • 不動産ごとに発行される(土地・建物それぞれ)
  • 紛失しても再発行されない
  • 紛失した場合は「事前通知」や「公証人による本人確認」で代替可能

登記識別情報は決済時に司法書士に提示します。紛失している場合は、司法書士と早めに相談することが重要です。

参考: 不動産登記の申請手続|法務局

(2) 印鑑証明書・実印

売買契約と決済時には、実印の押印と印鑑証明書の提出が必要です。

印鑑証明書の取得方法

  • 市区町村役場の窓口(本人または代理人)
  • コンビニエンスストア(マイナンバーカード必要)
  • 郵送請求

印鑑証明書の有効期限

  • 一般的に発行から3ヶ月以内
  • 売買契約時と決済時の両方で必要
  • 有効期限が切れた場合は再取得

売買契約から決済まで通常1~2ヶ月かかるため、契約時に取得した印鑑証明書の有効期限が切れ、決済前に再取得が必要になるケースがあります。

(3) 固定資産税納税通知書

固定資産税納税通知書は、不動産の所有者に毎年送付される書類で、固定資産税の税額や評価額が記載されています。

固定資産税納税通知書の用途

  • 固定資産税の精算(売主・買主で日割り計算)
  • 登録免許税の計算(司法書士が使用)
  • 物件の評価額確認(査定時に参考)

紛失した場合は、市区町村役場で「固定資産税評価証明書」を取得することで代替できます。

新築戸建て特有の建築・性能関連書類

(1) 建築確認済証・検査済証

建築確認済証と検査済証は、新築戸建て売却において最も重要な書類です。

建築確認済証

  • 建築計画が建築基準法に適合していることを証明
  • 建築前に市区町村または民間検査機関が発行
  • 売却時に買主に引き継ぐ必須書類

検査済証

  • 完成した建物が建築確認申請の内容通りに建築されたことを証明
  • 完了検査後に発行
  • 増改築時に必要になる重要書類

参考: 建築基準法に基づく検査|国土交通省

紛失した場合の対応 建築確認済証や検査済証を紛失しても、市区町村で「台帳記載事項証明書」を取得することで代替できます。ただし、証明書取得に時間がかかる場合があり、買主によっては不安材料となるため、売却価格に影響する可能性があります。

(2) 住宅性能評価書

住宅性能評価書は、新築住宅の性能を第三者機関が評価した書類です。

住宅性能評価の10分野

  1. 構造の安定(耐震性等)
  2. 火災時の安全
  3. 劣化の軽減
  4. 維持管理・更新への配慮
  5. 温熱環境・エネルギー消費量
  6. 空気環境
  7. 光・視環境
  8. 音環境
  9. 高齢者等への配慮
  10. 防犯

参考: 住宅性能表示制度|国土交通省

住宅性能評価書がある物件は、性能が客観的に証明されているため、買主の信頼が高まり、売却価格や売却期間に良い影響を与えます。

(3) 瑕疵担保責任保険証券

瑕疵担保責任保険(住宅瑕疵担保履行法に基づく保険)は、新築住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に瑕疵があった場合、補修費用を保険でカバーする制度です。

瑕疵担保責任保険の特徴

  • 新築住宅の売主(建築会社等)に加入義務がある
  • 保険期間は10年間
  • 保険証券は買主に引き継ぐ

参考: 住宅瑕疵担保履行法|国土交通省

瑕疵保険証券がある物件は、買主の不安が軽減されるため、売却に有利です。紛失した場合は、建築会社や保険会社に再発行を依頼できます。

(4) 設計図書・仕様書

設計図書(建物の設計図面)や仕様書は、建物の詳細を確認できる重要な書類です。

設計図書・仕様書の内容

  • 建物の平面図、立面図、断面図
  • 設備配置図(電気、給排水等)
  • 仕様書(使用材料、設備機器の仕様等)

法的には売却に必須ではありませんが、購入希望者が建物の詳細を確認できないため、設計図書や仕様書がない場合、購入を見送られる可能性が高まります。建築会社に問い合わせて再発行できるケースもあるため、早めに確認することをお勧めします。

売買契約に必要な書類

(1) 本人確認書類

宅地建物取引業法に基づき、売買契約時には本人確認が必要です。

認められる本人確認書類

  • 運転免許証
  • パスポート
  • マイナンバーカード
  • 健康保険証(顔写真付き書類と併用)

顔写真付きの公的書類が原則ですが、健康保険証の場合は住民票などの補足書類が必要になることがあります。

参考: 宅地建物取引業法|国土交通省

(2) 住民票

住民票は、登記手続きや住所変更の確認に必要です。

住民票の種類

  • 世帯全員の住民票
  • 個人の住民票
  • 本籍地記載の有無(登記には本籍地記載が必要な場合あり)

住民票の有効期限は発行から3ヶ月以内が一般的です。マイナンバーカードがあればコンビニで取得できます。

(3) 銀行口座情報

売却代金の振込先となる銀行口座情報が必要です。

必要な情報

  • 金融機関名
  • 支店名
  • 口座種別(普通・当座)
  • 口座番号
  • 口座名義人

通帳のコピーやキャッシュカードのコピーを準備しておくと、記入ミスを防げます。

売却後の確定申告で必要な書類

(1) 譲渡所得の計算に必要な書類

不動産を売却した場合、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告が必要です。

譲渡所得の計算式 譲渡所得 = 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用

必要な書類

  • 売買契約書(売却時・購入時)
  • 譲渡費用の領収書(仲介手数料、登記費用等)
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表)

取得費が不明な場合、譲渡価格の5%を概算取得費として計算できますが、実際の取得費が証明できればより有利になることが多いため、購入時の売買契約書は大切に保管しておくことが重要です。

所有期間による税率の違い

所有期間 税率
5年以下(短期譲渡) 39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)
5年超(長期譲渡) 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)

※所有期間は売却した年の1月1日時点で判定されます。

新築後すぐに売却すると、所有期間5年以内の短期譲渡所得として税率が約2倍になります。ただし、居住用財産の3,000万円特別控除が適用されれば、多くの場合は非課税となります。

(2) 3,000万円特別控除の申請書類

居住用財産を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。

3,000万円特別控除の適用条件

  • 自己の居住用財産であること(別荘や投資用は対象外)
  • 売却した年の前年・前々年にこの特例を受けていないこと
  • 売主と買主が親族関係にないこと
  • 売却した年の1月1日時点で建物の所有期間が5年以下でも適用可能

参考: 3,000万円特別控除|国税庁

必要な書類

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表)
  • 売買契約書(売却時・購入時)
  • 登記事項証明書
  • 住民票(売却時の住所確認)

3,000万円特別控除を適用すれば、譲渡所得が3,000万円以下の場合は所得税・住民税がかかりません。新築戸建てを短期間で売却する場合でも、この特例により税負担を大幅に軽減できます。

書類紛失時の対応方法

新築戸建て売却で重要な書類を紛失した場合の対応方法をまとめます。

紛失書類 対応方法
登記識別情報(権利証) 再発行不可。「事前通知」や「公証人による本人確認」で代替
建築確認済証・検査済証 市区町村で「台帳記載事項証明書」を取得
住宅性能評価書 評価機関に再発行依頼
瑕疵保険証券 建築会社または保険会社に再発行依頼
設計図書・仕様書 建築会社に再発行依頼(有料の場合あり)
固定資産税納税通知書 市区町村で「固定資産税評価証明書」を取得

書類の紛失に気づいたら、できるだけ早く再発行手続きを開始することが重要です。再発行に時間がかかる書類もあるため、売却活動開始前に書類を確認しておくことをお勧めします。

まとめ

新築戸建て売却には、登記識別情報や印鑑証明書などの一般的な書類に加えて、建築確認済証や検査済証などの新築特有の書類が必要です。住宅性能評価書や瑕疵保険証券があると、買主の信頼が高まり売却に有利です。

所有期間5年以内の売却は短期譲渡所得として税率が約2倍になりますが、居住用財産の3,000万円特別控除を適用すれば多くの場合は非課税となります。

建築確認済証や検査済証を紛失しても、市区町村で台帳記載事項証明書を取得することで代替できます。ただし証明書取得に時間がかかる場合があるため、売却活動開始前に書類を確認しておくことが重要です。

書類準備に不明点があれば、不動産会社や司法書士などの専門家に相談しながら進めることをお勧めします。

よくある質問

Q1建築確認済証や検査済証を紛失した場合、売却できませんか?

A1紛失しても売却は可能です。市区町村で「台帳記載事項証明書」を取得することで代替できます。ただし、証明書取得に時間がかかる場合があり、買主によっては不安材料となるため、売却価格に影響する可能性があります。売却活動開始前に紛失に気づいた場合は、早めに証明書取得手続きを開始することをお勧めします。

Q2新築後すぐに売却すると税金が高くなるって本当ですか?

A2所有期間5年以内の売却は短期譲渡所得として、所得税30.63%・住民税9%(計39.63%)の税率が適用されます。これは5年超の長期譲渡所得(所得税15.315%・住民税5%、計20.315%)の約2倍です。ただし、居住用財産の3,000万円特別控除が適用されれば、譲渡所得が3,000万円以下の場合は所得税・住民税がかかりません。多くの場合、この特例により非課税となります。所有期間は売却した年の1月1日時点で判定されます。

Q3住宅ローンが残っている場合、追加で必要な書類はありますか?

A3金融機関から抵当権抹消に必要な書類(抵当権抹消登記申請書、委任状、登記識別情報等)を受け取る必要があります。売却代金でローンを完済し、同日中に抵当権抹消登記を行うのが一般的です。住宅ローン残債が売却価格を上回る場合(オーバーローン)は、自己資金の追加が必要になるため、事前に金融機関と売却計画を相談することが重要です。

Q4設計図書や仕様書がない場合、売却にどんな影響がありますか?

A4法的には売却可能ですが、購入希望者が建物の詳細(使用材料、設備配置、構造等)を確認できないため、購入を見送られる可能性が高まります。特にリフォームや増改築を検討している買主にとっては重要な書類です。建築会社に問い合わせて再発行できるケースもあります(有料の場合あり)。紛失に気づいたら早めに建築会社に相談することをお勧めします。

Q5印鑑証明書の有効期限はどれくらいですか?

A5印鑑証明書の有効期限は、一般的に発行から3ヶ月以内です。売買契約時と決済時の両方で必要になるため、売買契約から決済まで通常1~2ヶ月かかることを考慮すると、契約時に取得した印鑑証明書の有効期限が切れ、決済前に再取得が必要になるケースがあります。マイナンバーカードがあればコンビニで取得できるため、有効期限に注意しながら計画的に取得することをお勧めします。

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