中古戸建て購入の贈与税非課税|住宅取得資金贈与と相続時精算課税

公開日: 2025/10/14

中古戸建て購入時の住宅取得資金贈与と相続時精算課税

親や祖父母から住宅取得資金の援助を受けて中古戸建てを購入する場合、住宅取得資金贈与の非課税特例や相続時精算課税制度を活用できます。これらの制度を併用すると、最大3,610万円まで贈与税が非課税になります。この記事では、中古戸建て購入時の住宅取得資金贈与と相続時精算課税について、実務的な注意点とともに解説します。

この記事で分かること(要約)

  • 住宅取得資金贈与の非課税特例(省エネ住宅1,000万円、一般住宅500万円)
  • 相続時精算課税制度との併用(最大3,610万円非課税)
  • 中古戸建ての住宅ローン控除(控除率0.7%、最大10年間、借入限度額2,000万円)
  • 中古戸建て特有の築年数要件(1982年以降建築なら不問)
  • 確定申告の手続きと必要書類

(1) 直系尊属からの贈与で使える2つの制度

親や祖父母から住宅取得資金の贈与を受ける場合、以下の2つの制度があります。

制度名 非課税限度額 適用期限 親の年齢要件
住宅取得資金贈与の非課税 省エネ住宅1,000万円、一般住宅500万円 2026年12月31日まで なし
相続時精算課税制度 基礎控除110万円+特別控除2,500万円 恒久制度 原則60歳以上(住宅取得資金との併用時は60歳未満も可)

(出典: 国税庁 - 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税国税庁 - 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例

(2) 併用で最大限の非課税枠を活用

住宅取得資金贈与の非課税特例と相続時精算課税制度を併用すると、最大3,610万円まで贈与税が非課税になります。

併用時の計算:

  • 省エネ住宅の住宅取得資金贈与: 1,000万円
  • 相続時精算課税の特別控除: 2,500万円
  • 相続時精算課税の基礎控除: 110万円
  • 合計: 3,610万円

(3) 中古戸建て特有の優遇措置

中古戸建てでも、新築と同様に住宅取得資金贈与の非課税特例を利用できます。

中古戸建ての要件:

  • 床面積50㎡以上240㎡以下
  • 1982年1月1日以降に建築された住宅(または耐震基準適合証明書等あり)
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住開始

住宅取得資金贈与の非課税特例|最大1,000万円

住宅取得資金贈与の非課税特例の詳細を解説します。

(1) 省エネ住宅1,000万円・一般住宅500万円

非課税限度額(2024-2026年):

  • 省エネ等住宅: 1,000万円
  • 一般住宅: 500万円

省エネ等住宅の基準:

  • 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上
  • 耐震等級2以上または免震建築物
  • 高齢者等配慮対策等級3以上

一般住宅の場合: 省エネ等住宅の基準を満たさない場合は、一般住宅として500万円まで非課税です。

(2) 適用要件|直系尊属・居住開始期限

適用要件:

  • 贈与者が直系尊属(父母・祖父母)であること
  • 受贈者の年齢が18歳以上
  • 受贈年の合計所得が2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し、同日までに入居すること(または同年12月31日までに入居確実)
  • 贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日に確定申告すること

(出典: 国税庁 - 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

(3) 制度の期限|2026年12月31日まで

住宅取得資金贈与の非課税特例は、2026年12月31日までの贈与が対象です。それ以降の延長は未定です。

相続時精算課税制度との併用|最大3,610万円非課税

相続時精算課税制度と住宅取得資金贈与を併用する方法を解説します。

(1) 基礎控除110万円+特別控除2,500万円+非課税枠1,000万円

併用時の計算例:

  • 親から4,000万円の贈与を受けて中古戸建てを購入
  • 住宅取得資金贈与の非課税: 1,000万円(省エネ住宅)
  • 相続時精算課税の基礎控除: 110万円
  • 相続時精算課税の特別控除: 2,500万円
  • 課税対象: 4,000万円 - 1,000万円 - 110万円 - 2,500万円 = 390万円
  • 贈与税: 390万円 × 20% = 78万円

注意点: 相続時精算課税を選択すると、暦年贈与(年110万円控除)に戻せません。将来の相続税と合算して税負担を計算する必要があります。

(2) 60歳未満特例|親の年齢要件が外れる

通常の相続時精算課税:

  • 贈与者が60歳以上であることが要件

住宅取得資金との併用時:

  • 住宅取得資金の贈与と併用する場合に限り、60歳未満の親からも相続時精算課税を選択可能(令和8年12月31日まで)

(出典: 国税庁 - 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例

(3) 併用時の計算方法と具体例

計算のステップ:

  1. 贈与総額から住宅取得資金贈与の非課税枠を控除
  2. 残額から相続時精算課税の基礎控除(110万円)を控除
  3. さらに残額から相続時精算課税の特別控除(2,500万円)を控除
  4. なお残額があれば、20%の贈与税が課税される

具体例:

  • 贈与総額: 3,500万円
  • 住宅取得資金贈与の非課税: 1,000万円
  • 残額: 2,500万円
  • 相続時精算課税の基礎控除: 110万円
  • 残額: 2,390万円
  • 相続時精算課税の特別控除: 2,390万円(2,500万円の枠内)
  • 課税対象: 0円
  • 贈与税: 0円

(出典: 税理士法人チェスター - 相続時精算課税制度と住宅取得等資金贈与の併用で3,610万円の贈与税が非課税に

中古戸建ての住宅ローン控除

贈与資金と住宅ローンを併用して中古戸建てを購入する場合、住宅ローン控除を適用できます。

(1) 控除率0.7%・最大10年間

一般中古住宅:

  • 控除率: 年末ローン残高の0.7%
  • 控除期間: 10年間
  • 借入限度額: 2,000万円
  • 年間最大控除額: 14万円(2,000万円×0.7%)
  • 10年間の最大控除額: 140万円

(出典: 国税庁 - 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合

(2) 借入限度額|一般中古2,000万円・買取再販3,000万円

買取再販住宅の場合: 宅建業者が中古住宅を買い取り、一定のリフォームを実施後に再販する住宅は、新築と同等の優遇があります。

  • 借入限度額: 3,000万円
  • 控除期間: 13年間
  • 最大控除額: 273万円

(3) 贈与資金と住宅ローンの併用

計算例:

  • 中古戸建ての購入価格: 3,500万円
  • 親からの贈与: 1,500万円(非課税枠内)
  • 住宅ローン: 2,000万円
  • 年末残高: 1,950万円
  • 年間控除額: 1,950万円×0.7%=13.65万円(約14万円)

注意点: 贈与資金を頭金に使う場合、贈与の事実を証明する書類(贈与契約書、預金通帳の履歴など)を保管しておくことが重要です。

中古戸建て特有の注意点|築年数・耐震基準

中古戸建ての購入では、築年数要件が重要です。

(1) 1982年以降建築なら築年数不問

1982年1月1日以降に建築された中古戸建ては、築年数に関係なく住宅取得資金贈与の非課税特例や住宅ローン控除を適用可能です。

(2) 1982年以前建築は耐震基準適合証明書等が必要

1982年以前に建築された中古戸建てでも、以下のいずれかの書類があれば適用可能です。

  • 耐震基準適合証明書(建築士等が発行)
  • 既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)
  • 既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書

(出典: 国税庁 - 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)

(3) 省エネ基準を満たさないと非課税枠半減

省エネ基準の重要性:

  • 省エネ等住宅の基準を満たす場合: 1,000万円非課税
  • 基準を満たさない一般住宅: 500万円非課税

省エネ基準の確認方法:

  • 住宅性能評価書(断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上)
  • 建設住宅性能評価書
  • 売主からの説明書類

注意点: 中古戸建ての場合、築年数が古いと省エネ基準を満たさない可能性があります。購入前に確認しましょう。

中古戸建て購入時の贈与税申告と必要書類

住宅取得資金贈与や相続時精算課税を使う場合、確定申告が必須です。

(1) 贈与を受けた翌年3月15日までに申告

申告期間: 贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日

申告の必要性: 贈与額が非課税枠内でも、確定申告が必須です。申告しないと特例が適用されません。

(2) 必要書類|登記事項証明書・売買契約書・耐震基準適合証明書等

必要書類:

  1. 贈与税の申告書
  2. 戸籍謄本(贈与者が直系尊属であることを証明)
  3. 登記事項証明書(取得後3ヶ月以内のもの)
  4. 売買契約書のコピー
  5. 住宅性能証明書(省エネ住宅の場合)
  6. 耐震基準適合証明書等(1982年以前建築の場合)
  7. マイナンバー確認書類

相続時精算課税との併用時:

  • 相続時精算課税選択届出書
  • 贈与者の戸籍謄本(60歳以上であることを証明、60歳未満特例を使う場合は不要)

(3) 相続時精算課税選択届出書の提出

相続時精算課税を選択する場合、以下の書類を提出します。

提出書類:

  • 相続時精算課税選択届出書
  • 贈与者の戸籍謄本または抄本
  • 受贈者の戸籍謄本または抄本

提出期限: 贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日

注意: 相続時精算課税を選択すると、暦年贈与(年110万円控除)に戻せません。慎重に判断しましょう。

まとめ

親や祖父母から住宅取得資金の援助を受けて中古戸建てを購入する場合、住宅取得資金贈与の非課税特例(省エネ住宅1,000万円、一般住宅500万円)と相続時精算課税制度(基礎控除110万円+特別控除2,500万円)を併用すると、最大3,610万円まで贈与税が非課税になります。中古戸建てでも新築と同様に適用でき、贈与資金と住宅ローンを併用すれば住宅ローン控除(控除率0.7%、最大10年間、借入限度額2,000万円)も受けられます。中古戸建て特有の注意点として、1982年以降建築なら築年数不問ですが、1982年以前建築の場合は耐震基準適合証明書等が必要です。また、省エネ基準を満たさないと非課税枠が半減(1,000万円→500万円)します。贈与を受けた翌年3月15日までに確定申告が必須で、申告しないと特例が適用されません。

よくある質問(FAQ)

Q1. 中古戸建て購入時に親から援助を受けると、いくらまで非課税ですか?

A. 住宅取得資金贈与の非課税特例と相続時精算課税制度を併用すると、最大3,610万円まで非課税になります。内訳は、省エネ住宅の住宅取得資金贈与1,000万円+相続時精算課税の特別控除2,500万円+相続時精算課税の基礎控除110万円です。中古戸建てでも新築と同様に適用でき、1982年以降建築なら築年数不問です。ただし、贈与額が非課税枠内でも、贈与を受けた翌年3月15日までに確定申告が必須です。

Q2. 相続で取得した中古戸建て・借入金でも住宅ローン控除は使えますか?

A. 使えません。相続で取得した中古戸建て・借入金は住宅ローン控除の対象外です(国税庁の質疑応答事例より)。住宅ローン控除が適用されるのは、自己が購入した住宅に対するものです。ただし、相続人が自ら新たに中古戸建てを購入する場合は、通常の住宅ローン控除を適用可能です(控除率0.7%、最大10年間、借入限度額2,000万円)。

Q3. 1982年以前建築の中古戸建てでも非課税枠は使えますか?

A. 使えます。耐震基準適合証明書・既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)・既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書のいずれかがあれば、住宅取得資金贈与の非課税特例を適用可能です。これらの書類は、建築士や指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人が発行します。取得費用は数万円~十数万円程度で、耐震診断や検査が必要です。

Q4. 中古戸建てが省エネ基準を満たさない場合、非課税枠はいくらですか?

A. 省エネ等住宅の基準を満たさない場合、一般住宅として500万円まで非課税です(省エネ住宅は1,000万円)。省エネ等住宅の基準は、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上などです。中古戸建ての場合、築年数が古いと省エネ基準を満たさない可能性があります。耐震基準適合は必須ですが、省エネ基準は任意です。購入前に住宅性能評価書や売主からの説明書類で確認しましょう。

Q5. 相続時精算課税を選択すると、どうなりますか?

A. 相続時精算課税を選択すると、暦年贈与(年110万円控除)に戻せません。また、将来の相続時に、相続時精算課税で贈与を受けた財産と相続財産を合算して相続税を計算します。ただし、基礎控除110万円+特別控除2,500万円があるため、大きな贈与を非課税で受けられます。住宅取得資金との併用時は60歳未満の親からも選択可能(令和8年12月31日まで)です。相続税の負担も含めて総合的に判断する必要があるため、税理士への相談をおすすめします。

よくある質問

Q1中古戸建て購入時に親から援助を受けると、いくらまで非課税ですか?

A1住宅取得資金贈与の非課税特例と相続時精算課税制度を併用すると、最大3,610万円まで非課税になります。内訳は、省エネ住宅の住宅取得資金贈与1,000万円+相続時精算課税の特別控除2,500万円+相続時精算課税の基礎控除110万円です。中古戸建てでも新築と同様に適用でき、1982年以降建築なら築年数不問です。ただし、贈与額が非課税枠内でも、贈与を受けた翌年3月15日までに確定申告が必須です。

Q2相続で取得した中古戸建て・借入金でも住宅ローン控除は使えますか?

A2使えません。相続で取得した中古戸建て・借入金は住宅ローン控除の対象外です(国税庁の質疑応答事例より)。住宅ローン控除が適用されるのは、自己が購入した住宅に対するものです。ただし、相続人が自ら新たに中古戸建てを購入する場合は、通常の住宅ローン控除を適用可能です(控除率0.7%、最大10年間、借入限度額2,000万円)。

Q31982年以前建築の中古戸建てでも非課税枠は使えますか?

A3使えます。耐震基準適合証明書・既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)・既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書のいずれかがあれば、住宅取得資金贈与の非課税特例を適用可能です。これらの書類は、建築士や指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人が発行します。取得費用は数万円~十数万円程度で、耐震診断や検査が必要です。

Q4中古戸建てが省エネ基準を満たさない場合、非課税枠はいくらですか?

A4省エネ等住宅の基準を満たさない場合、一般住宅として500万円まで非課税です(省エネ住宅は1,000万円)。省エネ等住宅の基準は、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上などです。中古戸建ての場合、築年数が古いと省エネ基準を満たさない可能性があります。耐震基準適合は必須ですが、省エネ基準は任意です。購入前に住宅性能評価書や売主からの説明書類で確認しましょう。

Q5相続時精算課税を選択すると、どうなりますか?

A5相続時精算課税を選択すると、暦年贈与(年110万円控除)に戻せません。また、将来の相続時に、相続時精算課税で贈与を受けた財産と相続財産を合算して相続税を計算します。ただし、基礎控除110万円+特別控除2,500万円があるため、大きな贈与を非課税で受けられます。住宅取得資金との併用時は60歳未満の親からも選択可能(令和8年12月31日まで)です。相続税の負担も含めて総合的に判断する必要があるため、税理士への相談をおすすめします。

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