中古戸建て購入時に使える控除・特例の全体像
中古戸建てを購入する際、住宅ローン控除や登録免許税の軽減措置など、複数の税制優遇が利用できます。ただし、新築と比べて控除期間が短く、借入限度額も少ないため、中古特有の要件を正しく理解することが重要です。この記事では、中古戸建て購入時に活用できる控除・特例の基礎知識を体系的に解説します。
この記事で分かること(要約)
- 中古戸建て購入時に使える控除・特例(住宅ローン控除、登録免許税・不動産取得税の軽減)
- 新築との違い(控除期間10年、借入限度額2,000万円)
- 築年数要件(1982年以降建築)と耐震基準適合証明書による緩和
- 買取再販住宅の特例(借入限度額3,000万円、控除期間13年)
- 確定申告の手続きと必要書類
(1) 新築との違い|控除期間・借入限度額
中古戸建て購入時の控除・特例は、新築と比較して以下の点で異なります。
項目 | 新築 | 一般中古 | 買取再販住宅 |
---|---|---|---|
住宅ローン控除期間 | 13年間 | 10年間 | 13年間 |
借入限度額(一般) | 3,000万円 | 2,000万円 | 3,000万円 |
借入限度額(認定住宅) | 5,000万円 | 3,000万円 | - |
最大控除額(一般) | 273万円 | 140万円 | 273万円 |
築年数要件 | なし | 1982年以降建築 | 1982年以降建築 |
(出典: 国税庁 - 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合、国土交通省 - 住宅ローン減税)
ポイント:
- 一般中古の控除期間は10年間で、新築より3年短い
- 借入限度額は2,000万円で、新築の3分の2以下
- 買取再販住宅(宅建業者がリフォーム後に再販)は新築と同等の優遇
(2) 利用可能な主な控除・特例一覧
中古戸建て購入時に利用できる主な税制優遇措置は以下の通りです。
住宅ローン控除:
- 年末ローン残高の0.7%を最大10年間所得税・住民税から控除
- 一般中古: 最大140万円(2,000万円×0.7%×10年)
- 買取再販: 最大273万円(3,000万円×0.7%×13年)
登録免許税の軽減:
- 所有権移転登記: 2.0%→0.3%(一般軽減)→0.1%(特定軽減、昭和57年以降建築または耐震基準適合)
- 抵当権設定登記: 0.4%→0.1%
不動産取得税の軽減:
- 固定資産税評価額から築年数に応じた控除額を控除
- 最大1,200万円控除(昭和57年以降建築または耐震基準適合)
(出典: 国土交通省 - 固定資産税、登録免許税、不動産取得税の優遇措置)
(3) 築年数要件と耐震基準の重要性
中古戸建ての控除・特例を受けるには、築年数要件を満たす必要があります。
築年数要件の基本:
- 1982年1月1日以降に建築された中古戸建て: 築年数に関係なく住宅ローン控除を適用可能
- 1982年以前建築の中古戸建て: 耐震基準適合証明書等が必要
耐震基準の確認方法:
- 建築確認済証で建築年月日を確認
- 登記事項証明書(登記簿謄本)の「新築年月日」を確認
1982年以前建築の場合: 以下のいずれかの書類があれば、住宅ローン控除を適用可能です。
- 耐震基準適合証明書(建築士等が発行)
- 既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)
- 既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書
住宅ローン控除の基本|2024-2025年の制度
中古戸建て購入時の住宅ローン控除は、新築よりも控除額が少なくなりますが、正しく活用すれば大きな節税効果があります。
(1) 控除率0.7%・最大10年間
2024-2025年の住宅ローン控除は以下の通りです。
基本内容:
- 控除率: 年末ローン残高の0.7%
- 控除期間: 10年間(買取再販は13年間)
- 控除対象: 所得税(控除しきれない場合は住民税から最大9.75万円)
適用要件:
- 住宅ローンの借入期間が10年以上
- 床面積が50㎡以上(合計所得1,000万円以下の場合は40㎡以上)
- 床面積の2分の1以上が自己の居住用
- 取得後6ヶ月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住
- 合計所得金額が2,000万円以下(ただし、所得3,000万円超の年は控除不適用)
(出典: 国税庁 - 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合)
(2) 借入限度額|一般中古2,000万円・買取再販3,000万円
中古戸建ての借入限度額は、住宅の種別により異なります。
一般中古住宅:
- 借入限度額: 2,000万円
- 年間最大控除額: 14万円(2,000万円×0.7%)
- 10年間の最大控除額: 140万円
買取再販住宅:
- 借入限度額: 3,000万円
- 年間最大控除額: 21万円(3,000万円×0.7%)
- 13年間の最大控除額: 273万円
計算例(一般中古):
- 購入価格: 3,500万円
- 頭金: 500万円
- 住宅ローン: 3,000万円
- 年末残高: 2,900万円
→ 借入限度額2,000万円なので、2,000万円×0.7%=14万円が控除されます(年末残高が2,900万円でも、控除対象は上限の2,000万円)。
(3) 1982年以降建築の要件
中古戸建ての住宅ローン控除を受けるには、1982年1月1日以降に建築されたことが基本要件です。
1982年以降建築の確認方法:
- 建築確認済証の「確認年月日」を確認
- 登記事項証明書の「新築年月日」を確認
- 売買契約書の物件概要を確認
注意点:
- 「築40年以内」ではなく、「1982年1月1日以降建築」が要件です。
- 2024年購入の場合、1982年建築なら築42年でも控除適用可能です。
- 1982年以前建築の場合は、耐震基準適合証明書等が必要です。
新耐震基準(1982年以降建築)と耐震基準適合証明書
中古戸建ての控除・特例を受けるには、新耐震基準を満たすことが重要です。
(1) 1982年1月1日以降建築なら築年数制限なし
1982年1月1日以降に建築された中古戸建ては、築年数に関係なく住宅ローン控除を適用可能です。
新耐震基準とは:
- 1981年6月1日に施行された建築基準法の耐震基準
- 震度6強~7程度の地震でも倒壊しない構造強度
- 1982年1月1日以降建築の住宅は、この基準で建築されている
メリット:
- 築40年、50年の中古戸建てでも、1982年以降建築なら控除適用可能
- 耐震基準適合証明書の取得費用(数万円~十数万円)が不要
(2) 1982年以前建築の場合の証明書取得
1982年以前に建築された中古戸建てでも、以下のいずれかの書類があれば住宅ローン控除を適用可能です。
耐震基準適合証明書:
- 建築士または指定確認検査機関が発行
- 現行の耐震基準に適合していることを証明
- 取得費用: 数万円~十数万円(耐震診断費用含む)
既存住宅性能評価書:
- 登録住宅性能評価機関が発行
- 耐震等級1以上の評価が必要
- 取得費用: 十数万円程度
既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書:
- 住宅瑕疵担保責任保険法人が発行
- 保険加入時に耐震基準適合を確認
- 取得費用: 数万円~十数万円(検査費用含む)
(出典: 国税庁 - 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除))
(3) 耐震基準適合証明書・既存住宅性能評価書・既存住宅売買瑕疵保険
3つの証明方法のうち、どれを選ぶべきかは費用と手続きの容易さで判断します。
証明方法 | 取得費用 | 発行期間 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
耐震基準適合証明書 | 数万円~十数万円 | 1~2週間 | 費用が比較的安い | 耐震診断が必要 |
既存住宅性能評価書 | 十数万円 | 2~4週間 | 耐震等級も分かる | 費用が高い |
既存住宅売買瑕疵保険 | 数万円~十数万円 | 1~2週間 | 保険加入で安心 | 保険加入が前提 |
おすすめ:
- 費用重視: 耐震基準適合証明書
- 安心重視: 既存住宅売買瑕疵保険(保険加入で売主の瑕疵担保責任を補完)
- 性能重視: 既存住宅性能評価書(耐震等級も評価)
登録免許税・不動産取得税・固定資産税の軽減措置
住宅ローン控除以外にも、中古戸建て購入時に利用できる税制優遇があります。
(1) 登録免許税|所有権移転登記0.3%→0.1%
中古戸建て購入時の登録免許税は、以下の軽減税率が適用されます。
登記種別 | 本則税率 | 一般軽減税率 | 特定軽減税率 | 適用期限 |
---|---|---|---|---|
所有権移転登記 | 2.0% | 0.3% | 0.1% | 令和9年3月31日 |
抵当権設定登記 | 0.4% | - | 0.1% | 令和9年3月31日 |
特定軽減税率(0.1%)の要件:
- 昭和57年(1982年)1月1日以降に建築された住宅
- または、耐震基準適合証明書等がある住宅
- 床面積50㎡以上
- 自己の居住用
(出典: 国土交通省 - 固定資産税、登録免許税、不動産取得税の優遇措置)
計算例:
- 固定資産税評価額: 1,500万円
- 本則税率: 1,500万円×2.0%=30万円
- 特定軽減税率: 1,500万円×0.1%=1.5万円
- 軽減額: 28.5万円
(2) 不動産取得税|築年数に応じた控除額(最大1,200万円)
中古戸建て購入時の不動産取得税は、固定資産税評価額から築年数に応じた控除額を控除できます。
控除額(昭和57年以降建築):
- 昭和60年7月1日以降建築: 1,200万円
- 昭和60年6月30日以前建築: 築年数に応じて350万円~1,200万円
要件:
- 昭和57年(1982年)1月1日以降に建築された住宅
- または、耐震基準適合証明書等がある住宅
- 床面積50㎡以上240㎡以下
- 自己の居住用
計算例:
- 固定資産税評価額: 1,000万円
- 控除額: 1,200万円
- 課税標準額: 0円(控除後がマイナスの場合は0円)
- 不動産取得税: 0円
注意点: 固定資産税評価額が控除額以下の場合、不動産取得税は0円になります。
(3) 固定資産税|軽減措置なし(新築のみ)
中古戸建ての固定資産税には、新築のような軽減措置(3年間1/2)はありません。
固定資産税の計算:
- 固定資産税評価額×1.4%(標準税率)
- 小規模住宅用地(200㎡以下): 評価額×1/6
- 一般住宅用地(200㎡超): 評価額×1/3
ポイント: 中古戸建ては建物の評価額が低いため、固定資産税も新築より安くなります。
買取再販住宅の特例
買取再販住宅は、宅建業者がリフォーム後に再販する中古住宅で、新築に準じた優遇措置が受けられます。
(1) 宅建業者が買い取り・リフォーム後再販
買取再販住宅とは:
- 宅建業者が中古住宅を買い取り、一定のリフォームを実施後に再販する住宅
- リフォーム費用が建物価格の20%以上、または300万円以上
- 買取から再販までの期間が2年以内
メリット:
- 既にリフォーム済みなので、購入後すぐに入居可能
- 宅建業者が売主なので、瑕疵担保責任が2年間保証される
- 住宅ローン控除が新築と同等の優遇
(2) 借入限度額3,000万円・控除期間13年間
買取再販住宅の住宅ローン控除は、新築と同等です。
項目 | 一般中古 | 買取再販住宅 | 新築 |
---|---|---|---|
借入限度額 | 2,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 |
控除期間 | 10年間 | 13年間 | 13年間 |
最大控除額 | 140万円 | 273万円 | 273万円 |
計算例:
- 年末残高: 3,000万円
- 年間控除額: 3,000万円×0.7%=21万円
- 13年間の最大控除額: 21万円×13年=273万円
(3) 新築に準じた優遇措置
買取再販住宅は、登録免許税・不動産取得税も新築に準じた優遇が受けられます。
登録免許税:
- 所有権移転登記: 0.3%→0.1%(特定軽減)
不動産取得税:
- 固定資産税評価額から1,200万円控除
注意点: 買取再販住宅の要件を満たさない場合、一般中古として扱われます。売買契約書で「買取再販住宅」として明記されているか確認しましょう。
中古戸建て購入時の確定申告と必要書類
住宅ローン控除を受けるには、初年度に確定申告が必要です。
(1) 住宅ローン控除を受ける場合の確定申告
申告期間: 購入した年の翌年2月16日~3月15日
申告方法:
- 税務署窓口に持参
- 郵送
- e-Tax(オンライン)
必要な情報:
- 住宅ローン年末残高
- 購入価格
- 床面積
- 建築年月日
- 入居年月日
(2) 必要書類|登記事項証明書・売買契約書・耐震基準適合証明書等
必須書類:
- 確定申告書
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅ローン年末残高証明書(金融機関から送付)
- 登記事項証明書(登記簿謄本、取得後3ヶ月以内のもの)
- 売買契約書のコピー
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- マイナンバー確認書類
1982年以前建築の場合の追加書類:
- 耐震基準適合証明書
- または既存住宅性能評価書
- または既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書
買取再販住宅の場合の追加書類:
- 買取再販住宅証明書(宅建業者が発行)
(出典: 中古住宅のミカタ - 拡充された「住宅ローン減税」)
(3) 2年目以降は年末調整で可能
2年目以降: 給与所得者は年末調整で住宅ローン控除を受けられます(確定申告不要)。
年末調整に必要な書類:
- 住宅借入金等特別控除申告書(税務署から送付)
- 住宅ローン年末残高証明書(金融機関から送付)
注意点:
- 初年度の確定申告を忘れると、2年目以降も控除を受けられません。
- 転職した場合も、新しい勤務先で年末調整が可能です。
まとめ
中古戸建て購入時には、住宅ローン控除や登録免許税・不動産取得税の軽減措置を活用できます。ただし、新築と比べて控除期間が短く(10年)、借入限度額も少ない(2,000万円)ため、最大控除額は140万円にとどまります。また、1982年以降建築が基本要件で、それ以前の建築の場合は耐震基準適合証明書等が必要です。買取再販住宅なら新築と同等の優遇(借入限度額3,000万円、控除期間13年間)が受けられるため、リフォーム済み物件を検討する価値があります。確定申告は初年度に必須で、必要書類を事前に準備しておくことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 中古戸建てで住宅ローン控除はいくら戻ってきますか?
A. 年末ローン残高の0.7%を最大10年間控除できます。一般中古なら最大140万円(2,000万円×0.7%×10年)、買取再販なら最大273万円(3,000万円×0.7%×13年)です。ただし、実際の控除額は年末ローン残高や所得税額により変動します。例えば、年末残高が2,500万円でも、借入限度額2,000万円なので控除対象は2,000万円までです。
Q2. 1982年以前建築の中古戸建てでも住宅ローン控除は使えますか?
A. 使えます。耐震基準適合証明書・既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)・既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書のいずれかがあれば控除適用可能です。これらの書類は、建築士や指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人が発行します。取得費用は数万円~十数万円程度で、耐震診断や検査が必要です。
Q3. 買取再販住宅と一般中古の違いは何ですか?
A. 買取再販住宅は、宅建業者が中古住宅を買い取り、一定のリフォーム(建物価格の20%以上または300万円以上)を実施後に再販する住宅です。住宅ローン控除の借入限度額が3,000万円・控除期間13年間で、新築に準じた優遇が受けられます。一般中古は2,000万円・10年間なので、買取再販の方が最大控除額が大きくなります(273万円 vs 140万円)。
Q4. 中古戸建ての登録免許税はいくら軽減されますか?
A. 所有権移転登記が2.0%→0.3%(一般軽減)→0.1%(特定軽減)に軽減されます。特定軽減(0.1%)の要件は、昭和57年(1982年)1月1日以降建築または耐震基準適合証明書等があることです。例えば、固定資産税評価額1,500万円の場合、本則30万円が特定軽減で1.5万円になり、28.5万円軽減されます。適用期限は令和9年3月31日までです。
Q5. 中古戸建ての確定申告で必要な書類は何ですか?
A. 確定申告書、住宅借入金等特別控除額の計算明細書、住宅ローン年末残高証明書、登記事項証明書(取得後3ヶ月以内)、売買契約書のコピー、源泉徴収票(給与所得者の場合)、マイナンバー確認書類が必要です。1982年以前建築の場合は、耐震基準適合証明書・既存住宅性能評価書・既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書のいずれかを追加で提出します。買取再販住宅の場合は、買取再販住宅証明書も必要です。