買い替え購入の中古マンション|契約・重要事項説明の完全ガイド

公開日: 2025/10/17

買い替えで中古マンションを購入する際の契約・重要事項説明の基本

既存の住宅を売却しながら新たに中古マンションを購入する「買い替え」では、売却と購入のタイミング調整や資金計画が重要になります。本記事では、買い替え特有の契約タイミング調整、重要事項説明書の確認ポイント、売却と購入の契約を並行する際の注意点を実務的に解説します。

この記事のポイント

  • 宅建業法35条に基づく重要事項説明の基礎を理解できる
  • 買い替え特約とローン特約の違いと活用方法が分かる
  • 住み替えローンとダブルローンの資金計画を比較できる
  • 中古マンション特有の管理規約・修繕計画の確認ポイントを把握できる
  • 契約不適合責任の内容と引渡し後のトラブル防止策を学べる

契約・重要事項説明の基本

(1) 宅建業法35条に基づく説明義務

不動産取引において、宅地建物取引士は宅建業法35条に基づき、契約締結前に買主へ重要事項説明を行う義務があります。重要事項説明書には以下の項目が含まれます。

区分 主な説明内容
物件の権利関係 所有権の登記状況、抵当権の有無
法令上の制限 都市計画法、建築基準法の制限内容
インフラ状況 電気・ガス・水道・排水施設の整備状況
マンション固有事項 管理規約、修繕積立金、管理費の状況
契約解除 手付解除、ローン特約、買い替え特約の範囲

買い替えの場合、既存住宅の売却がスムーズに進まないリスクを考慮し、買い替え特約の内容を特に慎重に確認する必要があります。

(2) 契約の流れと注意点

買い替えで中古マンションを購入する一般的な流れは以下の通りです。

  1. 既存住宅の査定・売却活動開始:複数の不動産会社に査定依頼
  2. 購入物件の内覧・申込み:購入意思表示と買付証明書の提出
  3. 重要事項説明:宅建士による説明と質疑応答(通常1~2時間)
  4. 売買契約締結:契約書への署名・押印、手付金支払い(通常物件価格の5~10%)
  5. 既存住宅の売却契約締結:売却側の契約も並行して進める
  6. 住宅ローン審査:金融機関へ正式申込み
  7. 既存住宅の決済・引渡し:売却代金を受領
  8. 購入物件の決済・引渡し:残金支払い、登記手続き、鍵の引渡し

理想的なスケジュールは、既存住宅の引渡しと購入物件の引渡しを同日または数日以内に行うことです。これにより、一時的な仮住まいの費用や引っ越し回数を減らせます。

主要チェックポイント

(1) 物件状況の確認

中古マンションでは、以下の点を重点的に確認しましょう。

  • 築年数と修繕履歴:大規模修繕の実施状況、今後の修繕計画
  • 管理組合の運営状況:管理費・修繕積立金の適切な積立、総会議事録
  • 区分所有者の構成:賃貸比率、空室率、高齢化の状況
  • 専有部分の状態:水回り、配管、床・壁の傷み具合

買い替えの場合、既存住宅の売却価格が想定より低くなった場合の資金計画も考慮する必要があります。修繕積立金が不足している場合、近い将来に一時金の徴収や値上げが予定されていることもあるため、長期的な費用負担を把握しておくことが重要です。

(2) 契約条件の精査

売買契約書では、以下の条件を細かく確認しましょう。

  • 手付金の額と種類:解約手付か違約手付か
  • 買い替え特約の有無:既存住宅の売却を停止条件とする特約
  • ローン特約の期限:住宅ローンが承認されない場合の契約解除期限
  • 引渡し時期:既存住宅の売却スケジュールとの整合性
  • 付帯設備の範囲:エアコン、照明などの設備の有無と状態

買い替え特約とローン特約の期限を明確にし、既存住宅の売却スケジュールと連動させることが重要です。

重要事項説明書の確認ポイント

(1) 権利関係の確認

登記簿謄本を取り寄せ、以下の点を確認します。

  • 所有権の登記:売主が真の所有者か、共有名義ではないか
  • 抵当権の有無:決済時に抹消される予定か
  • 賃借権の登記:賃貸中の場合、賃貸借契約の内容

買い替えの場合、購入物件に抵当権が設定されたまま引き渡されることはあり得ませんが、売主が住宅ローンを完済できるかを確認するため、抵当権の抹消予定を重要事項説明書で必ず確認しましょう。

(2) 法令制限の確認

都市計画法や建築基準法による制限内容を確認します。

  • 用途地域:第一種低層住居専用地域など
  • 建ぺい率・容積率:増築時の制約
  • 接道義務:建築基準法上の道路に2m以上接しているか

マンションの場合、専有部分のリフォームには管理規約に基づく承認が必要な場合があります。入居後にリフォームを予定している場合は、管理規約の制限内容を事前に確認しましょう。

資金計画とローン審査

(1) ローンの種類と選択

買い替えでは、以下の住宅ローンの選択肢があります。

ローンの種類 特徴 適している方
通常の住宅ローン 既存住宅を売却して完済後、新規物件のローンを組む 売却代金でローンを完済できる方
住み替えローン 既存ローンの残債を新規ローンに上乗せして借り入れ 売却代金だけではローンを完済できない方
ダブルローン 既存ローンと新規ローンを一時的に二重で借り入れ 既存住宅の売却前に購入物件の決済が必要な方

住み替えローンは、既存住宅の売却代金で完済できない住宅ローン残債を新規購入物件のローンに上乗せして借り入れる融資です。ただし、担保評価額を超える融資となるため、審査は厳しくなります。

(2) 審査基準の理解

住宅ローン審査では以下の項目が重視されます。

  • 年収:安定した収入があるか(勤続年数3年以上が目安)
  • 返済負担率:年収に対する年間返済額の割合(25~35%以内が目安)
  • 信用情報:過去のローン返済履歴、クレジットカードの延滞歴
  • 健康状態:団体信用生命保険への加入可否

買い替えで住み替えローンを利用する場合、既存ローンの残債も含めた返済負担率が審査対象となります。事前に複数の金融機関に相談し、仮審査を受けておくことで承認の見込みを把握できます。

税務処理と優遇措置

(1) 譲渡所得税の計算

既存住宅を売却する場合、譲渡所得が発生する可能性があります。譲渡所得は以下のように計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用)

所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得として税率が高くなるため、売却のタイミングに注意が必要です。ただし、マイホーム(居住用財産)を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。

(2) 税制優遇の活用

新たに中古マンションを購入する際、住宅ローン控除の適用を受けられます。

適用要件

  • 引渡し日または工事完了日から6ヶ月以内に居住すること
  • 控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
  • 床面積が50㎡以上であること(合計所得1,000万円以下の場合は40㎡以上)

中古マンションの場合、築年数制限(1982年以降に建築された住宅、または耐震基準適合証明書を取得)にも注意が必要です。

注意:特定の居住用財産の買換え特例との併用

既存住宅を売却して譲渡所得が発生する場合、「特定の居住用財産の買換え特例」を利用すると、譲渡益の課税を繰り延べることができます。ただし、この特例を利用すると、新規購入物件で住宅ローン控除を受けられません。どちらが有利かは、譲渡益の額や新規ローンの借入額によって異なるため、税理士への相談をお勧めします。

契約後のトラブル防止策

(1) 契約不適合責任の理解

契約不適合責任とは、引き渡された物件が契約内容と異なる場合に売主が負う責任です。買主は以下の権利を行使できます。

  • 追完請求:修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しを請求
  • 代金減額請求:相当な期間を定めて履行を催告し、それでも履行されない場合
  • 損害賠償請求:契約不適合により損害が発生した場合
  • 契約解除:契約の目的を達成できない場合

中古マンションの売買契約では、通常引渡しから3ヶ月以内に契約不適合を通知する必要があります。契約書で期間と範囲を確認し、引渡し後は速やかに点検を行いましょう。

(2) 引渡し後の対応

引渡し後に発見された不具合については、以下のように対応します。

  1. 写真・動画で記録:不具合の状態を詳細に記録
  2. 売主・仲介業者へ通知:契約不適合責任の期間内に書面で通知
  3. 修補または代金減額の交渉:専門業者の見積もりを取得
  4. 解決しない場合:不動産取引に詳しい弁護士へ相談

買い替えの場合、既存住宅の売却と新規物件の購入が短期間で進むため、引渡し前の内覧を丁寧に行い、気になる点はすべて質問することが重要です。

買い替え特有の注意点

(1) 買い替え特約とローン特約

買い替え特約とは、既存住宅の売却を停止条件として新規物件の購入契約を締結する特約です。売却が成立しない場合、購入契約を白紙解除できます。

買い替え特約のメリット

  • 売却が成立しない場合、購入契約を無条件で解除できる
  • 手付金が全額返還される
  • 違約金が発生しない

買い替え特約のデメリット

  • 売主が買い替え特約を嫌がることがある(契約の不確実性が高まるため)
  • 特約の期限が短い場合、売却活動に制約が生じる

ローン特約とは、住宅ローンが承認されない場合に購入契約を白紙解除できる特約です。買い替え特約とローン特約は併用可能ですが、それぞれの期限を明確にし、既存住宅の売却スケジュールと連動させることが重要です。

(2) 売却と購入のタイミング調整

買い替えでは、売却と購入のタイミング調整が最大の課題です。理想的なパターンは以下の通りです。

パターンA:売却先行型

  • 既存住宅を先に売却し、売却代金で新規物件を購入
  • メリット:資金計画が明確、住み替えローン不要
  • デメリット:仮住まいの費用と手間がかかる

パターンB:購入先行型

  • 新規物件を先に購入し、後で既存住宅を売却
  • メリット:仮住まい不要、引っ越し1回で済む
  • デメリット:ダブルローンの負担、売却価格の下落リスク

パターンC:同時決済型

  • 既存住宅の引渡しと新規物件の引渡しを同日または数日以内に実施
  • メリット:仮住まい不要、資金効率が良い
  • デメリット:スケジュール調整が難しい、買い替え特約が必要

どのパターンを選ぶかは、既存住宅の資産価値、市場動向、家族構成、引っ越しの柔軟性などによって異なります。不動産会社の担当者と相談し、最適なスケジュールを立てましょう。

(3) 仮住まいの検討

売却先行型を選択する場合、仮住まいが必要になります。仮住まいの選択肢は以下の通りです。

仮住まいの種類 メリット デメリット
賃貸マンション 一定期間住める 初期費用(敷金・礼金・仲介手数料)が高い
マンスリーマンション 初期費用が安い 家賃が割高、設備が最小限
実家・親族宅 費用がかからない プライバシーが制限される

仮住まい期間が短い場合(1~3ヶ月程度)は、マンスリーマンションや親族宅が選択肢となります。長期化する場合は、賃貸マンションの方が費用対効果が高いこともあります。

まとめ

買い替えで中古マンションを購入する際は、既存住宅の売却と新規物件の購入を並行して進めるため、契約タイミングの調整や資金計画が重要になります。買い替え特約とローン特約を活用し、売却が成立しない場合のリスクを軽減しましょう。

重要事項説明では、物件の権利関係や法令制限だけでなく、管理規約や修繕計画、管理費・修繕積立金の状況を細かく確認することが大切です。また、契約不適合責任の期間と範囲を契約書で明確にし、引渡し後のトラブルに備えましょう。

住み替えローンやダブルローンを利用する場合は、返済負担率が高くなるため、事前に複数の金融機関に相談し、仮審査を受けておくことをお勧めします。税務面では、居住用財産の3,000万円控除や住宅ローン控除を活用できる場合があるため、税理士への相談も検討しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1: 重要事項説明では何を確認すべきですか?

A: 物件の権利関係(所有権の登記状況、抵当権の有無)、法令制限(都市計画法、建築基準法の制限)、インフラ状況(電気・ガス・水道・排水施設)、中古マンションの場合は管理規約や修繕積立金、管理費の状況を重点的に確認してください。買い替えの場合、買い替え特約やローン特約の期限も明確にし、既存住宅の売却スケジュールと連動させることが重要です。

Q2: 手付金はいつ返還されますか?

A: 手付解除期限内に買主の都合で解約する場合、手付金は放棄となり返還されません。逆に売主の都合で解約する場合は、手付金の倍額を買主に支払う「手付倍返し」のルールが適用されます。ただし、買い替え特約やローン特約により契約が白紙解除される場合は、手付金が全額返還され、違約金も発生しません。

Q3: 契約不適合責任とは何ですか?

A: 引渡し後に物件が契約内容と異なる場合(隠れた瑕疵や設備の不具合など)、売主が負う責任のことです。買主は修補請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除などの権利を行使できます。中古マンションの場合、通常は引渡しから3ヶ月以内に契約不適合を通知する必要があります。契約書で期間と範囲を確認し、引渡し後は速やかに点検を行うことが重要です。

Q4: 買い替え特約とローン特約の違いは何ですか?

A: 買い替え特約は、既存住宅の売却を停止条件として新規物件の購入契約を締結する特約で、売却が成立しない場合は購入契約を白紙解除できます。ローン特約は、住宅ローンが承認されない場合に購入契約を白紙解除できる特約です。両方とも契約を無条件で解除でき、手付金が全額返還され、違約金も発生しません。買い替えの場合、両方の特約を併用することで、売却不成立とローン不承認の両方のリスクをカバーできます。

Q5: 住み替えローンとダブルローンの違いは何ですか?

A: 住み替えローンは、既存住宅の売却代金で完済できない住宅ローン残債を新規購入物件のローンに上乗せして借り入れる融資です。ダブルローンは、既存ローンと新規ローンを一時的に二重で借り入れる方法です。住み替えローンは担保評価額を超える融資となるため審査が厳しく、ダブルローンは返済負担率が高くなるため、事前に複数の金融機関に相談し、仮審査を受けておくことをお勧めします。

よくある質問

Q1重要事項説明では何を確認すべきですか?

A1物件の権利関係(所有権の登記状況、抵当権の有無)、法令制限(都市計画法、建築基準法の制限)、インフラ状況(電気・ガス・水道・排水施設)、中古マンションの場合は管理規約や修繕積立金、管理費の状況を重点的に確認してください。買い替えの場合、買い替え特約やローン特約の期限も明確にし、既存住宅の売却スケジュールと連動させることが重要です。

Q2手付金はいつ返還されますか?

A2手付解除期限内に買主の都合で解約する場合、手付金は放棄となり返還されません。逆に売主の都合で解約する場合は、手付金の倍額を買主に支払う「手付倍返し」のルールが適用されます。ただし、買い替え特約やローン特約により契約が白紙解除される場合は、手付金が全額返還され、違約金も発生しません。

Q3契約不適合責任とは何ですか?

A3引渡し後に物件が契約内容と異なる場合(隠れた瑕疵や設備の不具合など)、売主が負う責任のことです。買主は修補請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除などの権利を行使できます。中古マンションの場合、通常は引渡しから3ヶ月以内に契約不適合を通知する必要があります。契約書で期間と範囲を確認し、引渡し後は速やかに点検を行うことが重要です。

Q4買い替え特約とローン特約の違いは何ですか?

A4買い替え特約は、既存住宅の売却を停止条件として新規物件の購入契約を締結する特約で、売却が成立しない場合は購入契約を白紙解除できます。ローン特約は、住宅ローンが承認されない場合に購入契約を白紙解除できる特約です。両方とも契約を無条件で解除でき、手付金が全額返還され、違約金も発生しません。買い替えの場合、両方の特約を併用することで、売却不成立とローン不承認の両方のリスクをカバーできます。

Q5住み替えローンとダブルローンの違いは何ですか?

A5住み替えローンは、既存住宅の売却代金で完済できない住宅ローン残債を新規購入物件のローンに上乗せして借り入れる融資です。ダブルローンは、既存ローンと新規ローンを一時的に二重で借り入れる方法です。住み替えローンは担保評価額を超える融資となるため審査が厳しく、ダブルローンは返済負担率が高くなるため、事前に複数の金融機関に相談し、仮審査を受けておくことをお勧めします。

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