中古戸建て購入の契約・重要事項説明|基礎知識完全ガイド

公開日: 2025/10/20

中古戸建て購入の契約・重要事項説明の全体像

中古戸建ての購入では、新築にはない建物の経年劣化や隠れた不具合のリスクがあります。契約書と重要事項説明書で物件の現状と売主の責任範囲を正確に把握し、インスペクション(建物状況調査)や既存住宅売買瑕疵保険を活用することで、安心して購入できます。

この記事でわかること(結論要約)

  • 契約不適合責任は中古住宅では引渡し後3ヶ月程度が一般的(新築は10年保証)
  • 物件状況報告書と付帯設備表で現状の不具合を事前確認
  • インスペクション(建物状況調査)で構造・雨漏り・シロアリ等を専門家が診断(費用5-7万円)
  • 既存住宅売買瑕疵保険に加入すれば購入後の瑕疵も補償(インスペクション合格が条件)
  • 旧耐震物件(昭和56年以前)は耐震診断と住宅ローン控除の要件確認が必須

(1) 中古戸建て購入の契約プロセス

中古戸建て購入の基本的な流れは以下の通りです。

ステップ 内容 注意点
1. 物件選定 不動産会社での物件探し・内覧 建物の築年数・構造・設備の状態を確認
2. 購入申込 購入意思表示・価格交渉 インスペクション実施の可否を交渉
3. 重要事項説明 宅建士による説明 物件状況報告書・付帯設備表を詳細確認
4. 売買契約 契約書締結・手付金支払い 契約不適合責任の期間と範囲を確認
5. 住宅ローン審査 金融機関への融資申込 旧耐震物件は審査が厳しくなる場合あり
6. 引渡し・決済 残代金支払い・所有権移転 現地立会いで設備動作・境界を最終確認

(2) 新築戸建てとの違い

中古戸建て購入では、新築と比べて以下の点が異なります。

項目 新築戸建て 中古戸建て
瑕疵保証期間 10年間(法定) 3ヶ月程度(契約による)
物件状況 未使用・新品 経年劣化・設備の老朽化あり
インスペクション 不要(完成検査済み) 推奨(任意)
住宅ローン控除 適用容易 旧耐震は耐震基準適合証明書必要
価格交渉 難しい 物件状況に応じて交渉可能

(3) 重要事項説明で確認すべき中古特有事項

宅地建物取引業法第35条に基づき、宅地建物取引士が契約前に買主へ重要事項説明を行います(国土交通省「重要事項の説明」)。中古戸建てでは、以下の項目を特に注意深く確認します。

  • 建物の築年数と構造: 旧耐震基準(昭和56年5月以前)か新耐震基準か
  • 物件状況報告書: 過去の雨漏り・シロアリ被害・修繕履歴
  • 付帯設備表: 給湯器・エアコン等の設備の動作状況
  • インスペクションの実施有無: 建物状況調査の結果
  • 既存住宅売買瑕疵保険の加入: 保険加入済みか加入可能か
  • 境界確定の有無: 測量図・境界標の確認

契約書の重要条項と契約不適合責任

中古戸建て購入の契約書では、特に契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)の内容が重要です。

(1) 契約不適合責任とは(2020年民法改正)

2020年4月の民法改正により、「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に名称と内容が変更されました(国土交通省「不動産売買契約書の記載事項」)。

契約不適合責任とは: 引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約内容に適合しない場合、売主が買主に対して負う責任です。買主は以下を請求できます。

  • 追完請求: 修補・代替物引渡し・不足分引渡し
  • 代金減額請求: 追完がされない場合の代金減額
  • 損害賠償請求: 損害が発生した場合の賠償
  • 契約解除: 契約目的を達成できない場合の解除

(2) 責任の期間と範囲(一般的に引渡し後3ヶ月)

中古住宅の契約不適合責任は、新築住宅の10年保証と異なり、引渡し後3ヶ月程度が一般的です。契約書で以下を確認しましょう。

確認項目 内容
責任期間 引渡しから何ヶ月か(1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月等)
責任範囲 構造・雨漏り・シロアリ等、どこまで対象か
免責事項 売主が責任を負わない事項(経年劣化等)
損害賠償の上限 売買代金の〇%まで等の制限

(3) 免責条項と買主保護のバランス

中古住宅では、売主が個人の場合「契約不適合責任を負わない(免責)」とする特約が付けられることがあります。この場合、購入後に不具合が見つかっても売主に責任を追及できません。

免責特約がある場合は、以下の対策を検討しましょう。

  • インスペクション(建物状況調査)を実施して事前に不具合を把握
  • 既存住宅売買瑕疵保険に加入して購入後の瑕疵に備える
  • 価格交渉で免責リスクを織り込む

物件状況報告書と付帯設備表の確認

中古戸建て購入では、物件状況報告書と付帯設備表が重要な情報源です。

(1) 物件状況報告書の記載内容

物件状況報告書は、売主が物件の状況を買主に告知する書面です。以下の項目が記載されます。

  • 雨漏りの有無: 過去の雨漏り履歴と修繕状況
  • シロアリ被害: シロアリ被害の有無と駆除履歴
  • 建物の傾き: 床の傾き・建具の開閉不良
  • 給排水設備: 水漏れ・排水不良の有無
  • 増改築の履歴: 確認申請の有無(違法建築のリスク)
  • 近隣トラブル: 騒音・境界紛争等の有無

売主には告知義務があり、知りながら虚偽の報告をした場合は損害賠償責任を負います。

(2) 付帯設備表で設備の状態を確認

付帯設備表は、引き渡される設備の種類と動作状況を記載した書面です。

設備 確認ポイント
給湯器 製造年・動作状況(故障時は交換費用20-40万円)
エアコン 台数・動作状況・使用年数
照明器具 残置される照明の種類と動作
カーテンレール 残置の有無
庭木・物置 撤去するか残置するか

「有・撤去」「有・そのまま」「無」等の記載で、設備の引渡し状況を確認します。「有・そのまま」でも「故障している」と記載されていれば、売主に修繕義務はありません。

(3) 告知義務と売主の責任

売主には、買主の判断に重要な影響を与える事項を告知する義務があります。以下のような事項は必ず告知が必要です。

  • 自殺・他殺等の心理的瑕疵(国土交通省ガイドラインで3年以内の告知義務)
  • 過去の火災・浸水被害
  • 近隣との境界紛争・訴訟

告知義務違反があった場合、買主は契約不適合責任を追及できます。

インスペクション(建物状況調査)の活用

インスペクション(建物状況調査)は、中古住宅購入のリスクを大幅に低減できる有効な手段です。

(1) インスペクションとは何か

既存住宅状況調査(インスペクション)とは、建築士等の専門家が既存住宅の構造耐力上主要な部分等の状況を調査することです(国土交通省「既存住宅状況調査制度」)。

2018年4月の宅建業法改正により、不動産会社はインスペクション業者の斡旋可否を買主に説明することが義務づけられました。

(2) 調査内容(構造・雨漏り・シロアリ等)

インスペクションで調査される主な項目は以下の通りです。

  • 構造耐力上主要な部分: 基礎・土台・柱・梁・耐力壁等のひび割れ・腐朽・傾き
  • 雨水の浸入を防止する部分: 屋根・外壁・開口部周辺の劣化・雨漏り跡
  • その他: 床下の湿気・シロアリ被害・給排水設備の漏水

調査の結果、劣化事象が見つかれば、以下の対応が可能です。

  • 売主に修繕を依頼
  • 修繕費用を価格交渉に反映
  • 購入を見送る

(3) 実施のタイミングと費用(5-7万円)

インスペクションは、購入申込後・契約前に実施するのが理想的です。費用は5-7万円程度で、買主負担が一般的ですが、売主が負担する場合もあります。

調査時間は2-3時間程度で、調査後に報告書が発行されます。報告書は既存住宅売買瑕疵保険の加入や住宅ローン審査で利用できます。

既存住宅売買瑕疵保険の加入条件とメリット

既存住宅売買瑕疵保険は、中古住宅購入後の瑕疵に備える保険です。

(1) 既存住宅売買瑕疵保険の仕組み

既存住宅売買瑕疵保険は、検査と保証がセットになった保険制度です(国土交通省「既存住宅売買瑕疵保険制度」)。

保険の対象は以下の通りです。

  • 構造耐力上主要な部分(基礎・柱・梁等)
  • 雨水の浸入を防止する部分(屋根・外壁等)

保険期間は1年間または5年間を選択でき、保険金額は500万円または1000万円が一般的です。

(2) 加入条件(インスペクション合格が必要)

既存住宅売買瑕疵保険に加入するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • インスペクション(建物状況調査)に合格すること
  • 調査で劣化事象が見つかった場合は、引渡し前に修繕すること
  • 新耐震基準(昭和56年6月以降)に適合すること(旧耐震は耐震改修が必要)

保険料は5-15万円程度で、保険期間・保険金額によって異なります。

(3) 保険のメリット(安心感・住宅ローン控除)

既存住宅売買瑕疵保険に加入するメリットは以下の通りです。

  • 購入後の瑕疵に備えられる: 契約不適合責任の期間が短くても安心
  • 住宅ローン控除の要件を満たせる: 旧耐震物件でも保険加入で控除対象になる場合あり
  • 物件の信頼性向上: 第三者検査済みの証明になる

旧耐震物件の耐震診断と境界確定の確認

中古戸建てでは、旧耐震物件と境界確定の有無が重要な確認事項です。

(1) 旧耐震基準(昭和56年以前)のリスク

昭和56年5月以前に建築確認を受けた建物は「旧耐震基準」で建てられており、現行の耐震基準より耐震性が低い可能性があります。

旧耐震物件のリスクは以下の通りです。

(2) 耐震診断の実施と改修費用

旧耐震物件を購入する場合は、耐震診断の実施を強く推奨します。耐震診断の費用は10-20万円程度です。

診断の結果、耐震性に問題がある場合は、耐震改修工事が必要です。改修費用は建物の状態によって100-300万円程度と幅があります。

購入前に診断し、改修費用を価格交渉に織り込むか、改修済み物件を選ぶことを推奨します。

(3) 境界確定の有無と測量図の確認

中古戸建て購入では、土地の境界が確定しているか確認が重要です。

確認項目 内容
境界確定の有無 隣地との境界が測量で確定しているか
境界標の設置 境界杭・プレート等が設置されているか
測量図の有無 確定測量図があるか(ない場合は作成費用50-100万円)
越境物の有無 隣地の塀・木の枝等が越境していないか

境界が確定していない場合、将来の売却時や増改築時にトラブルになる可能性があります。売買契約の特約で「引渡しまでに境界を確定する」ことを条件にすることも可能です。

まとめ

中古戸建て購入では、契約書・重要事項説明書で契約不適合責任の期間と範囲を確認し、物件状況報告書・付帯設備表で現状の不具合を把握することが重要です。

インスペクション(建物状況調査)で構造・雨漏り・シロアリ等を専門家に診断してもらい、既存住宅売買瑕疵保険に加入すれば、購入後の瑕疵にも備えられます。旧耐震物件(昭和56年以前)では耐震診断を実施し、住宅ローン控除の要件も確認しましょう。

専門家(建築士・税理士等)のサポートを活用し、安心して中古戸建てを購入してください。

よくある質問(FAQ)

Q1: 中古戸建ての契約で最も注意すべき点は何ですか?

A: 契約不適合責任の期間と範囲の確認が最重要です。中古は引渡し後3ヶ月程度が一般的で、新築の10年保証と比べて短いです。物件状況報告書・付帯設備表で現状の不具合を確認し、インスペクション(建物状況調査)で構造・雨漏り・シロアリ等を事前把握しましょう。既存住宅売買瑕疵保険に加入できればさらに安心です。

Q2: 契約不適合責任とは何ですか?瑕疵担保責任との違いは?

A: 2020年民法改正で瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更されました。契約内容と実際の物件が異なる場合に売主が負う責任です。買主は追完請求(修補)、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除が可能です。中古住宅では引渡し後3ヶ月程度の責任期間が一般的で、契約書で責任の範囲と期間を明確にすることが重要です。

Q3: インスペクション(建物状況調査)は必須ですか?費用は?

A: 法的には必須ではありませんが、中古住宅購入では強く推奨します。費用は5-7万円程度です。建築士等の専門家が構造の安全性、雨漏り、シロアリ被害等を調査します。問題が見つかれば売主に修繕を依頼または価格交渉ができます。既存住宅売買瑕疵保険に加入する場合はインスペクション合格が必須条件です。

Q4: 昭和56年以前の旧耐震物件を購入する場合の注意点は?

A: 耐震診断の実施を強く推奨します。旧耐震基準(昭和56年5月以前)の建物は現行基準より耐震性が低い可能性があります。耐震診断で問題が見つかれば、耐震改修工事(100-300万円)が必要です。住宅ローン控除を受けるには耐震基準適合証明書が必要です。購入前に診断し、改修費用を価格交渉に織り込むか、改修済み物件を選ぶことを推奨します。

よくある質問

Q1中古戸建ての契約で最も注意すべき点は何ですか?

A1契約不適合責任の期間と範囲の確認が最重要です。中古は引渡し後3ヶ月程度が一般的で、新築の10年保証と比べて短いです。物件状況報告書・付帯設備表で現状の不具合を確認し、インスペクション(建物状況調査)で構造・雨漏り・シロアリ等を事前把握しましょう。既存住宅売買瑕疵保険に加入できればさらに安心です。

Q2契約不適合責任とは何ですか?瑕疵担保責任との違いは?

A22020年民法改正で瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更されました。契約内容と実際の物件が異なる場合に売主が負う責任です。買主は追完請求(修補)、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除が可能です。中古住宅では引渡し後3ヶ月程度の責任期間が一般的で、契約書で責任の範囲と期間を明確にすることが重要です。

Q3インスペクション(建物状況調査)は必須ですか?費用は?

A3法的には必須ではありませんが、中古住宅購入では強く推奨します。費用は5-7万円程度です。建築士等の専門家が構造の安全性、雨漏り、シロアリ被害等を調査します。問題が見つかれば売主に修繕を依頼または価格交渉ができます。既存住宅売買瑕疵保険に加入する場合はインスペクション合格が必須条件です。

Q4昭和56年以前の旧耐震物件を購入する場合の注意点は?

A4耐震診断の実施を強く推奨します。旧耐震基準(昭和56年5月以前)の建物は現行基準より耐震性が低い可能性があります。耐震診断で問題が見つかれば、耐震改修工事(100-300万円)が必要です。住宅ローン控除を受けるには耐震基準適合証明書が必要です。購入前に診断し、改修費用を価格交渉に織り込むか、改修済み物件を選ぶことを推奨します。

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