離婚時の新築戸建て売却諸費用と財産分与|完全ガイド

公開日: 2025/10/20

離婚による新築戸建て売却の諸費用と清算

離婚に伴い新築戸建てを売却する場合、仲介手数料や税金など様々な諸費用がかかります。また、共有名義の解消、財産分与の分配、住宅ローン残債の処理など、離婚特有の清算手続きも必要です。特に、新築後5年以内の売却は短期譲渡所得として高税率(39.63%)が適用される点に注意が必要です。

この記事では、離婚時の新築戸建て売却にかかる諸費用、財産分与と税金の関係、諸費用を抑えるためのポイントについて解説します。

この記事のポイント

  • 売却時の諸費用には仲介手数料、登記費用、税金などがあり、売却価格の5-8%程度が目安
  • 保有期間5年以内の売却は短期譲渡所得として税率39.63%が適用される
  • 居住用財産の3,000万円特別控除を活用すれば、譲渡益3,000万円まで非課税
  • 財産分与による譲渡は原則として課税されないが、過大な分与は課税対象になる場合がある

1. 離婚売却新築戸建ての諸費用とは

(1) 仲介手数料(売買代金×3%+6万円)

不動産会社を通して売却する場合、仲介手数料がかかります。法律上の上限は以下の通りです(国土交通省: 不動産売買の仲介手数料に関するルール)。

仲介手数料の上限

(売買代金 × 3% + 6万円)+ 消費税

: 売却価格3,000万円の場合

(3,000万円 × 3% + 6万円)× 1.1 = 105.6万円

(2) 登記関連費用(抵当権抹消等)

住宅ローンが残っている場合、完済後に抵当権抹消登記が必要です(法務局: 抵当権抹消登記の手続き)。

費用項目 金額
登録免許税 不動産1個につき1,000円
司法書士報酬 1-3万円程度

共有名義の場合、所有権移転登記の費用も発生することがあります。

(3) 印紙税・その他事務手数料

売買契約書には印紙税がかかります。

売買代金 印紙税
1,000万円超5,000万円以下 2万円
5,000万円超1億円以下 6万円

その他、引越し費用や各種事務手数料も考慮しましょう。

(4) 測量費・解体費(必要な場合)

境界が不明確な場合は測量が必要で、30-80万円程度かかります。老朽化した建物を解体する場合は、100-300万円程度の解体費が発生します(新築戸建ての場合は通常不要)。

2. 離婚特有の費用・清算のポイント

(1) 財産分与と売却代金の分配

離婚時の財産分与では、売却代金から諸費用と住宅ローン残債を差し引いた金額を分配するのが一般的です。

分配の計算例

売却価格: 3,000万円
- 仲介手数料: 105.6万円
- 登記費用: 2万円
- 印紙税: 2万円
- 住宅ローン残債: 2,000万円
= 純手取り: 890.4万円
→ 財産分与: 各445.2万円(折半の場合)

(2) 共有名義の解消手続き

共有名義の新築戸建てを売却する場合、両者の同意が必要です。どちらか一方が売却に反対する場合、協議や調停を経て解決する必要があります。

(3) 住宅ローン残債の処理

売却価格が住宅ローン残債を下回る「オーバーローン」の場合、持ち出しが必要です。

オーバーローンの例

売却価格: 2,500万円
住宅ローン残債: 2,800万円
→ 不足額: 300万円(自己資金で補填が必要)

(4) 諸費用の負担割合の決め方

諸費用の負担割合は、協議により決定します。一般的には以下のような方法があります。

  • 売却代金から諸費用を差し引き、残額を分配
  • 持分割合に応じて負担
  • 収入や資産状況を考慮して負担

3. 税金関連の費用と特例

(1) 譲渡所得税・住民税の計算

新築戸建てを売却して利益が出た場合、譲渡所得税と住民税が課されます(国税庁: 譲渡所得の計算方法)。

譲渡所得の計算式

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
  • 取得費: 購入価格 + 購入時諸費用
  • 譲渡費用: 仲介手数料、登記費用など

(2) 短期譲渡所得の高税率(5年以内39.63%)

保有期間が5年以内の場合、短期譲渡所得として高税率が適用されます(国税庁: 短期譲渡所得の税率)。

保有期間 税率
5年以内(短期) 39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)
5年超(長期) 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)

保有期間の判定

  • 譲渡した年の1月1日時点で判定
  • 例: 2020年4月購入、2025年3月売却の場合、2025年1月1日時点で5年未満のため短期譲渡

(3) 居住用財産の3,000万円特別控除

居住用財産(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できます(国税庁: 居住用財産の3,000万円特別控除)。

適用条件

  • 自己の居住用財産であること
  • 配偶者や直系血族への譲渡でないこと
  • 前年・前々年に同特例を受けていないこと

離婚による売却でも適用可能ですが、離婚前に配偶者に譲渡する場合は対象外です。

(4) 財産分与と税金の関係

財産分与による譲渡は原則として課税されませんが、過大な分与と認められる場合は課税される可能性があります(国税庁: 財産分与と不動産取得税)。

また、分与を受けた側に不動産取得税がかかる場合があります。

4. 新築戸建て売却特有の注意点

(1) 新築後すぐの売却による価格下落

新築戸建ては、購入後すぐに売却すると「中古」扱いとなり、価格が10-20%程度下落することが一般的です。離婚により早期売却が必要な場合、この価格下落を考慮した資金計画が必要です。

(2) 減価償却の影響

建物は年月とともに価値が減少します。新築の場合、減価償却の影響は小さいですが、取得費の計算時には考慮が必要です。

(3) 取得費の計算方法

取得費には、購入価格に加えて以下の費用も含められます。

  • 仲介手数料(購入時)
  • 登記費用(購入時)
  • 不動産取得税
  • 印紙税

取得費が大きいほど譲渡所得が減り、税負担が軽減されます。

5. 諸費用を抑えるためのチェックリスト

(1) 複数社の見積もり比較

仲介手数料は上限が決まっていますが、一部の不動産会社は割引を提供しています。複数社の見積もりを比較しましょう。

(2) 税制優遇の活用

3,000万円特別控除を活用すれば、譲渡益3,000万円まで非課税です。適用条件を確認し、必要書類を準備しましょう。

(3) 売却タイミングの最適化

可能であれば、保有期間が5年を超えるまで待つことで、税率を39.63%から20.315%に下げられます。ただし、離婚協議の進行状況や経済的事情により、早期売却が必要な場合もあります。

(4) 専門家への相談

離婚に伴う不動産売却は、法律・税務の知識が必要です。弁護士、税理士、不動産会社など専門家に相談することで、適切な清算と税務処理が可能になります。

まとめ

離婚に伴う新築戸建ての売却では、仲介手数料、登記費用、税金など、売却価格の5-8%程度の諸費用がかかります。特に、保有期間5年以内の売却は短期譲渡所得として税率39.63%が適用されるため、注意が必要です。

居住用財産の3,000万円特別控除を活用すれば、譲渡益3,000万円まで非課税となります。財産分与による譲渡は原則として課税されませんが、過大な分与は課税対象になる場合があります。

諸費用の負担割合や財産分与の内容は、協議により決定します。複雑な税務処理が伴うため、弁護士や税理士など専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1離婚による財産分与で不動産を譲渡した場合、税金はかかりますか?

A1原則として財産分与による譲渡は課税されません。ただし、過大な分与と認められる場合や、分与を受けた側に不動産取得税がかかる場合があります。財産分与の内容と税負担について専門家(税理士等)への相談を推奨します。

Q2新築戸建てを5年以内に売却すると税金が高くなると聞きましたが本当ですか?

A2本当です。保有期間5年以内の売却は短期譲渡所得となり、税率39.63%(所得税30.63%+住民税9%)が適用されます。5年超の長期譲渡所得(税率20.315%)と比べて約2倍の税率です。ただし3,000万円特別控除が適用できれば譲渡益3,000万円まで非課税です。

Q3住宅ローン残債がある場合、諸費用はどう変わりますか?

A3抵当権抹消登記費用(登録免許税・司法書士報酬)が追加で発生します。残債が売却価格を上回る場合は持ち出しが必要です。離婚の場合、共有名義であれば両者で負担割合を協議して決定します。

Q4仲介手数料は必ず支払わなければなりませんか?

A4不動産会社を通して売買する場合は原則必要です。法律上の上限は(売買代金×3%+6万円)+消費税です。ただし、買主を自分で見つけた場合や、不動産会社が買い取る場合は仲介手数料は不要です。

Q53,000万円特別控除は離婚の場合でも使えますか?

A5使えます。居住用財産(マイホーム)を売却した場合、離婚による売却でも適用可能です。ただし、配偶者や直系血族への譲渡は対象外です。譲渡した年の1月1日時点で所有期間の制限はありません。

関連記事