土地工作物責任とは?所有者・占有者の責任範囲と実例を解説

著者: Room Match編集部公開日: 2026/1/10

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土地工作物責任とは何か

土地や建物を所有している方、または賃貸に出している方は、「自分の建物が他人に損害を与えた場合、どの程度の責任を負うのか」という疑問を持つことがあるでしょう。特に、空き家や賃貸物件のオーナーは、管理不備による賠償責任のリスクを理解しておく必要があります。

この記事では、民法717条に定められた土地工作物責任について、法的根拠、占有者と所有者の責任の違い、具体的な事例、保険でのリスクヘッジ方法を解説します。

この記事のポイント

  • 土地工作物責任とは、土地の工作物(建物、道路、橋、擁壁・塀等)の設置・保存に瑕疵があり他人に損害が生じた場合の賠償責任
  • 占有者は中間責任(「必要な注意」をしたことを立証すれば免責)、所有者は無過失責任(免責事由なし)を負う
  • 建物の外壁剥落や看板落下等で高額賠償責任が発生する可能性があり、定期的な点検・修繕が重要
  • 施設賠償責任保険でリスクヘッジが可能だが、保険に入れば絶対安心というわけではない
  • 専門家(弁護士、建築士等)への相談が推奨される

(1) 土地工作物責任の定義

土地工作物責任とは、民法717条に定められた責任で、土地の工作物の設置・保存に瑕疵があり他人に損害が生じた場合に、占有者・所有者が賠償責任を負うものです。

「工作物の設置・保存に瑕疵がある」とは、工作物が通常予想される危険に対し通常備えるべき安全性を欠いていることを意味します。

(2) 土地工作物に該当するもの(建物、道路、橋、擁壁・塀等)

「土地の工作物」とは、土地に接着して人工的作業を加えることにより成立する物を指します。具体的には以下のようなものが該当します。

  • 建物(住宅、マンション、店舗等)
  • 道路、橋、トンネル
  • 擁壁、塀、門
  • プール、ため池
  • 電柱、看板

土地工作物責任の法的根拠(民法717条)

土地工作物責任は、民法第717条に定められています。

(1) 民法717条の内容

民法717条は、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負うと規定しています。

ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならないとされています。

(2) 設置又は保存の瑕疵とは何か

「設置又は保存の瑕疵」とは、工作物が通常予想される危険に対し通常備えるべき安全性を欠いていることを指します。

具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • 建物の外壁やタイルが老朽化し剥落する危険がある状態
  • 看板の取り付けが不十分で落下する可能性がある状態
  • 擁壁や塀が傾いており倒壊の危険がある状態
  • 空き家の管理不備で屋根瓦が落下する危険がある状態

(3) 異常な自然力や異常な利用方法からの免責

異常な自然力(想定外の地震・台風等)や異常な利用方法から生じる危険に対する安全性までは備える必要はありません。ただし、「異常」の判断は個別事案により異なるため、専門家への相談が必要です。

占有者と所有者の責任の違い

土地工作物責任では、占有者と所有者で責任の重さが異なります。

(1) 占有者の中間責任(必要な注意をしたことの立証で免責)

占有者(賃借人、管理会社等)は、「損害の発生を防止するのに必要な注意」をしたことを立証すれば免責されます。これを中間責任と呼びます。

立証責任は占有者側にあるため、定期的な点検・修繕の記録を保管しておくことが重要です。

(2) 所有者の無過失責任(免責事由なし)

所有者(不動産オーナー等)は、占有者が免責された場合に賠償責任を負います。所有者の責任は無過失責任であり、過失がなくても瑕疵があれば賠償責任を負います。免責事由はありません。

(3) 賃貸物件の場合の責任分担

賃貸物件の場合、責任の流れは以下の通りです。

段階 責任者 内容
第一次責任 賃借人(占有者) 「必要な注意」をしたことを立証すれば免責
第二次責任 オーナー(所有者) 占有者が免責された場合、無過失責任を負う

ただし、賃借人が「必要な注意」をしたことを立証できない場合は、賃借人が賠償責任を負います。

(4) 求償権とは何か

賠償責任を負った所有者は、請負人(施工業者)や前所有者に落ち度がある場合に費用を請求できる権利(求償権)を持ちます。

ただし、まずは所有者が被害者に賠償し、その後に請負人等に求償する流れになります。

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土地工作物責任が問われる具体的な事例

土地工作物責任が問われる主な事例を紹介します。

(1) 建物の外壁剥落による損害

建物の外壁やタイルが老朽化して剥落し、通行人に怪我を負わせたり、駐車中の車両を損傷させたりした場合、所有者は賠償責任を負います。

高額な賠償責任が発生する可能性があるため、定期的な外壁点検が重要です。

(2) 看板落下による損害

店舗や建物の看板の取り付けが不十分で落下し、通行人に損害が生じた場合も土地工作物責任の対象です。

(3) 擁壁・塀の倒壊による損害

擁壁や塀が老朽化して倒壊し、隣地や道路に損害を与えた場合、所有者は賠償責任を負います。

(4) 空き家の管理不備による損害

空き家の管理を怠り、屋根瓦が落下したり、建物が倒壊したりして他人に損害が生じた場合、所有者は賠償責任を負います。

2024年時点で、空き家や賃貸オーナーが土地工作物責任を問われる事例が増加しています。

(5) 訴訟事例に見る責任範囲

三井住友海上MSコンパスによると、土地工作物責任における訴訟事例では、数千万円規模の高額賠償責任が認められるケースがあります。

自然災害時の責任範囲については、個別事案により判断が分かれるため、専門家への相談が必要です。

土地工作物責任への対応と保険でのリスクヘッジ

土地工作物責任のリスクを軽減するための対応方法を解説します。

(1) 定期的な点検・修繕の重要性

所有者・占有者ともに、定期的な点検・修繕を行うことが最も重要です。特に以下の箇所は注意が必要です。

  • 建物の外壁、タイル
  • 看板の取り付け状態
  • 擁壁、塀の傾き
  • 屋根瓦の状態

(2) 点検記録の保管

占有者が「必要な注意」をしたことを立証するため、点検・修繕の記録を保管しておくことが重要です。記録には以下を含めます。

  • 点検日時
  • 点検箇所
  • 点検結果
  • 修繕の実施内容

(3) 施設賠償責任保険の活用

土地工作物責任による損害賠償リスクに備えるため、施設賠償責任保険への加入が推奨されます。保険により、高額な賠償金をカバーできる場合があります。

ただし、保険に入れば絶対安心というわけではなく、定期的な点検・修繕を怠らないことが前提です。

(4) 空き家・賃貸オーナーのリスク管理

空き家や賃貸物件のオーナーは、以下の点に注意してリスクを管理してください。

  • 定期的な巡回点検の実施
  • 管理会社への委託
  • 施設賠償責任保険への加入
  • 老朽化した部分の早期修繕

(5) 専門家(弁護士、建築士)への相談

土地工作物責任が問われる可能性がある場合や、実際に損害が発生した場合は、専門家(弁護士、建築士等)への相談を推奨します。

個別事案への法的助言は弁護士の専門領域です。建物の安全性については建築士に相談してください。

まとめ:土地・建物所有者が知っておくべきこと

土地工作物責任は、民法717条に定められた重要な法的責任です。占有者は中間責任(「必要な注意」をしたことを立証すれば免責)、所有者は無過失責任(免責事由なし)を負います。

建物の外壁剥落や看板落下等で他人に損害が生じた場合、高額な賠償責任が発生する可能性があります。定期的な点検・修繕を行い、点検記録を保管しておくことが重要です。

施設賠償責任保険でリスクヘッジが可能ですが、保険に加入しているからといって点検を怠ると、保険金が支払われない場合もあります。

空き家や賃貸物件のオーナーは、管理不備による賠償責任のリスクが高いため、定期的な巡回点検や管理会社への委託を検討してください。専門家(弁護士、建築士等)への相談も推奨します。

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よくある質問

Q1土地工作物責任とは何ですか?

A1土地工作物責任とは、民法717条に定められた責任で、土地の工作物(建物、道路、橋、擁壁・塀等)の設置・保存に瑕疵があり他人に損害が生じた場合に、占有者・所有者が賠償責任を負うものです。工作物が通常予想される危険に対し通常備えるべき安全性を欠いていることが要件となります。建物の外壁剥落、看板落下、擁壁・塀の倒壊、空き家の管理不備等が該当します。

Q2占有者と所有者の責任の違いは何ですか?

A2占有者(賃借人、管理会社等)は中間責任を負い、「損害の発生を防止するのに必要な注意」をしたことを立証すれば免責されます。一方、所有者(不動産オーナー等)は無過失責任を負い、過失がなくても瑕疵があれば賠償責任を負います。免責事由はありません。賃貸物件の場合、まず賃借人が責任を負い、免責された場合は所有者が責任を負う流れになります。

Q3どのような場合に土地工作物責任が問われますか?

A3建物の外壁やタイルが老朽化して剥落し通行人に怪我を負わせた場合、看板の取り付けが不十分で落下した場合、擁壁や塀が老朽化して倒壊し隣地に損害を与えた場合、空き家の管理不備で屋根瓦が落下した場合等が該当します。工作物が通常予想される危険に対し通常備えるべき安全性を欠いていることが要件です。高額な賠償責任が発生する可能性があるため、定期的な点検・修繕が重要です。

Q4免責されるケースはありますか?

A4占有者は「損害の発生を防止するのに必要な注意」をしたことを立証すれば免責されます。定期的な点検・修繕の記録を保管しておくことが重要です。一方、所有者は免責事由がありません。ただし、異常な自然力(想定外の地震・台風等)や異常な利用方法から生じる危険に対しては責任を負わない場合があります。「異常」の判断は個別事案により異なるため、専門家(弁護士)への相談が必要です。

Q5請負人への求償権とは何ですか?

A5求償権とは、賠償責任を負った所有者が、請負人(施工業者)や前所有者に落ち度がある場合に費用を請求できる権利です。例えば、施工不良により建物に瑕疵が生じ損害が発生した場合、所有者はまず被害者に賠償し、その後に施工業者に求償することができます。ただし、求償権を行使するには、請負人等に落ち度があることを立証する必要があります。

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