「土地あげます」は本当?無償譲渡の実態
「土地 あげます」という情報を見聞きして、「本当に無料で土地がもらえるのだろうか」と疑問に思う方は少なくありません。
この記事では、埼玉・大阪・神奈川等の無償譲渡の実態、仕組み、メリット・デメリット、詐欺リスクと安全な取得方法を、法務省、国土交通省の公式情報を元に解説します。
初めて無償譲渡を検討する方でも、正しい判断ができるようになります。
この記事のポイント
- 埼玉・大阪・神奈川等で実際に「土地あげます」のリスティングがあり、無料で土地を取得できる可能性はある
- 無償譲渡でも税金(贈与税、登録免許税、固定資産税)は発生する
- 利用価値が低い土地の可能性、詐欺リスク(地面師、高額請求)に注意が必要
- 空き家バンクや相続土地国庫帰属制度を活用し、専門家に相談することで安全に取得できる
(1) なぜ無料で土地を譲るのか
土地を無料で譲渡する所有者は、以下のような維持管理の負担から解放されたいと考えています。
- 固定資産税の負担:毎年1月1日時点の所有者に課税される
- 草刈り・清掃等の管理費用:放置すると近隣トラブルの原因になる
- 相続後の活用予定がない:親から相続したが遠方で管理できない
- 空き家率の増加:総務省統計によると、全国の空き家率は2023年時点で13.8%と過去最高を記録
特に山林・農地・市街化調整区域の土地は活用が難しく、「負動産」として所有者の負担になるケースが増えています。
(2) 埼玉・大阪・神奈川等の実例
実際に、埼玉・大阪・神奈川等で「土地あげます」の情報が増えています。
埼玉県の例(訳あり物件買取ナビ by AlbaLinkより):
- 飯能市、比企郡、鳩山町などの山林・農地
- 空き家バンクや不動産掲示板で無償譲渡の情報が増加
無償譲渡専門サイト(みんなの0円物件):
- 川越市の農地、飯能市の山林、ときがわ町の住宅用地等の0円物件リスティング
- 全国の無償譲渡物件を検索可能
(3) 無償譲渡が増えている背景
無償譲渡が増えている主な背景は以下の通りです。
| 背景 | 内容 |
|---|---|
| 空き家率の上昇 | 総務省統計:全国空き家率13.8%(2023年) |
| 相続後の活用難 | 遠方の土地を相続しても管理できない |
| 自治体の消極的対応 | 固定資産税収入減・管理費用増のため土地受け入れに消極的 |
| 相続土地国庫帰属制度の施行 | 2023年4月施行。国への返還が可能になったが要件が厳しい |
無償譲渡の仕組みと法的な位置づけ
(1) 無償譲渡は「贈与」として扱われる
無償譲渡は、法的には「贈与」として解釈されます(民法第549条)。
贈与とは:
当事者の一方が無償で財産を相手方に与える契約のこと。土地の無償譲渡も贈与契約に該当します。
贈与税の課税:
個人から土地をもらった場合、受贈者に贈与税が課されます。基礎控除は年110万円で、土地の評価額がこれを超える場合は贈与税の申告・納税が必要です。
(2) 個人間・個人法人間での違い
無償譲渡の税金は、譲渡者と受贈者の関係によって異なります。
| パターン | 譲渡者の税金 | 受贈者の税金 |
|---|---|---|
| 個人 → 個人 | なし | 贈与税(基礎控除110万円超の場合) |
| 個人 → 法人 | 譲渡所得税・住民税 | 法人税 |
| 法人 → 個人 | なし | 所得税(一時所得) |
(出典: 生和コーポレーション)
(3) 必要な手続きと専門家の役割
無償譲渡では、不動産業者が介在しないため、以下の手続きを自分で行う必要があります。
- 測量・境界確定:隣接する土地との境界を明確にする(土地家屋調査士に依頼)
- 契約書作成:贈与契約書を作成し、当事者が署名・押印
- 所有権移転登記:法務局で登記手続き(司法書士に依頼)
- 税務申告:贈与税の申告・納税(税理士に相談)
専門家への相談費用は発生しますが、手続きの正確性とトラブル回避のため推奨されます。
無料で土地を取得する方法
(1) 空き家バンクを活用する
空き家バンクは、自治体が運営する、空き家・空き地の売主と買主(または貸主と借主)をつなぐマッチングシステムです。
主な空き家バンクサービス:
- LIFULL HOME'S 空き家バンク:772自治体、8,030物件が登録
- アットホーム 空き家バンク:全国の自治体と連携
空き家バンクでは、無償譲渡物件のほか、格安物件も掲載されています。自治体の担当者が仲介することで、安全性が高まります。
(2) 無償譲渡専門サイトで探す
無償譲渡専門のマッチングサイトを利用することで、全国の0円物件を検索できます。
主な専門サイト:
これらのサイトでは、空き家、住宅、土地、店舗等が掲載されており、エリア・物件種別で絞り込み検索が可能です。
(3) 相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度は、相続・遺贈で取得した土地を、一定の要件を満たす場合に国庫に帰属できる制度です。
制度の概要(法務省より):
- 施行日:2023年4月27日
- 審査手数料:14,000円/筆
- 負担金:土地の種目・面積に応じて算定
- 承認率:93%(2025年2月28日時点で1,426件が承認)
対象外の土地:
- 建物付き土地
- 抵当権・用益権付き土地
- 境界不明土地
- 土壌汚染・埋設物がある土地
相続した土地を手放したい場合は、この制度を検討する価値があります。詳細は法務局にご相談ください。
無償譲渡のメリットとデメリット
(1) メリット:取得費用ゼロ
無償譲渡の最大のメリットは、土地の取得費用がゼロであることです。
- 通常の不動産購入では、物件価格に加えて仲介手数料(物件価格の3%+6万円+消費税)、登記費用等が必要
- 無償譲渡では、物件価格がゼロのため、登録免許税・測量費用等の実費のみで済む
活用できる土地であれば、大きなメリットになります。
(2) デメリット:税金と維持費用の負担
無償譲渡でも、以下の税金と維持費用は発生します。
| 項目 | 内容 | 目安額 |
|---|---|---|
| 贈与税 | 基礎控除110万円超の場合 | 土地評価額による |
| 登録免許税 | 所有権移転登記時 | 固定資産税評価額の2% |
| 固定資産税 | 毎年1月1日時点の所有者に課税 | 固定資産税評価額の1.4% |
| 都市計画税 | 市街化区域の場合 | 固定資産税評価額の0.3% |
(出典: 国税庁)
特に固定資産税は毎年発生するため、活用予定がない土地の場合は負担になります。
(3) デメリット:利用価値が低い可能性
無償譲渡される土地は、以下のような理由で利用価値が低い可能性があります。
- アクセスが悪い:駅・幹線道路から遠い
- 建築制限がある:市街化調整区域、農地法の制限等
- 土地の形状・地盤:傾斜地、軟弱地盤、不整形地
- 周辺環境:墓地・工場の隣接、騒音・臭気等
取得前に、土地の用途地域、建築制限、周辺環境を必ず確認しましょう。
(4) デメリット:手続きの複雑さ
無償譲渡では、不動産業者が介在しないため、以下の手続きを自分で行う必要があります。
- 測量・境界確定(土地家屋調査士に依頼、費用30-60万円程度)
- 契約書作成(自分で作成または行政書士に依頼)
- 所有権移転登記(司法書士に依頼、費用5-10万円程度)
- 贈与税の申告(税理士に相談)
手続きが複雑なため、専門家への相談を推奨します。
詐欺リスクと安全な土地取得のポイント
(1) 地面師詐欺の手口
地面師詐欺とは、本物の土地所有者になりすまして不動産を売却し、購入代金を騙し取る詐欺です。
実際の事例(武蔵コーポレーションより):
- 2017年、積水ハウスが五反田駅近くの元旅館跡地で63億円被害
- 偽造身分証、登記済証等を用いた手口
防衛策:
- 所有者の本人確認を徹底(運転免許証等の原本確認)
- 登記簿謄本で所有者情報を確認
- 司法書士に本人確認を依頼
(2) 高額請求や国の調査を装った詐欺
無償譲渡に関連して、以下のような詐欺に注意が必要です。
- 高額な測量費用を請求する悪質業者:相場の数倍を請求するケースがある
- 国の調査を装った詐欺:国土交通省が注意喚起。空き家所有者を狙った詐欺や犯罪につながる可能性
不審な電話・訪問があった場合は、自治体や消費生活センターに相談してください。
(3) 境界・事故歴・土壌汚染等の事前調査
無償譲渡される土地には、以下のような隠れた問題がある可能性があります。
- 境界不明:隣接地との境界が確定していない
- 過去の事故歴:自殺・事件等の心理的瑕疵
- 土壌汚染:有害物質の埋設、工場跡地等
- 埋設物:地中にコンクリート殻・廃棄物等が埋まっている
土地家屋調査士に測量・境界確定を依頼し、契約書に明記することで、後のトラブルを防げます。
(4) 自治体・専門家への相談
無償譲渡を検討する際は、以下の窓口に相談することを推奨します。
- 自治体の空き家・空き地対策担当課:空き家バンクの利用、補助金等の情報提供
- 土地家屋調査士:測量・境界確定
- 司法書士:所有権移転登記
- 税理士:贈与税・固定資産税の試算
- 弁護士:契約書のリーガルチェック、詐欺トラブル対応
専門家への相談費用はかかりますが、安全な取得のために必要な投資です。
まとめ:無償譲渡を検討する際の判断基準
埼玉・大阪・神奈川等で「土地あげます」の情報は実際に存在し、無料で土地を取得できる可能性はあります。ただし、無償譲渡でも税金(贈与税、登録免許税、固定資産税)は発生し、利用価値が低い土地の可能性、詐欺リスクに注意が必要です。
空き家バンクや相続土地国庫帰属制度を活用し、自治体・専門家に相談しながら、境界・事故歴・土壌汚染等を事前に調査することで、安全に土地を取得できます。
無償譲渡を検討する際は、「本当に活用できる土地か」「税金・維持費用を負担できるか」を冷静に判断しましょう。
