マンションの排水管構造とは?仕組み・種類・トラブル対策を徹底解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/1

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マンションの排水管構造を理解する重要性|トラブル・修繕に備える

マンションの排水管は、日常生活で欠かせない設備ですが、その構造やメンテナンス方法を理解している方は多くありません。排水管のトラブルは、階下への水漏れや高額な修繕費用につながる可能性があります。

この記事では、マンションの排水管の基本構造、排水方式の種類、よくあるトラブルと対処法、メンテナンス・修繕計画を解説します。国土交通省のマンション標準管理規約、不動産流通推進センターの管理基礎知識を元に、専有部分と共用部分の区分、費用負担の考え方もご紹介します。

この記事のポイント

  • マンションの排水管は竪管(縦管)と横管で構成され、竪管は共用部分、横管は専有部分が一般的
  • 排水管の素材は鋳鉄管から塩ビ管への転換が進んでおり、耐久性・静音性が向上している
  • 排水管の寿命は20〜30年、定期的な高圧洗浄で延命可能
  • 専有部分の修繕費用は所有者負担、共用部分は管理組合の修繕積立金で対応
  • 排水管の劣化・破損は階下への水漏れ被害につながり、損害賠償責任が発生する可能性がある

(1) 排水管トラブルがもたらすリスク|階下への水漏れ・賠償責任

排水管の劣化・破損は、階下への水漏れ被害につながる最も深刻なリスクです。

主な被害例:

  • 天井・壁のシミ・剥がれ
  • 床の浸水・カーペット・家具の損傷
  • 電気設備のショート・火災リスク

水漏れ被害が発生した場合、加害者は損害賠償責任を負います。被害の規模によっては、数十万円〜数百万円の賠償が発生する可能性があります。

個人賠償責任保険(火災保険の特約)に加入していない場合、全額自己負担となるため、事前の加入が推奨されます。

(2) 専有部分と共用部分の区分を知る重要性

マンションの排水管は、専有部分共用部分に分かれており、修繕費用の負担区分が異なります。

国土交通省のマンション標準管理規約(2024年版)によると、一般的な区分は以下の通りです。

区分 範囲 管理責任 修繕費用負担
専有部分 住戸内の横管、蛇口、排水トラップ 所有者 所有者
共用部分 竪管(縦管)、共用廊下の横主管 管理組合 管理組合(修繕積立金)

ただし、管理規約により異なる場合があるため、マンション購入時には必ず管理規約を確認しましょう。

排水管の基本構造|竪管と横管の仕組み・配置

マンションの排水管は、排水竪管(縦管)排水横管の組み合わせで構成されています。

(1) 排水竪管(縦管)の役割|各階を縦に貫く共用部分

排水竪管は、マンションの各階を縦に貫く排水管です。各住戸の排水を1階または地下の排水本管に集約する役割を持ちます。

排水竪管の特徴:

  • 共用部分として管理組合が管理
  • パイプシャフト(PS)内に配置されることが多い
  • 定期的な清掃・点検が必要

不動産流通推進センターによると、排水竪管の劣化は全住戸に影響するため、計画的な更新が推奨されます。

(2) 排水横管の役割|各階の横方向配管と専有部分の境界

排水横管は、各階の横方向に配置される排水管です。各住戸の排水を竪管に接続する役割を持ちます。

排水横管の区分:

位置 所有区分 管理責任
住戸内の横管 専有部分 所有者
共用廊下側の横主管 共用部分 管理組合

専有部分と共用部分の境界は、管理規約で明確に定義されています。一般的には、住戸の壁面・床面を境界とすることが多いです。

(3) 排水トラップと通気管の仕組み|臭気・害虫の防止

排水管には、臭気や害虫の侵入を防ぐ排水トラップと、排水時の空気の流れを確保する通気管が設置されています。

排水トラップ:

  • 排水管内に水を溜めて、下水からの臭気・害虫を遮断
  • 洗面台・キッチン・浴室等の排水口に設置
  • トラップ内の水が蒸発すると悪臭が発生(「破封」と呼ばれる)

通気管:

  • 排水時に排水管内の圧力変化を緩和
  • 排水トラップの水が吸い出されるのを防ぐ
  • マンションの屋上まで伸びて大気に開放されている

通気管の不具合は、排水の流れが悪くなる、悪臭が発生する等のトラブルにつながります。

排水方式の種類と配管材質|汚水・雑排水・鋳鉄管・塩ビ管

マンションの排水管は、排水の種類と配管材質によって分類されます。

(1) 汚水管と雑排水管の違い|トイレvs台所・浴室

マンションの排水は、汚水雑排水に分類されます。

排水の種類 発生源 特徴
汚水 トイレ(便器) 固形物を含む、最も汚れが多い
雑排水 台所・浴室・洗面所 油脂・洗剤・髪の毛等を含む

マンションによっては、汚水と雑排水を別系統の配管で処理する「分流式」と、同一の配管で処理する「合流式」があります。

分流式のメリット:

  • 汚水管の劣化を抑えられる
  • 雑排水管の清掃が容易

合流式のメリット:

  • 配管が簡素化され、工事費用が安い

(2) 配管材質の変遷|鋳鉄管から塩ビ管への転換

マンションの排水管の素材は、築年数によって異なります。

素材 使用時期 特徴
鋳鉄管 1990年代以前が多い 重い、腐食しやすい、サビが発生
塩ビ管(硬質ポリ塩化ビニル管) 1990年代以降が主流 軽い、耐久性が高い、腐食しない

日本下水道協会によると、近年の新築マンションではほぼ100%塩ビ管が採用されています。

(3) 配管材質別の特性|耐久性・静音性・メンテナンス性

配管材質によって、耐久性・静音性・メンテナンス性が異なります。

鋳鉄管:

  • 耐久性: 腐食しやすく、15〜25年で更新が必要な場合が多い
  • 静音性: 比較的静か(重量があるため振動を吸収)
  • メンテナンス性: 内部のサビ・詰まりが発生しやすい

塩ビ管:

  • 耐久性: 腐食せず、30年以上使用可能
  • 静音性: 排水音が大きい場合がある(防音対策が必要)
  • メンテナンス性: 内部が滑らかで詰まりにくい

築古マンションの排水管更新では、鋳鉄管から塩ビ管への転換が一般的です。

よくあるトラブルと対処法|詰まり・悪臭・水漏れの原因

排水管のトラブルは、早期発見・早期対処が重要です。

(1) 排水管の詰まり|油脂・異物の蓄積

排水管の詰まりは、油脂・髪の毛・食べ物のカス等の蓄積が主な原因です。

詰まりの兆候:

  • 排水の流れが遅い
  • ゴボゴボという音がする
  • 排水口から水が逆流する

対処法:

詰まりの程度 対処法
軽度 市販のパイプクリーナー(液体・粉末)を使用
中度 ラバーカップ(スッポン)で圧力をかける
重度 専門業者の高圧洗浄(1万〜3万円程度)

油脂を排水口に流さない、排水口にネットを設置する等の予防が重要です。

(2) 悪臭の発生|排水トラップの破封・通気管の不具合

排水口から悪臭がする場合、排水トラップの破封または通気管の不具合が原因の可能性があります。

排水トラップの破封:

  • トラップ内の水が蒸発(長期不在時等)
  • 排水時の圧力変化でトラップの水が吸い出される

対処法:

  • 水を流してトラップに水を補充する
  • 長期不在時は排水口にラップ・ビニール袋で蓋をする

通気管の不具合:

  • 通気管の詰まり・破損
  • 排水時にトラップの水が吸い出される

対処法:

  • 専門業者に通気管の点検・清掃を依頼

(3) 水漏れ・破損|配管の劣化・腐食

排水管の経年劣化・腐食により、水漏れ・破損が発生する場合があります。

水漏れの兆候:

  • 天井・壁にシミ・変色がある
  • 床が濡れている
  • 水の音が常に聞こえる

対処法:

  1. 水漏れ箇所を特定(専有部分か共用部分か)
  2. 専有部分: 所有者が業者に修理を依頼
  3. 共用部分: 管理組合に連絡
  4. 階下への被害がある場合: 管理組合・保険会社に連絡

水漏れは早期発見が重要です。定期的な目視点検を行いましょう。

メンテナンス・修繕計画|清掃頻度・更新時期・費用負担の区分

排水管の寿命を延ばし、トラブルを防ぐには、定期的なメンテナンスと計画的な更新が必要です。

(1) 定期清掃の重要性|高圧洗浄の頻度と効果

排水管の定期清掃は、詰まり・悪臭の予防に有効です。

高圧洗浄:

  • 高圧水流で排水管内の油脂・汚れを除去
  • 詰まりの解消・予防効果が高い
  • 専門業者による実施が推奨される

マンション管理業協会の標準仕様によると、清掃頻度の目安は以下の通りです。

区分 推奨頻度 費用負担
共用部分(竪管・横主管) 年1〜2回 管理組合
専有部分(住戸内の横管) 必要に応じて 所有者

(2) 排水管の寿命と更新時期|20〜30年が目安

排水管の寿命は、素材により異なります。

素材 寿命の目安 更新時期の判断
鋳鉄管 15〜25年 サビ・腐食の進行状況で判断
塩ビ管 30年以上 内部カメラ調査で劣化診断

国土交通省のマンション標準管理規約では、長期修繕計画に排水管の更新を盛り込むことが推奨されています。

近年では、排水管内カメラ調査による劣化診断が普及しており、計画的な更新が可能になっています。

(3) 費用負担の区分|専有部分は所有者、共用部分は管理組合

排水管の修繕費用の負担区分は、専有部分と共用部分で異なります。

専有部分:

  • 住戸内の横管、排水トラップ等
  • 修繕費用は所有者負担
  • 費用の目安: 部分修理1万〜3万円、全面更新10万〜30万円

共用部分:

  • 竪管、共用廊下の横主管
  • 修繕費用は管理組合の修繕積立金で対応
  • 費用の目安: 竪管更新1本あたり50万〜100万円

不動産流通推進センターによると、修繕積立金が不足している場合、排水管更新時に**一時金(追加負担)**が発生する可能性があるため、注意が必要です。

(4) 排水管更新工事の流れと居住者の協力

排水管の更新工事は、住戸内への立ち入りが必要で、居住者の協力が不可欠です。

工事の流れ:

  1. 劣化診断(内部カメラ調査)
  2. 更新計画の策定・総会決議
  3. 施工業者の選定・契約
  4. 居住者への説明会・工事日程調整
  5. 工事実施(1住戸あたり1〜2日)
  6. 完了検査・引き渡し

居住者の協力事項:

  • 工事日の在宅・立ち会い
  • 住戸内の養生(家具・荷物の移動)
  • 工事中の断水・排水制限への対応

工事を円滑に進めるため、管理組合は早めに説明会を開催し、居住者の理解を得ることが重要です。

まとめ|マンション排水管の管理で知っておくべきポイント

マンションの排水管は、竪管(縦管)と横管で構成され、竪管は共用部分、横管は専有部分が一般的です。排水管の素材は鋳鉄管から塩ビ管への転換が進んでおり、耐久性・メンテナンス性が向上しています。

排水管の寿命は20〜30年、定期的な高圧洗浄で延命可能です。専有部分の修繕費用は所有者負担、共用部分は管理組合の修繕積立金で対応します。

排水管の劣化・破損は階下への水漏れ被害につながり、損害賠償責任が発生する可能性があります。定期的なメンテナンスと計画的な更新で、トラブルを予防しましょう。

不安がある場合は、管理組合や専門業者に相談し、適切な管理を行ってください。

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よくある質問

Q1マンションの排水管はどこまでが専有部分?

A1一般的に各住戸内の横管が専有部分、竪管(縦管)は共用部分です。国土交通省のマンション標準管理規約(2024年版)によると、専有部分と共用部分の境界は住戸の壁面・床面とされることが多いです。ただし、管理規約により異なる場合があるため、マンション購入前に必ず管理規約を確認してください。

Q2排水管の寿命はどのくらい?

A2素材により異なりますが、20〜30年が目安です。鋳鉄管は腐食しやすく15〜25年で更新が必要な場合が多く、塩ビ管は耐久性が高く30年以上使用可能です。日本下水道協会によると、定期的な高圧洗浄(年1〜2回)でさらに延命できます。近年では、排水管内カメラ調査による劣化診断で計画的な更新が可能になっています。

Q3排水管が詰まる原因は?

A3油脂・髪の毛・食べ物のカス等の蓄積が主な原因です。軽度なら市販のパイプクリーナーで対処できますが、重度の場合は専門業者の高圧洗浄(1万〜3万円程度)が必要です。予防策として、油脂を排水口に流さない、排水口にネットを設置する等の対策が有効です。

Q4排水管の更新費用は誰が負担する?

A4専有部分(住戸内の横管)は所有者負担、共用部分(竪管、共用廊下の横主管)は管理組合の修繕積立金で対応します。不動産流通推進センターによると、修繕積立金が不足している場合は一時金(追加負担)が発生する可能性があるため、注意が必要です。専有部分の更新費用の目安は10万〜30万円です。

Q5排水管の清掃頻度はどのくらい?

A5共用部分(竪管・横主管)は年1〜2回の定期清掃が推奨されます。マンション管理業協会の標準仕様によると、高圧洗浄が効果的で、管理組合が費用を負担します。専有部分(住戸内の横管)は各所有者が必要に応じて実施します。詰まりや悪臭が発生する前に、定期的な清掃を行うことが重要です。

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Room Match編集部

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